隠し洞窟⑤
一生懸命自分の考えを説明した。
身振り手振りを加えてちゃんと伝わるように。
やることは極めて単純だ。
わたんの能力は魔力を回復できること。
私が白さんにヒールをかけて、魔力が切れたらわたんに回復してもらう。
それを白さんが大丈夫になるレベルまで繰り返す。
ただわたんが何回回復できるのか把握してないこと。
そして1回回復してもらうのに3分程かかるのでそれを白さんが耐えれるのかということ。
私が今思いつく限りでもこれだけ不安要素がある。
もっとなにかあるかもしれない。
話しているうちにこれはそんなによくない案なんじゃないかと思えてきた。
考えれば考えるほど、つま先からどんどんと体が冷たくなっていく。
失敗したら白さんが死ぬ。
それを軽く考えていたわけじゃないけど、勢いで提案してしまった感はある。
それは長い間1人でつらい思いをしてきた白さんに対して、失礼だったんじゃないだろうか。
もっと慎重に練ってから、安全を確保してから提案するべきなんじゃないだろうか。
そう気付いて謝ろうとした。
「白さん!ごめ――」
「ありがとう。本当にありがとう」
私の声を遮ったその声は静かに空間に響いて溶けていく。
繰り返し伝えられるありがとうは心にじわじと染み込んでいく。
猫背の躰を更に縮こませ震える白さんは、私より小さく小さく見えた。
「ごめん、少し嘘ついてた。……僕はずっとここに1人でいるのは本当。でもね、長い時間の中この洞窟に訪れる者がいないわけじゃなかったんだよ。その中でも治癒魔法が使えそうな者はここに招いたりしてね。もしかしたら……なんて下心があった。でも全くだめ。普通に話してくれる者も希望をもたせてくれる者もいなかった」
その時のことを思い出しているのだろうか。
声がどんどん暗く、寂しいものになる。
なにか声をかけようとした時、でもっ!と嬉しそうな声で顔を上げた白さんは言った。
「でも、君は普通に僕と話してくれた。そしてこの姿を見て怖がるどころか心配してくれた。そして今真剣に僕に自由をくれようとしている。それがどれだけ嬉しいか、幸せか、奇跡なのか。……だから、僕は君に賭けたい。それでもし死んだとしても後悔なんてしない」
そう言いきった白さんは、いつの間にか背中をシャンと伸ばしてこちらに手を伸ばしてきた。
白く細いその手は少しだけ震えている。
……怖くないわけがないよね。
それを見て胸がぎゅっと痛くなった私は、精一杯の力でその手に思いっきり抱きついた。
「絶対に私が助けるよ。絶対の絶対だよ」
「うん、絶対の絶対だね」
そう言って2人で顔を見合わせて笑いあった。
どうかこの約束が破れることがありませんように、そう願いながら。




