隠し洞窟③
「怖いいいいいいいい」
急なホラー展開にパニックになり叫んでしまう。
ボロボロと涙が溢れてくる。
無理。
こういうの本当に無理。
何も見たくないし聞きたくないため、耳を手で塞ぎ、体操座りで頭を抱え込み体をできるだけ縮こませる。
それでもあの声が聞こえてくる。
「ねえ……」
「やだあああああ」
手で塞ぎ切れない分を自分の声で誤魔化す。
「あの……」
「ああああああ」
それでも不思議と聞こえてくる声にさらにボリュームをあげる。
なぜ、こんなに私は耳がいいのか。
「なにもしない……」
「そういう人は嘘つくもんんん」
昔見た映画で騙される主人公達が思い浮かぶ。
あああ、お化けと口を利いたら呪われちゃう映画も見たあああ!
「なにかするならもうしてる……」
DIVE OUTという手を思い付いた時、ポツリとそう言われ、叫ぶのを一旦やめる。
確かに、一理ある。
The無防備なのだから、なにかするならもうとっくに私は失神していることだろう。
少し、落ち着いてきた。
自分の心臓の音はドクンドクンといつもより大きく早く聞こえているが、先程まではそれすらも聞こえないほどパニクっていたのだからまだましだろう。
もし、なにかあればDIVE OUTすればいい。
これはゲームなのだから。
スウッと息を大きく吸い込み、吐き出す。
そろっと顔をあげ、薄目で声の方向を確認してみる。
闇の中に白くて巨大な何かがいるのがわかる。
……あれは人ではない。
それを見て私はホッと胸を撫で下ろした。
話す様子から人のお化けだと思っていた。
人の怖いのは苦手だが、人ではない怖いのはそれほどではない。
急に出てこられたらびっくりはするけれど、人よりは全然大丈夫だ。
「話しても大丈夫?」
また闇から声をかけてくる。
よく聞くと最初の声は怖いものだったけれど、今はこちらを怖がらせないようにしてくれているのか、優しい。
こちらに害をなす気はないようだ。
「大丈夫。取り乱してごめんなさい」
だとしたらかなり失礼な態度をとってしまった。
急いで立ち上がって深くお辞儀をする。
「謝るのは急にこちらに招いてしまった僕の方なのだから、頭を上げて。驚かせてごめんね」
白い何かは思ったより腰が低いらしい。
言われた通り顔を上げると、白い何かは話し出した。
「君とそこの従魔が楽しそうにしてるのを見て、僕も混ざりたくなってね。ついつい招いてしまった。もしよければ、少しだけ話をしてくれないかな」
「話?」
「そう君のことや従魔のこと、外のこと、なんでもいいんだ。僕はここから動けないから聞きたいんだよ」
寂しそうに話すもんだから、ついつい了承してしまう。
「……いいよ。まず自己紹介からね。私はメリア、この子はわたん。えっとね……」
わたんとの出会いやここで出会った人達のこと、家族のこと、焼きミーンがどれだけ美味しかったか、初戦闘のことなど楽しかったこと、感動したことを話していく。
白い何かは名前がないらしいので、白さんと仮名をつけることにした。
白さんは聞き上手だった。
相槌をうったり、時には質問したり、笑ったりと楽しそうに聞いてくれるもんだから、こちらも楽しくなってくる。
すっかり打ち解けて怖さなどどこかへいってしまった頃。
「ねえ、姿が見たい」
ふいに思いたって口にする。
「……怖がらないって約束できるかい?僕は化け物だよ」
怖々と返された言葉は期待と不安が混じっているようだった。
「さっきも言ったけど、私は髪の毛が長かったり、目から血が流れていたり、透けたりしている人間のお化けが怖いの。だから白さんは大丈夫。顔を見て話したい」
白さんの声のする方を真剣に見て話すとふーっと息が吐き出され、しばらく間を置いて了承を貰えた。
それを聞いた私は『光球』を手に浮かせて、少しの興奮と共に近付いていったのだった。




