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虹の瞳を継ぐ娘  作者: 冬野月子
第3章 呪い

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15

百年以上前の戦乱の時代。

幾つもの国が生まれては消えていった。

その中の一つ、スィスターンは邪神アポフィスを信仰し、黒魔術を用いて領地を広げてきたが、それを良しとしなかった周囲の国々や神々の力により短期間で滅ぼされ、邪神はその力を弱体化させられた。


だが生き残った黒魔術師達によりその術は密かに継承され続け、いつかアポフィスを復活させスィスターンを復興させようと機会を待ち続けていた。


ミアーの父親、マクレーン子爵は木材を扱う商売をしていたが、最近ライバル業者に流通経路を抑えられ、苦戦していた。

借金を重ねどうにも立ち回らなくなってしまった子爵は、相手を呪うという手段に出てしまう。

そして依頼したのがスィスターンの生き残りの黒魔術師だった。


黒魔術師は子爵の娘ミアーに目を付けた。

彼女の魔力量とその質が、アポフィスの憑代として使えると。


子爵邸に行った時に隙を見てミアーに術をかけ、アポフィスの魂をその身体に潜り込ませた。

そしてミアーの中で彼女の魔力を餌にアポフィスは力を復活させていったのだが、やがてミアーの力では足りなくなっていく。


そんな時に行われたのが学園での魔術大会だった。

アポフィスはそこでミアーと対戦したアルセーヌの、上等な王族の魔力に目を付けた。


憑代をミアーからアルセーヌへ。

対戦中に暴発を装い、アルセーヌの魔力に〝傷〟を付けた。

ミアーを操りながらアルセーヌと何度も接触し、その付けた傷から少しずつアルセーヌの魔力を喰いながら、その身体へ自身の力を移していく。

そしてアルセーヌの身体を操れるようになったのが、アルセーヌが城から行方不明になった日だった。

あの日、黒魔術師達はアルセーヌを連れ去るつもりだったという。





「———以上が調査結果です」

フェリクスは書類から顔を上げると一同を見渡した。


国王の執務室には、国王と宰相に三人の王子と祭司長、それにイリスがいた。

アルセーヌの事件から十日。

関係者の尋問や調査がまとまったのでその報告を行ったのだ。


「ご苦労だった、オービニエ」

国王は頷くとアルセーヌへ視線を送った。

それを受けて立ち上がると、アルセーヌは頭を下げた。

「この度は私が未熟なせいで迷惑をかけ、申し訳ありません。いかような処分も受け入れます」


「その事だがオービニエ。今回の件、アルセーヌ自身が回避する事は出来たのか」

「そうですね…確かにもっと魔術に長けていれば、邪神に付け入る隙を与えなかったかもしれません」

フェリクスが答えた。

「ですが魔術師として相当な能力がないと難しい事です。魔術師でない殿下が回避出来なかったのは仕方がない事と思われます」

「祭司長、お前はどう思う」

「はい。確かに殿下お一人の力では…。相手が邪神ならば、今回の事は大神殿にも責任があります。このような事が起きる可能性を想定しておくべきでした」


「ふむ。仕方なかったか…だが貴族達がアルセーヌに対して不安を抱いているのも事実だ」

「…はい」

国王の言葉にアルセーヌは頷いた。

「アルセーヌの評価が下がってしまった事は変えられない。それを取り戻す…いや、今まで以上になったと周囲に認めさせなければお前の王位継承は不可能だと思え」

「はい」


「レナルドとジュリアンも、自分の身にも今回のような事が起きる可能性を忘れるな。お前達もこれまで以上に勉学に励め」

「はい」

「分かりました」


「マクレーン子爵や関係者の処分はこれから協議するとして」

言葉を区切ると、国王はイリスへと視線をちらりと送ってから祭司長を見た。

「もう一つ。イリスが大神ユーピテルの声を聞いたという事について聞こう」

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