表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

三話

 彼が泣いているのを聞いたあの日から、数日が経った。


 あの日から冷蔵庫の中身が少なくなっていた。


 一日の間に、一度も扉が開かれないこともある。


 僕は嫌な予感がしていた。


 あの時の笑顔が、もしかすると二度と戻ってこないのではないかって。



 また数日経った。なんだか僕が目覚める感覚も長くなってきている気がする。


 この部屋には、僕と彼しか居なかったのに。

 知らない人が急にやってきたんだ。


 なんで分かるかって?だって冷蔵庫の中身を探る目の前の男は、僕が見たことが無い人だったから。


 扉を開いたまま、見知らぬ彼はこう言ったんだ。


「もう、戻って来い。無理して一人で暮らして行く必要は無いだろう。」


 僕には、その言葉の意味が理解できなかった。


 それもそのはず、僕は何も知らなかったから。


 あの笑顔だった彼が、仕事を辞めていたことなんて。


 正しくは、仕事を辞めなくてはいけないほど彼が傷心していたことを。



 僕の記憶の最後。冷蔵庫の中身が全て無くなったあの夜の日。


 この部屋に置かれてから、初めて彼が話しかけてくれたんだ。


「おつかれさま。」


 僕はその言葉を聞き終わると同時に、まるで死んだかのように意識が途絶えた。


 何が起こったかなんて分からない。でも、最後に彼の言葉と少し笑った顔を見られたから。

 僕はそれで満足だ。


 彼にしてあげられたことなんて、なにも無いかも知れないけれど。


 彼が僕と出会った時の、笑顔が取り戻せることを、ただ祈るばかり…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ