隠し洞窟⑥
今思いつく最善を。
わたんの回復がどのくらい繰り返しできるのかの問題。
これについてはあっさりと解決した。
わたんはその土地に魔素があるかぎり回復できるのだそうだ。
そしてこの土地には魔素が溢れていて、何百回どころか何千回だって何万回だって大丈夫とのこと。
わたんに直接聞いたので間違いない、白さんが。
私にはジェスチャーでしかわからないわたんの声が白さんには聞こえるらしい。
私が説明し、質問して、その答えを白さんが聞き取る方法でだけど。
確固として白さんと直接話そうとはしないらしい。
かなり性格がひねくれてるよと白さんがブツブツと洩らしていた。
あまり人に懐かない方だとは思ったけどここまでなんて。
そんなことはなんのその、わたんは私の頬にお尻をピッタリとくっつけてご機嫌さんだ。
新たなわたんの1面に苦笑いしつつも、1つ大きな問題が解決したことが嬉しい。
これで少しううん、かなり成功率があがったと思う。
というより、これができないと話にならないのだから。
あとは白さんがわたんが回復してくれる3分程のなにもできない時間に耐えれるかどうか……。
これはやってみないとわからない。
「そろそろ始めようか」
白さんが言う。
「うん」
私は答えた。
そっと剣が刺さっている尻尾に近付く。
剣の持つところは私の両手ではようやく掴めるかどうかというくらい太い。
手をかけて深く深く息を吸って吐く。
「いくよ」
白さんが頷いたのを確認して一気に引き抜く。
ドバっと黒くドロドロしたものが剣に纏わりついてくるのを見て、急いで地面にほおり投げた。
「――――!!!!」
白さんの表現出来ない声が耳が、心臓が痛くなるほどの大きさで響く。
尻尾は動かさないようにしてくれたようだが、それ以外の体の部分が激しく跳ねた。
一瞬体が固まるが、それを抑え込んで傍らに置いておいた杖を握りしめた。
「『ヒール』、『ヒール』……」
『ヒール』をかけ続けていく。
真っ黒の血反吐を吐きぐったりと苦しそうな白さんを横目で見つつ、早く、確実に3文字を繰り返し繰り返し口に出す。
口が乾いてきた時魔力切れのウィンドウが出た。
急いでわたんに頼んで歌ってもらう。
『ヒール』が切れたことによって白さんが先程より明らかに弱っていく。
口からダラダラと血が混じった唾液が流れ出ているが、それも気にしていられないようだ。
……違う、意識がないんだ。
まだ、まだだろうか。
初めて回復してもらった時より、長く感じて焦ってしまう。
わたんの歌が止む、と同時にまた『ヒール』を唱えていく。
少しだけ白さんの様子が和らいだ気がする。
『ヒール』はちゃんと効いてる……!
何回繰り返しただろう。
口の中がカラカラで、言葉にするために無理やり唾液を口に作り出している感覚。
わたんの方も歌うのがかなりつらそうになってきている。
だが途中でレベルがあがり、状態異常回復(麻痺)の『ナムヒール』や状態異常回復(毒)『ポイズンヒール』など、いくつか新しいスキルを覚えた。
その中でも『ダブルヒール』というヒールより少し魔力が多めに取られるが、倍の効果があるスキルはかなり使えるためそちらに変更して使っている。
そのおかげか白さんの呼吸は少し落ち着いてきているようだ。
でも目は覚まさない。
それに剣に黒いドロドロが纏わりついたままなのも、気になる。
とにかく私は『ダブルヒール』をかけ続けるしかない。
それしかできないのだから。




