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虹の瞳を継ぐ娘  作者: 冬野月子
エピローグ

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65/66

2

王宮の訓練場の中央にはレナルドとクリストファー、そして審判役を務めるバーナードが立っていた。

観覧席にはイリスとフェリクス親子の他にアルセーヌとジュリアン、騎士団長、それに数人の騎士の姿がある。


「今日は殿下が勝てるかなあ」

のんびりとした口調でフェリクスが口を開いた。

「イリスはどっちが勝つと思う?」

「…レナルドに勝って欲しいけれど…お兄様が負けるのも想像つかないわ…」

「はは、そうだねえ」



二人の剣を確認したバーナードが離れた。


「はじめ!」

刃を潰した訓練用の剣同士がぶつかる鈍い音が響く。

素早い動きで畳み掛けるように二人は切り結んでいった。


「すごい…」

互いを知り尽くした同士の迷いのない動きに、初めてレナルドとクリストファーの手合わせを見たジュリアンが感嘆のため息をついた。

「この二人の手合わせを見るのもあと少しかと思うと残念だな」

騎士団長が独り言のように呟く。

「二人ともうちに入って欲しかったよ」



イリスは八年近く前、初めてレナルドがクリストファーに挑んだ時の事を思い出していた。

全くと言っていいほど歯が立たなかったのに、それでもいつか勝ってイリスと結婚するのだと宣言をし、その通りに対等に戦えるまでに成長したレナルド。

———彼はいつも一生懸命で、誠実で。

イリスが何者であっても変わる事なく想い続けてくれる。

家族とは違う、特別な———大好きな人。


レナルドが大きく剣を振りかぶった。

すかさずクリストファーが踏み込み、横薙ぎにしようとした所へ振り下ろす。


激しい音が響き、思わずイリスは瞳を閉ざした。




目を開けると、地面に一本の剣が落ちているのが見えた。

その近くに立つレナルドの右手には剣が握られている。


「あ…」

クリストファーが降参したというように両手を軽く上げた。

「…レナルドが勝った…?」



「イリス…!」

レナルドが駆け寄ってくると、そのままイリスを抱き上げた。

「きゃ…」

「やった…やっと勝てた!」

イリスを抱えたままぐるぐると回り出す。

「お、おめでとうっ」

振り落とされそうで思わずレナルドにしがみつくと、ぎゅっと抱きしめられる。


「これでイリスと結婚できる…!」

———例え勝てなかったとしても、自分達が結婚する事は既定事項だろうに。

それでも幼い頃の、自分で宣言した事をこうやって守り、実現する。

それがレナルドの長所であり、強さなのだろう。


「ええ…良かった」

イリスは首を回すと、レナルドの頬に祝福の口付けを落とした。

「イリスっ」

ぎゅうぎゅうと抱きしめてくるレナルドの背中を、苦しさへの抗議の意味を込めて叩くとようやく下に降ろされた。



「殿下」


降ろされたけれども代わりに手をぎゅっと握りしめられていると、クリストファーがやってきた。


「クリストファー。これで認めてくれるだろう?」

「…そうですね」

「よろしくな、義兄上」

ピクリとクリストファーの眉が動いた。


「あれだけ家族同然の付き合いをしてるのに、いざとなるとまだ抵抗があるんだ」

クリストファーの反応を見てフェリクスが笑った。

「兄弟仲良くね。それから、家族として、神に仕える者として、これからもイリスを守ってやってくれ」

「ああ」

「分かっています」

「頼んだよ、息子達」

フェリクスは仕事があるためシエル領には行かれない。

会えなくなる事はないが、その頻度ははるかに減るだろう。

———こうやって皆で過ごせる日もあとどれくらいか。



「イリスも二人と仲良くやるんだよ」

「ええ」

父親に頷くと、兄を見、最後にイリスはレナルドと視線を合わせた。


「レナルド…末永く、よろしくお願いします」

「こちらこそ」

握りしめた手を引き寄せると、レナルドはイリスを抱きしめた。


「一生君の傍で、君を守るから」

「ええ」

「愛している、イリス」

「…私も。愛しているわ」

レナルドの背中へと手を回すと、イリスは虹色の瞳をそっと閉じた。




おわり

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

前から温めていたネタがありまして、その中のワンシーンが特に書きたくて始めたのですが、設定やら考えていくうちに結局そのシーンは出せず……いつかリベンジしたいです。


次ページに登場人物一覧を載せます。

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