甘い森
青々とした元気のある木と木の間から光が漏れて穏やかな空気が流れている。
草木の匂いや小鳥のさえずりが全身を癒してくれているようだ。
森の中といえば、暗くジメジメとしたイメージのあった私はその光景に感動していた。
周りに人がいないのを確認して大杖を装備し、わたんにも出てきてもらった。
わたんも森が好きなようで、嬉しそうに私の周りをぐるぐる飛び回っている。
先程、兄姉達にわたんを紹介したのだがさっぱり距離は縮まなかった。
まったく興味が無いようで、愛想のひとつも見せようとしない。
特にシスねぇは不得意分野に動物があるのもあってか、完全に無視をされていた。
シスねぇ自体もそんなに動物が好きということはなく、気にしていないようだったのでお互い様かもしれない。
ちなみに伊達にぃは地味にショックを受けていた。
和やかな雰囲気でどんどん森の奥に進んでいくと、少し先の木の影からにゅっと魔物が1匹現れた。
ポップピンクなキャンディーの頭に小人サイズの体。
シュッシュッとこちらにファイティングポーズをとってアピールしてくる。
「お あれはピンクキャンディーマンだな。初めての戦闘にはちょうどいいんじゃないか?」
伊達にぃが指をさして教えてくれる。
「おおー!ついに!」
待ちに待った戦闘である。
私の攻撃方法は素手で攻撃か、光魔法Lv1で使える『光球』か大杖でぶん殴るかである。
もちろん最初は初の魔法を選択する。
「『光球』!」
スキル名を唱えると手のひらに光の玉が現れた。
それをキャンディーマンをよく狙って投げ付ける。
「ペロッ」
見事命中するとキャンディーマンは鳴き声を漏らし、少しよろめいた。
わあ、魔法使えた!凄い凄い!
嬉しくてぴょんぴょんと飛び跳ねる。
今度は大杖で殴ってみよう。
こちらを警戒しているキャンディーマンに素早く近づき、大杖を振りかぶり殴る、殴る。
キャンディーマンも反撃しようとしてくるが、こちらのリーチが長い分、当たらない。
数回の鈍い音のあとキャンディーマンはブロックとなって砕け散り、消えた。
初勝利である!
「お疲れ様。いい感じだった。私のスイートハニーちゃんは才能の塊」
少し離れたところで見守っていたシスねぇが拍手をして、大袈裟に褒めてくれる。
「おー最初にしてはかなりいい動きできてると思うぞ。それに大杖を使ったから《杖術》取得したんじゃないか?」
……本当だ!伊達にぃの言う通りスキル欄に《杖術Lv1》が追加されている。
さらに《光魔法》、プレイヤーレベルもLv2にレベルアップ。
それにより『灯球』を覚え、体力も100から120に増えた。
素材も落としたようで『キャンディーピンク』×1がアイテムボックスに追加されている。
最初はレベルが上がりやすいのはどこのゲームでも同じらしい。
た、楽しすぎる!