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「殿下!」
「王太子は制した。サルマントの者達を全員拘束しろ」
「はっ!」
騎士達が動く中、オレールが傍までやってきた。
「これは…魔法で拘束しているのですか」
恨めしげな目でこちらを睨みつけるヘンリクを拘束している光の糸に目を留める。
「———殿下も魔法を使うのですね」
レナルドが魔法を使っているのを見た事がなかった。
魔法を使えるかは個人差が大きいため、知識としての座学は必修だけれど実技は希望者のみが行なう。
そしてレナルドは剣術や体術の授業を取っていたので、学園で魔法を使う事はなかったのだ。
「魔法は学園でも王宮でも使わない」
「王宮でも?」
「…オービニエ家の者以外の前で攻撃に使ったのはこれが初めてだ」
ずっと、魔法は苦手だった。
魔力もあまり高くなく、それもあって剣を選んだし騎士になる事を望んでいた。
だがイリスと出会い、オービニエ家と関わるようになってから、フェリクスとクリストファーに苦手な魔法でも鍛えるべきだと言われ、彼らに教わりながら訓練をしていた。
色々と試してみて、光の糸を作るのがレナルドには向いている事が分かった。
魔力量が少なくとも、糸を精密に操れるようになれば飛び道具として強力な武器となる。
そのため制御力を高める事を特に入念に訓練してきたのだ。
「なるほど…つい大技を使いたくなってしまうのですが。それだけでもダメなのですね」
納得したように頷いて、オレールはふいに神殿を見上げた。
「イリス様」
石段の上からイリスがこちらを見下ろしていた。
『ご苦労であったな、アランブールの王子よ』
イリスではない声がその口から響く。
『まあ、及第かの』
レナルドを見て目を細めると、イリスは前方へと視線を送った。
『我が眠る間にすっかり朽ちてしまったな』
見渡す限り痩せ衰えたその地には、かつて美しさを讃えられた王国の名残は全く見えなかった。
『いま一度加護を与えよう』
イリスは右手を高く掲げた。
『ジュノーの名において、この大地に失われた恵みを、命を。再び与えん』
声に呼応するように大地が光を帯びた。
何かが…まるで命が湧き上がるかのように、大地を満たした光は宙へと満ちていく。
光が溢れる中、神殿から一本の虹色の柱が立ち昇った。
柱はゆっくりと弧を描きながら、アランブール王国の方へ向かっていく。
空が夕日に染まるまで虹の橋は二つの国を繋ぎ続けていた。




