コインを稼ぐ方法
特殊な事情により、会長の権限で無償で貸してくれるらしい。
ただ、中を快適に改造などもできるのでコインが貯まったら自分の物を買った方がいいとのこと。
もちろん借りっぱなしになんてしませんとも!
そして、コインの稼ぎ方に悩んでいた私を見兼ねたのかテイマー協会でのバイトはどうかと持ち掛けてくれた。
ピンクキャットさんの優しさが沁みる。
内容はテイマー協会で預かっている生き物の世話や掃除、雑用である。
私が異世界人という配慮からか、働く時間、タイミングはこちらで決めて構わないらしい。
1時間で1000コイン。
30時間働けば『従魔の守り石』が買える計算だ。
これが高いのか安いのかわからないが、バーニャさんも納得してるようなので、お願いすることにした。
「万年人手不足なのよ。結構肉体労働で、汚れることもあるしねぇん。助かったわぁ。」
そう安堵を見せたピンクキャットさんの顔からは疲れが見える。
よっぽど人が足りないのだろうか。
私としてはコインが稼げて、さっき見た生き物達と触れ合えるんだし、いい事づくめである。
しばらくバイトについての詳細を聞いたり、雑談に花を咲かせていると、ポーンという音のあとにアラーム画面が出た。
これはログイン時に設定していた、ログアウトしようと思っていた時間を知らせるものである。
リアルで3時間後に設定していたので、ここで6時間過ごしていたことになる。
もうそんなに経ったんだ……。
そろそろ宿屋を探さなくちゃいけないことを2人に伝えると、ピンクキャットさんがじゃあこれね、と冒険者カードとビー玉サイズの丸い透明の石がついたペンダントを渡してくれた。
冒険者カードは大事にアイテムボックスにしまって、ペンダントは促されるままに首にかけた。
「これが『従魔の守り石』よ。ここに従魔に入ってもらうと少しずつだけど体力や魔力、傷が回復するわぁ。ただ痛みを訴えるような場合はすぐ回復ポーションや回復魔法を使って治療してあげて。従魔達も私達と同じように痛みや苦しみを感じるからね。出入りはわたんちゃんの意思によってできるわぁ。声は聞こえるから出てきて欲しい時は呼びかけてねぇん」
私達異世界人は痛みは感じない。
衝撃や疲れなどは感じるが痛みは感じないように設定されている。
でもここの世界の人、生き物は痛みを感じる。
それはちゃんと覚えとかないといけないなと思う。
「わたん!1度入って私が呼んだらまた出てきてくれる?」
「ホー!」
ひと鳴きするとぱっとわたんが消え、石が薄ピンク色に染まった。
わたんの毛の色そっくりである。
「わたん出てきて」
そう呼びかけるとぱっとわたんが現れる。
石は透明に戻ったようだ。
やっぱり便利な道具である。
賢いねと褒め、ひと撫でしてもう1度石に入ってもらう。
「無事できたみたいねぇん。これで少しは安心出来ると思うけど、警戒は怠らないように。あ、そうそう連絡先を交換しておきましょ。テイマーについてだったら教えてあげれることもあるだろうし」
「おばあちゃんともしてくれるかい?いつでも連絡してちょうだい」
そう言うとスマホのような機械を2人共取り出した。
わ!それはぜひお願いしたい!
でも私はこの世界ではスマホ持ってないし、どうやって連絡先交換するんだろ……
急いでヘルプからフレンドの項目を確認する。
住人との連絡先交換の仕方はウィンドウを開いて、フレンドのところから連絡番号を入力すればいいらしい。
さっそく2人の連絡番号を教えて貰い、入力する。
そして確認すると私のフレンド一覧にはバーニャ、ピンクキャットという名前が追加されていた。
なんだか嬉しいなあ。
ちなみにこれが異世界人同士の場合10秒間の握手で完了するらしい。
こうしてやることも済んだ私はピンクキャットさんに別れを告げ、テイマー協会を後にした。
そしてバーニャさんに、狭い個室にベッドがあるだけという異世界人専用宿を案内してもらい、沢山のお礼とまた近いうちに会う約束をして別れた。
バーニャさんがいなかったら本当に何も出来なかったと思う。
感謝してもし足りない。
永遠の別れでもないのにハグして涙ぐんでしまったのは内緒だ。
バーニャさんが見えなくなるまで見送ると、ポーンと音が鳴った。
ウィンドウを開くとクエストのところが光っており、押すと【住人に街を案内してもらう】クリアの文字が。
報酬を受け取るを押すと新たにマップという項目が増え、所持金を確認すると10000コインになっていた。
なるほど、クエストクリアするとこうなるんだね!
ふむふむと納得した私はアラームが鳴ってから結構時間が経っていることに気付き、急いで宿屋にチェックインする。
このゲームログアウトしても、体が残る仕様なためログアウトする際は宿屋推奨なのである。
ここは本当にログアウトするためだけの宿なので無料だが、コインを払えばログアウトの間に体力や魔力を回復できるベッドが置いてあったり、食事をとれたりする宿にも泊まれるらしい。
コインに余裕ができたら泊まってみたいなあ。
そんなことを思いながら、私は簡素なベッドに横たわり、わたんに話しかけてからこの世界をあとにするのだった。