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迷いの森

作者: 緒方 零

 ある町の細い道を進むと見えてくる森。

 薄暗くて道は細い。通称、迷いの森。

 その森に近づき、中に入ったら二度と出られない。




 そんな森に近づく一人の男の子がいた。

 名を狩野(かの)雄大(ゆうだい)




「なぁ雄大!やっぱ、やめとこうぜ!」




 森に徐々に近づく雄大に止めの台詞が入った。

 雄大は歩くのをやめ、雄大をとめた男の子の方に振り向く。




「なんだよ、泰祐(たいすけ)。さっきはあんなに行きたいって言ってたのに」


「いや、怖くなってきて・・・」


「情けないなぁ」


「本当に帰れなくなったらどうするんだよ?」


「そんなの只の噂だ。俺は噂なんか信じない」




 そう泰祐に言い放って雄大はまた歩き出した。

 後ろで泰祐が「おい雄大!」とか「やめとけよ!」などと声をかけているがすべてシカトし、森に入っていく。

 最後に聞こえたのが「俺は帰るからな!」と言っていたのが最後だった。




「怖がりだな。俺は絶対帰って泰祐に自慢してやる」




 道を進んでいくと森なのに鳥居が見えた。

 普通は赤なのに黒色したその鳥居は雄大の視界に入らない。そして、鳥居の下の看板に「立ち入り禁止」と書かれていた。




「立ち入り禁止?そんな看板があるから皆、入りたがるんだよ」




 そう言いすて、雄大は中に入っていった。

 中は道が狭く一人が歩くのが精一杯だった。

 20分くらい歩いたところで歩き疲れたのか、足の感覚がなくなっている。




「え?」




 そういった瞬間、雄大は転んだ。

 後ろを見ると、なぜか歩いてきた所が濡れている。

 濡れているのは水じゃない。血だ。


 自分の足を見てみると膝から足が斬れている。しかも、ワイヤーナイフのような切れ味で。




「いって・・・。誰が・・いつ、こんなこ、とを・・・」




 痛みでうまく話せない。

 そこに座っていると周りから声が聞こえた。




「私は腕をもらおうかな♪」

「じゃあ、わたしは肩から肘まで♪」

「僕は眼球がいいな♪」




 今、足が斬られているので自分のが欲しいと言っているのはすぐ分かった。

 ここにいてはいけない、頭では分かっているのに足がないので動けない。




「ちょうだい。お兄ちゃん♪」


「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」




 雄大は次から次へと奪われる。

 腕を失い、足も失った。眼球も失われる。




 「や、やめて、くれ・・・」




 すべてを失ったのにまだ生きている雄大。

 周りは血の海でその真ん中に腕、足を失った雄大がいる。




「残りは頭と内臓だね♪」


「うわぁぁぁぁぁ!!」




 お腹を切り裂かれ、肝臓や腎臓が次々に体から出て行く。

 腕がない雄大はとめる事もできない。


 ついに心臓までもが持ってかれた。

 宙に浮いている心臓はまだ脈を打っている。


 雄大はまだ生きている。




(かえ)してくれ・・・。俺の・・・」




 最後の言葉はこれだった。










「迷いの森に行こうぜ!」


 また一人、森に入ってきた。



「あなたの心臓ちょうだい♪」

「腕や足も忘れないでね♪」




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