02
「ああ…凄かったですわ」
大きな歓声が上がる中、フランソワーズが感嘆の声をもらした。
「良かったですわね、イリス様」
「ええ」
顔を見合わせて笑顔を交わす。
「…さすがだなレナルドは」
訓練場の中央で戦いを終えた二人が礼と握手を交わすのを見ながらアルセーヌはため息をついた。
「明日はアルセーヌ様の番ですわね」
フランソワーズはアルセーヌへと向いた。
「アルセーヌ様も優勝を目指すのでしょう?」
「…私はそこまで強い訳ではないから。一つでも多く勝てるよう頑張るよ」
アルセーヌは剣よりも魔法の方が得意という事で明日からの魔術大会に参加する事になっていた。
魔術は学園に入ってから学ぶ者が多い為、一年生で参加するのはかなり異例の事だった。
「イリス様は、来年の魔術大会には出場するのですか」
イリスの隣で試合を見ていたオレールが尋ねた。
「私は…攻撃魔法は得意ではないので。出る予定はないです」
「お兄様も魔術大会の方には出ませんでしたよね」
「兄も戦うなら魔法より剣の方がいいらしくて」
剣術大会には毎年参加していたクリストファーだが、魔術大会には一度も出なかった。
表向きは四日連続で出るのは疲れるからとしていたが、本当は魔法を使うのをあまり見られたくないというのがある。
学園での大会だが、将来有望な若者を見つけ早めに囲い込もうと、魔術局や騎士団の者達も見学している。
イリスとクリストファーが使う魔法はこの国の者達のそれと少し異なるため、特に咄嗟の判断で使わないとならない攻撃系の魔法はなるべく人前で使わないようにしているのだ。
魔術局に入ったクリストファーは、剣も相当な腕である事から戦闘にも参加する事のある魔法師団へ所属するよう言われたが、固辞して父親と同じ部署で働いている。
「オービニエ家は代々攻撃魔法よりも支援系の方が得意なんです」
「そうなのですか…。来年は私も参加してイリス様と対戦してみたかったのですが。残念です」
「…オレール様は神官なのに攻撃魔法を使うのですか?」
「神官にも色々あります。私が目指しているのは神殿や要人の警備を担当する神官戦士です」
「そうなんですか…」
だからイリスを守るよう命じられたのか。
初めてオレールと言葉を交わした時の事を思い出した。
「まあ、では来年はアルセーヌ様とオレール様が対戦するかもしれないのですね」
「そうですね、明日からの試合を見て参考にさせていただきます」
「それは気合を入れないとならないな」
「イリス!」
レナルドが階段を駆け上がってきた。
「試合見ててくれた?」
「ええ。優勝おめでとう、レナルド」
「褒美が欲しいな」
「褒美?」
首を傾げたイリスの目の前にレナルドは頬を突き出した。
「…ここで…?」
レナルドの意図を察して思わず目を泳がせる。
「くれないとこっちから奪いに行くけど」
「……」
イリスは小さくため息をつき、レナルドの肩に手を添え、その頬に口付けると黄色い悲鳴が周囲から湧き上がった。




