01
訓練場は多くの生徒達の熱気と歓声に包まれていた。
彼らの視線を集める先には二人の生徒が立っていた。
一人は三年生で騎士団長を父親に持つ、優勝候補のアンドリュー・サージェント。
もう一人は一年生ながら圧倒的な強さで勝ち上がってきた王子レナルド。
二日間に渡って繰り広げられてきた剣術大会の決勝は、大方の予想通りの対戦となった。
「レナルド様は勝てそうかしら…」
訓練場の周囲に作られた観客席に座り、フランソワーズは隣のアルセーヌに尋ねた。
「どうだろう、でもきっといい勝負になると思うよ」
対戦相手のアンドリューは十七歳とは思えないほど体格も良く、大人顔負けの腕を持つ。
だがレナルドも普段から近衛騎士達に混ざり、彼らと同じ訓練をこなしているのだ。
「イリス嬢はどう思う?」
「…レナルド様が勝つと思います」
フランソワーズの隣に座っていたイリスは、少し考えて答えた。
「どうして?」
「相手の方はまだ無駄な動きが多いので…」
準決勝を見ていて思った事を口にした。
「まあ、イリス様は剣が分かるの?」
「分かるというか…よく兄達の手合わせを見ていますから」
領地に戻ってくる度に、クリストファーとレナルドは手合わせを行なっていた。
そしてイリスは治療担当としてそれを間近で見ていたのだ。
自分では剣を握れなくても、その良し悪しが分かるくらいには目が肥えていた。
決勝開始の鐘がなり、一際大きな歓声が上がった。
ガンッと鈍い音を立てて二本の剣がぶつかり合う。
飛び退くと、レナルドは剣を構え直して相手へと飛び込んでいった。
互いに剣を振り、受け止め、躱し、突き込んでいく。
学生同士の試合とは思えないほど激しく斬り結ぶその様に、歓声が上がっていた観客席は今は静まり返っていた。
———やっぱり、乱れてきた。
動きにバラツキが見えてきた対戦相手の様子にイリスは心の中で呟いた。
レナルドの動きには無駄がない。
クリストファーが手合わせする際、すぐ決着をつけずにあえて長時間戦い続ける事で、持久力と効率良く動く技をレナルドに身につけさせていた。
それは王子であるレナルドにとって必要なのは相手を倒す事よりも自分の身を守る事であり、途中で力尽きさせないようにする為のものだった。
対して相手はこれまで力の強さで早々に相手をねじ伏せてきたのだろう、長時間の戦いには慣れていないようだった。
やがて大きくバランスを崩した隙にレナルドが相手の剣をなぎ飛ばし、勝負はついた。




