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虹の瞳を継ぐ娘  作者: 冬野月子
第5章 虹の架け橋

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「あれは一体…」

強い光に閉ざした目を開くとヘンリクは周囲を見渡した。

前方に虹色の光の柱が立っているのを見やってから、腕の中のイリスがじっとそれを見つめているのに気づく。


「姫…っ」

その顔を覗き込んでヘンリクは息を飲んだ。

大きく見開かれたイリスの瞳は、柱と同じように幾つもの色彩を帯びていた。

「虹色…まさか姫は本当に…」


ふいにイリスがヘンリクを見た。


『オーケアノスの末裔よ』


イリスの口から発せられた、けれどそれはイリスの声とは異なる女性の声だった。



『我が巫女をここまで連れてきた事、感謝する』

「…巫女…?」

『だが巫女はそなたへは渡せぬ。この娘は我のものだからな』

ふっと笑みを浮かべると、次の瞬間ふわりとイリスの身体が浮き上がった。


「姫!」

手の中にはイリスの手足を縛り付けていた青い紐ばかりがあった。


「殿下あれを!」

ローブの男が示した先には、いつのまにかラナの馬に乗っているイリスの姿があった。


『我が民よ。あの虹の元へ行け』

「…はっ!」

イリスを乗せた馬は勢いよく駆け出した。





「———あの馬を追え!」

しばらく茫然としていたヘンリクは我に帰ると騎士達に命令した。


「殿下!馬車が動きます!」

「急げ!」

ヘンリクが乗り込むと馬車は走り出した。


「巫女だと…?」

ヘンリクは先刻のイリスの言葉を反芻した。


この不毛の地は、かつてシエルと呼ばれた小国だった。

女神を信仰し美しく栄えていたという。

「女神…まさかあの声…」

虹色の瞳をしたイリスから発せられた、イリスではない威厳のある女性の声。

あの声が女神だと言われれば納得できるほど力に満ちた声だった。


「…だが手に入れなければ」

イリスが虹の姫と分ったならば尚更、たとえ女神のものであったとしても。



「殿下!」

外から声が掛かった。

「何だ」

「後方より追っ手らしき一団が!」

「…ちっ」

———何故分かった?あの光のせいか?


「数は」

「八騎ほどです!」

「二手に別れろ。姫を追う者と追っ手の足を止める者だ」

「はっ!」


「姫は渡さぬ」

ヘンリクは右手を上げると、その手が青い光を帯びた。





「あれか?!」

レナルド達の視界に馬車と馬の一団が入ってきた。


「イリスはその更に先だ」

クリストファーは前方を見据えた。

「あの虹の柱に向かっている」


「魔法の気配!」

オレールが叫んだ。

「攻撃が来ます!」


馬車から青い光が放たれた。

光は水へと変化すると、波のようにレナルド達へと襲いかかってくる。

オレールの手から竜巻が湧き上がった。

竜巻は渦を描きながら波を飲み込んでいった。


「あれは…海の魔法だな。馬車の中に王太子がいる」

「王太子は相当な魔法の遣い手だと聞いてるぞ。どうする」

クリストファーの言葉にバーナードが応えて言った。


「オレール、魔術大会の時のように火魔法をぶつけて爆発させられるか?」

レナルドがオレールを振り返った。

「あの水蒸気の煙で目眩ましをする」

「分かりました!」

「僕とクリストファーはイリスを追う!お前達は他の者を止めろ!」


「来ます!」

オレールが叫ぶと再び馬車から青い光が放たれた。

瞬間、オレールが赤い光を放つ。

馬車のすぐ側で爆発が起きると白い煙が湧き上がった。


「クリストファー!行くぞ!」

レナルドは馬を走らせた。

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