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リアルで家族とお昼ご飯

 目を開けて、専用ギアから起き上がる。


 んんー少し疲れてるかも?

 慣れるまではだるさが残ることもあるとは聞いていたけど……。

 IN時間を伸ばすのは少しずつにした方がいいかもなあ。


 ぐぐっと伸びをして、白で統一したベッドにダイブする。

 そして去年の(まさ)にぃからの誕生日プレゼントである、私と同じくらいの大きさのお気に入りくまちゃん『くまごろう』をぎゅーっと抱き締めた。


「楽しかったあああ」


 くまごろうに顔を押し付け手足をバタバタと動かし、思わず叫んでしまう。

 想像よりもリアルな風景、感触。

 想像よりもファンタジーな生き物、暮らし。

 そして素敵な人達、わたんとの出会い。

 やりたいことも山ほどできた。

 初INにしては上上上出来だったんじゃないだろうか。


 興奮が冷めずベッドで暴れていると、


 コンコンッとドアがノックされた。


「マイラブリーエンジェル起きてる?」


 淡々とした声で私をぶっ飛んだ名前で呼ぶのは次女である菖蒲(あやめ)ねぇだ。


「今DIVE OUTしたところー」


 くまごろうを離して、ベッドに腰掛けそう返事するとガチャっとドアが開かれる。

 そしてつかつかとこちらに来たかと思うと細く白い腕が背中に回され、抱きつかれた。

 


「朝ご飯ぶり、リトルキャット」


「そうだねっ菖蒲ねぇ。お昼ご飯に呼びに来てくれたの?」


「そう。政宗(まさむね)特製ふわふわオムライス」


 政にぃ特製ふわふわオムライス!

 それは楽しみでしかない!

 

 想像したからかグゥとお腹がなる。


「可愛い鳴き声が聞こえた。可哀想。早く食べに行こ」


 そっと手を握ってきた菖蒲ねぇに連れられて1階のリビングに向かう。


「おー椿、メビファンどうだったよ?おもしれぇだろ?」


 そう料理をしながら声をかけてきたのは、黒のエプロンが良く似合う次男の政にぃだ。

 ちなみにメビファンとは『Mebius fantasy online』の略称である。

 

「面白すぎたよー!もう早くDIVE INしたいもん」


「そらよかったな。じゃあ俺特製オムライスはいらないか?」


「いるいるいるよー!オムライス好きなの知ってるくせにー」


 からかうようにニッと笑うとわかってるよ、とポンと頭を撫でられる。

 そしてどーぞとオムライスを出される。


「今日は特別だからちょっと凝ってみた」


 そこにあったのは芸術品だった。

 見た目からしてふわふわとしていそうな鮮やかな黄色のキャンバスには森にいるくまうさぎねこがケチャップで描かれていており、おたんじょうびおめでとうと言ってくれている。


 感動で言葉も出ない。

 

「政宗はずるい。マイベイビーちゃんはそういうのに弱い」


「はっ。菖蒲もすればいいだろーがよ」


「料理も絵も管轄外」


 菖蒲ねぇと政にぃが何か言い争ってじゃれてるのはいつものことである。


「可愛すぎるよおおお!政にぃありがとう!どうしよう!可愛すぎて美味しそうなのに食べれない!」


「そんな喜んでもらえると嬉しいが、食べようなー。また作ってやるから、な」


「ううう。じゃあせめて写メ撮るー」


 こんな可愛いものは写真だけでも残さないとだめだ!

 政にぃは料理はもちろん絵も上手い。

 私に合わせた可愛い絵柄から写真のようにリアルな絵まで描く。

 リビングに飾ってある花の絵も政にぃが描いた何か賞をとったものだ。

 オムライス作品を何十枚か携帯で撮っていると、長女である百合ねぇも部屋から出てきたようだ。


「あら可愛い〜椿ちゃんいいわね〜」


 オムライスを見ながら百合ねぇはゆるふわ〜っとそう言うと、垂れ目の目を細めてふわぁと欠伸と共に伸びをする。

 すると豊満な胸がブルンと揺れた。

 見慣れているはずなのに、見ずにはいられないこの破壊力。

 私も大きくなったらこうなる予定である。

 今はどちらかというと菖蒲ねぇのスレンダーさよりではあるが……。


「あれ?(なつめ)にぃは?」


 長男の棗にぃの姿が見えないので不思議に思う。


「棗は〜「ただいまー!」あら、タイミングいいわね〜」


「ん?僕の話題だった?もーさー馬鹿のせいで休日出勤とか有り得なくない?疲れちゃった。つばちゃん癒してぇ」


 帰って来て早々抱きついてくるのはいつものこと。

 百合ねぇが棗にぃのことを話す途中で、ちょうど帰宅したようだ。

 それぞれおかえりと声をかけている。


 この何かと理由をつけては抱きついてくる小柄でとても25歳には見えず、小学生でも通りそうなほど童顔なこの男性は長男の棗にぃである。


「よし、全員揃ったな。お昼にしようぜ」


 皆が席に座り、政にぃが棗にぃの分もちゃちゃっと作って席に着いた。

 休みの日はなるべく、ご飯は皆で食べるようにしている。

 花染家5人兄妹勢揃いである。


「「いただきます」」


 なるべく絵を崩さないようにそっと口に運ぶ。

 とろとろでふわふわの卵と絶妙なチキンライス、バターがしっかり効いていて私好みの味付けだ。

 

「政にぃ天才!」


「む。私のハムちゃんが幸せそうにもきゅもきゅしているのは可愛い。けどそれが政宗の手柄だと考えると腹立たしい」


 菖蒲ねぇが政にぃに突っかかる。


「はいはい、俺の腕が良すぎてごめんな?」


 それを政にぃが適当に流す。

 いつもの流れである。


 談笑しながら美味しく食べ終わり、食後のお茶をしていると棗にぃがあのゲームについて触れる。


「そういえば、つばちゃんメビファンで何したの?」


「んっとねー!バーニャさんっていうおばあちゃんと役所とテイマー協会行って登録して、めちゃくちゃ可愛いヌーっていう生き物をテイムしたよ!」


 そう話した瞬間皆一瞬固まると爆笑される。


「私のラブリーちゃんはなにかやらかすと思ってた」


「はいは〜いお姉ちゃんも思ってました〜」


「まあ、つばちゃんだしね」


「あぁ。椿だしな」


 なんで皆して笑うのー?

 あわあわしていると政にぃが教えてくれた。


「あのな、有名なヌーをテイムなんてプレイヤー達が試してないわけないだろ?言ってしまえば無限に魔力回復してくれる生き物みたいなもんだしな。テイマースキルを取ったやつらが必死に探して挑戦するも、尽く失敗。もうあれは仕様でテイム出来ない生き物ということで落ち着いたんだ。そこに初日でテイム成功しちゃう椿さん登場!こりゃバレたら荒れるなー」


 ニヤニヤと政にぃがこちらを見て笑う。

 これは完全に面白がってる顔だ。


 そっか……プレイヤーにとってもヌーの存在は知られてるんだ。

 でも本当になんで私テイムできたんだろ?

 特になんにもしてないんだけど。

 運がよかったのかなあ。


「嫌な思いをしないためにも、できるだけ隠した方がいいかもね〜」


「うん。百合ねぇの言うとおり、住人の人達にもそう言われてるから隠す予定だよ」


 そのためにバイトまでするしね!


「バレてもマイエンジェルは私が守る」


「ありがとう。頼りにしてるね」


 スタートダッシュをきめているこの兄姉達はきっと強い方に入ると思うし、もちろん存分に頼らせてもらうつもりだ。

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