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虹の瞳を継ぐ娘  作者: 冬野月子
第5章 虹の架け橋

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07

「イリス!」

突然叫んだクリストファーの声に、レナルドははっと目を覚ました。


大神殿にある貴賓室で、レナルド達は仮眠を取っていた。

「クリストファー?」

「イリスが腕輪を外しました」

「何だと!」

横たわっていたソファから飛び起きると、レナルドはテーブルに置かれた地図の前に駆け寄った。


「居場所は分かったのか」

「今…」

地図を見つめるクリストファーの黒髪が一瞬ふわりと揺れると光を放ったかのように艶めいた。


「ここ」

それは先刻この辺りとユーピテルが示した位置から、更にサルマント王国へと近づいた場所にあった。

「…イリスの位置は正確に分かるのか?」

「ええ。…今は移動していないようです。おそらく休憩を取っているのではないかと」


「それで腕輪を外す隙が出来たのだろうな」

レナルドの後ろから地図を覗き込んでいたバーナードが言った。

「急いで出立すれば追いつけるかもしれん」

「そうだな、行くぞクリストファー」

「はい」

「僕の剣を。馬の用意!」

何かあればすぐに発てるよう、王宮からレナルドの馬と装備を取り寄せておいた。

クリストファーやバーナードも剣を取る。


「私も行きます!」

オレールが声を上げた。

「魔術ならば得意です!」

レナルドは問うようにクリストファーを見た。

確かに魔法攻撃力の高いオレールは重要な戦力になるだろう。

だが、彼はイリスがシエルの巫女である事を知らない。

場合によってはそれを知られてしまう可能性があるのだ。


「…馬には乗れるか」

クリストファーはオレールを見た。

「はい」

「ならば来い。もう二人ほど魔法が使える者がいるといいが」

「用意します!」

オレールは部屋を飛び出して行った。



「いいのか」

「———イリスの安全が優先です。秘密だの何だの言っている場合ではありません」

クリストファーは素早く傍にあった紙に何事か書き込むと、それを畳んで息を吹きかけた。

紙は鳥の姿へと変化し、羽ばたくとその姿を消した。


「…フェリクスへか」

「はい」

「その手紙…イリスへは送れないのか」

「それは危険ですね。向こうにどんな魔術師が付いているか分かりません。こちらがイリスの居場所を知っている事を知られてはなりません」

「…そうか、そうだな」

レナルドはため息をついた。



『我の力を貸そう』

ユーピテルの声がクリストファーの頭の中に響いた。


『馬を早く走らせる加護を。それからしばらくの間、お主に我の力を与える』

クリストファーの身体が光に包まれた。


「クリストファー…その目!」

光の消えたクリストファーを見たレナルドと、部屋に戻ってきたオレールが目を見開いた。

「赤くなっている」

「……ああ…」

赤い瞳を宿したクリストファーは、己の中にあるものを鎮めるように長く息を吐いた。


「…この目が赤い間はユーピテルの力を使えるようだ」

「何と…」

オレールの後から入ってきた祭司長達がクリストファーの言葉に息を飲んだ。


「行きましょう、殿下」

「ああ」

急ぎ足で出て行くレナルド達を、祭司長が深く頭を下げて見送る。



「祭司長…」

「イリス様だけでなく兄君まで…彼らは何者なのであろうな」

一行の後ろ姿を見つめながら祭司長は呟いた。

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