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テイマー協会

 テイマー協会へは役所を出て、表通りから外れ、山の見える方へしばらく歩くと着いた。


 お洒落なログハウスのようだ。

 深緑色の屋根の二階建て。

 建物自体は役所に比べると大きくはないが、周りには草原が広がっており、いくつもの柵で囲われ、生き物が放されていた。


 ペガサスのような生き物や緑色のクマ、縞模様の牛などリアルでは見られない沢山の生き物達がのんびりと過ごしている。


 そこには昔家族と行った牧場を思い起こさせる、素敵な光景があった。


 もう少しゆっくり眺めていたかったが、今回の目的は別にある。

 大きな木のドアをゆっくり開けるとカランカランと鐘が鳴った。



「あらぁ〜可愛らしい方、いらっしゃぁい。ご用は何かしらぁん?」


 そこで待ち受けていたのは筋肉であった。

 

「びっくりさせちゃったかしらぁん」


 腹筋はバキバキに割れており、背は私の2倍は優に超える。


「ん?バーニャもいるじゃなぁい」


  声は男であり、顔も男。


「ピンクキャット、あんたまたそんな格好をして。メリアちゃんがびっくりして固まっちゃったじゃないの」


 なのだが、服はレースをこれ以上は付けれませんというぐらいふんだんに使い、目に痛いほどのピンクロリータファッション。

 なのにへそ出し。

 

「これが私のふ・だ・ん・ぎ。まあ初対面の子は大体こうなるのよぉ。でも、そろそろ戻ってきてもらいましょうかね」


 髪の毛リップチーク、色をつけれる場所は全てピンクで統一されていて……。

 わあ、瞳までピンクだあ。

 キリッとした顔がこちらを向いていて、……向いていて?


「ごごごめんなさい!ちょっと宇宙の方へ旅してました!メリア、9歳です!よろしくお願いします!」


 やってしまった。

 初対面の人の目の前で固まった挙句、隅から隅まで観察なんて失礼すぎる。

 ここは日本の伝統最大謝罪ポーズDOGEZAで許してもらえないだろうか。

 

「ぷっ面白い子。宇宙がどこかわからないけどおかえりなさぁい。種族の関係で仮名で失礼するわね、ピンクキャットよぉ。年齢はひ・み・つ。よろしくねぇ」


 長いピンクの爪の大きな手を差し出される。

 こちらの世界にも握手があるらしい。

 恐る恐る握る。


「んふぅ。プルプルしちゃってかぁわいぃ。食べちゃいたいくらぁい」


 そっと頬を撫でられ、舌舐めずりされる。

 ひっ食べられる。

 本能が危険を察知し、動けなくなっていると救世主が現れた。


「ピンクキャット……からかわないの。今日はそんなことしにきたんじゃないんだからねえ」

 

 バーニャさんんんん。

 急いでバーニャさんに背中に回り、抱きつくととよしよしと頭を優しく撫でてくれる。

 物凄く気持ちいいし、落ち着く……。

 私が猫だったら喉をゴロゴロ鳴らしてるね。


「あらぁ嫌われちゃったかしらぁ。メリアちゃんが可愛らしかったからつい、ね。それで、今日はどうしたのよぉ」


「メリアちゃんのテイマー登録にきたんだよ。ちょっと特殊な事情もあってね、会長であるピンクキャットに対応してもらいたいんだよ。いいかい?」


「特殊な事情……ね。わかったわぁ。どちらにしろ私が対応するつもりだったしぃ」


 こっちの部屋に行きましょうかと言われ、案内されたのは簡素な机と椅子だけが置かれた個室だった。


 バーニャさんと私が隣合って座ると向かいにピンクキャットさんが座る。

 座っていてもかなりの威圧感を感じる。


「それで特殊な事情ってなぁに」


「……落ち着いて聞くのよ。幸運のヌーがメリアちゃんにテイムを持ち掛けたのよ。テイムは保留にしてもらってるわ」


「ふぅん、幸運のヌーがテイムを持ち掛けたのね。……ん?もう1度言ってくれる?」


「幸運の、ヌーが、テイムを、持ち掛けたの」


 一つ一つ言い聞かせるように説明するバーニャさんの言葉を理解したのか、ピンクキャットさんは呆然としている。


「そ、そんなの聞いたことないわ……」


「でも事実よ。私もその場にいたの。メリアちゃんの手のひらに乗って撫でさせていたわ」


「手のひらに?撫で……?」


 混乱したピンクキャットさんはもはや単語をぶつぶつ呟くマシーンと化している。


 それを見たバーニャさんはしょうがないねえとこの状況を予想してかのようにため息を吐いた。


「メリアちゃん悪いんだけど、ヌーに出てきてもらってもいいかい?」


「う、うん。ヌー出てきてくれる?」


 するとホッホーとヌーが机に降りたち、手にスリスリと擦り寄ってくる。

 ふわふわ、可愛い、うちの子、可愛い。


「んお゛」


 んん?目の前から野太い声が聞こえたけど?


「これで納得してもらえたかい」


「……未だに信じられない気持ちが強いけど、この光景を見ちゃうとね。これは確かに特殊な事情だわぁ」


 じーっと瞬きもせず、ヌーを観察しているピンクキャットさん。

 穴が開くほど見られてヌーは居心地悪くならないのだろうか。

 うん。私の指と指の間に顔を突っ込もうとして遊んでるね。

 全く気にしてないようです。


「登録だったわよね。身分証はある?……ええ、冒険者カードで大丈夫よ。じゃあ準備してくるわね」


 そう普通の会話をしながらも、目線はヌーに固定されたままである。

 ドアが閉じるその瞬間まで、目線が外れることはなかった。


 すぐ戻ってきたピンクキャットさんが持っていたのは、役所で見た水晶玉の色違いだ。

 役所は透明だったが、これは薄紫色がかっている。


「テイムは保留とのことだけど、登録するには1体以上テイムをしていることが必要なのよぉ。もし、今できるならして貰えるかしらぁ」


 期待が入り交じった目で見てくる。

 バーニャさんもどこかわくわくとした雰囲気を醸し出している。

 私も早くテイムしてみたかったし、しちゃおう!


「わかりましたっ。……ヌーお待たせ!私とテイムしてくれる?名前も考えたの!わたんはどうかな?」


 期待と少しの不安に苛まれながらも、ヌーにお願いをすると、ふわっと飛び上がってくるくると回り、まるでダンスしているようだった。

 ホー!!!と今日1番の鳴き声と共にまたウィンドウが表示されてた。


...............................................

 ヌーがテイムしてほしそうです。テイムしますか?【YES or No】

...............................................


 YESっと。

 すると私とわたんがじんわりと暖かく、淡い光に包まれ、しばらくすると消えた。

 わたんと何か繋がりができた気がした。

 


「無事テイムできたようね。おめでとう!素敵な関係になることを祈ってるわぁ。じゃあ登録しちゃいましょ!この水晶に手を乗せてくれる?」

 

 そっと手を乗せる。


「よしっオッケーよぉ!これでメリアちゃんとわたんちゃんとの絆をテイム協会が保証するわぁ。冒険者カードに記載しとくからね。」


「メリアちゃんおめでとう!ピンクキャット、あと『従魔の守り石』が欲しいの、用意して貰えるかしら」


「そうね、安全面を考えると『従魔の守り石』が必要よね。30000コインするのだけど大丈夫かしら?」


 30000コイン!!!

 案内クエストはまだ終わった扱いにはならないようで、現在の所持金は5000コイン。

 クエストを達成したとしても10000コインだから到底足りない。


「ご、ごめんなさい。今5000コインしかなくて……また貯まったら買いに来ます」


「あら、じゃあおばあちゃんが立て替えておこうかね」


「そんなのはだめだよ」


 でも、いやいやとバーニャさんとお互い譲らない戦いを繰り広げていたが 「テイマー協会から借すという形をとる」というピンクキャットさんの提案で落ち着くことになった。



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