表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/30

雑貨屋さん

 「あったあ」


 一度見た場所だからと着くとは限らない。

 ……自分の方向音痴具合を忘れていた。

 お店に立ち寄らないとMAPにも表示されない。

 色んな人に聞いて、私が見た雑貨屋さんではないけれど、無事雑貨屋さんにやっと着いたというわけだ。


 お店の前には古い壺や皿、大きな熊の置き物など統一性のないものが雑多に置いてある。

 中に入ると更に物が溢れかえっていて、どこに何があるか分からない状態だ。

 微かに残された細い通路を通って奥に行くと、カウンターに緑髪の若い男が突っ伏して寝ている。


「す、すいませーん」


 声をかけるが、よだれを垂らして気持ち良さそうに熟睡しているようで気付かない。

 仕方ないので軽く揺り動かしてみる。


「起きてくださーい」


「そんなんじゃそいつは起きないゼ?」


「えっ?!」


 急に第三者の声が聞こえて、驚く。


「嬢ちゃン、こいつはこう起こすんダ。」


 そう言うやいなや、若い男の頭上に手のひらサイズの妖精が現れ思いっきりかかと落としを決めた。


「いってえええ!何すんだドド!」


 飛び起きた男は頭を押さえながら、妖精に怒鳴っている。


「客が来てんのにおめえが起きねーのがわりィ」


「あー?客ぅ?……おー!嬢ちゃんいらっしゃい!気付かなくてすまんな。何か探し物か?」


 怒り顔が一瞬で笑顔に変わると話しかけてきた。

 なんだか人懐っこそうな人だ。


「えっと、採取用のスコップを探してて。採取初めてなので扱いやすいものがいいんですが」


「何を採取するんだ?」


「ランラン草です」


 そう答えると店員の男は少し悩んでいるようだ。


「ドド、ランラン草ってわかるか?それの採取に最適なスコップがあれば探してくれ」


「ランラン草も知らねぇのカ、この未熟もノ。俺が最高のスコップを探してきてやるから待ってロ」


 そう言うとドドと呼ばれている妖精は得意げな顔をして奥に引っ込んだ。

 ポカーンと見ていると男に笑われる。


「騒がしくてすまんな。あんな態度だが、喜んでるんだぜ?ドドは頼られるのが好きなんだ」


 とてもいい笑顔で話す様子からその仲の良さが窺える。


「そういやー自己紹介しなくちゃな。俺はここの店長のマリウス。んでさっきのがドド。ご贔屓に頼むよ。嬢ちゃんの名前も聞いてもいいか?」


「メリアです。最近こちらにきた異世界人なので、ここのお店にはお世話になると思います。よろしくお願いします」


「メリアな。よろしく。俺敬語で話されるの苦手なんだ。楽に話してくれ。長い付き合いになりそうだしな」


「わかりま……わかったよ、マリウス」


 年上にいきなりタメ口は苦手なんだけど、マリウスの人懐っこさからか自然に話せる。


 マリウスが近くに置いてある雑貨の説明なんかを面白可笑しく聞かせてくれていると、ドドがいくつかのスコップを持って帰ってきた。


「待たせたナ。こいつらはベテランだからどれでもそれなりには扱えル。あとは相性がいいやつを選ぶだけダ」


 そう言ってカウンターに4本のスコップを並べる。


「相性……?」


「そうダ。物には魂が宿るものがあル。そいつらは好き嫌いや得意不得意が当然あるのサ。手に取ってみナ」


 そう言われてスコップを見ると3本が微かにカタカタと動いた。

 そして動かなかった1本はドドが除く。


「アピールがすげぇナ。嬢ちゃんは好かれやすいのカ?動かなかったやつは属性が合わねえみたいで力になれないそうダ。残念そうにしてル」


 ドドにはスコップの声が聞こえるようだ。

 残った3本のうち右端の1番大きいものを手に取ってみる。

 少し私には重い気がする。


「そいつは嬢ちゃんには合わねえみたいだナ」


 ドドが助言してくれる。

 次は真ん中の豪華な装飾がついたものを持ってみる。

 大きさや重さは問題ないが、なんだか手がムズムズする気がする。


「あーそいつは嬢ちゃんを動かしたいみたいダ。上手く掘れるだろうが、乗っ取られるかもしれン」


 なんだか物騒な言葉に急いで手を離す。

 これは絶対なし。


 残った左の銀のスコップは細身のデザインで無駄な装飾はなくシンプルだ。

 手に取ると軽く、手に馴染み、上手く掘れそうなイメージが湧いてくる。


「これにします」


 すぐさま決定し、伝える。


「決まり、だナ。そいつは繊細な動きが得意ダ。大事に使ってやってくレ」


 そういうドドは父親のような顔をしている。

 もしかしたらドドにとってここにある物は子供のようなものなのかもしれない。


「いい物があってよかった。そいつは2000コインなんだがいいか?そのへんのスコップに比べたら高いが、性能は保証する」


 マリウスが聞いてくるので、もちろんすぐさま払う。

 お金がない私に2000コインは決して安くはないが、このスコップはそれ以上の価値があるように思えるからだ。



 こうして無事スコップを手に入れてホクホクな私は、仲良くなったマリウスと連絡先交換をして、お店をあとにするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ