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虹の瞳を継ぐ娘  作者: 冬野月子
第4章 西からの風

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00:SIDE S

人気の完全に途絶えた、廃墟と化した神殿の最奥に二つの光があった。


『これで良かったのか』

光の一つから男の声が響いた。

『せっかくここまで造り上げたのであろう』


『…どこで間違えたのであろうな』

もう一つの光から女の声が響く。

『我は手を掛け、大切に育ててきたつもりであったのだが』


『人間の心は複雑だ。我ら神であってもそれを制する事は難しい』

光がゆらりと揺れ、広がると中からひとりの男が現れた。

逞しい身体に白い緩やかなシルエットの服をまとい、白銀の髪は光を放つように輝き赤い瞳は力強い光を放っている。

『ジュノー。其方はよくやった』


『———だが我は失敗した』

残りの光が同じように広がると女の姿を取った。

同じ白銀の長い髪に憂いを帯びた赤い瞳を持つその容姿は、かつてここにあった女神像にとてもよく似ていた。

『なに、そういう事もあろうよ』

男はそう言って妻を見つめる目を細めた。


本来、二人は夫婦神としてアランブール王国を治めていた。

けれど妻のジュノーが自身の理想の国を造ってみたいと、王国の一角に自身の領地を得て小さな聖王国を造り上げた。

加護を与え、恵みをもたらし、最も美しい国となるよう育てた———はずだった。


敬虔な信仰と忠誠を持っていたはずの民はいつしか奢りを覚え、結果国を滅ぼしてしまった。


『手を掛けすぎたのがよくなかったのであろうか』

どこで間違えたのか。

全てが壊れてしまった今となっては、その分岐を見つける事は無理であろうけれど。



『それで、また新しい国を作るのか?』

ひとり思考を巡らせる妻に、ユーピテルは声をかけた。

『我としてはそろそろ戻ってきて欲しいのだが』


『———いや、我はしばらく眠りにつこう』

『眠りに?』

『我は疲れたのだ』

ジュノーは天を仰いだ。

『ここでしばらくの間眠りたい』


『しばらくとはいつまでだ』

『そうだな…あの巫女の子が我を呼びに来るまで』

最後まで女神の傍に従い続けた巫女。

歴代の巫女達のなかで、あの娘の瞳が一番好きだった。


『…そうか』

『すまぬな、我儘な妻で』

『何、そんなお主に惚れたのだ』


ふたりの身体が光に包まれる。


廃墟を一面に満たした光が消えると、深い闇夜が包み込んだ。

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