表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

二話

 朝と夜、彼の顔を見るのが僕の日課だ。

 

 出会った時みたいな笑顔を見れる日は、少なかったけれど。


 僕は彼の顔が見れるだけで、嬉しかったんだ。



 なのに。


 最近は、彼の顔を見る日が少なくなっていた。


 特に夜に見れないことが多い。


 どうやら彼は、どこかで夕飯を済ませてきているみたい。


 深夜遅くに、玄関のドアが開く音が聞こえて来た。


 その音はいつもと違って、乱暴で慌ただしい。


 初めて見た彼の笑顔を思い出すと、まるで別人みたいだ。


 でも、僕は何もできない。


 何もしてあげれなかったんだ。



 その日は突然やってきた。変わらない日常、変わらない景色。

 そう思っていたのは、どうやら僕だけだったみたい。


 彼がいつものように冷蔵庫を開け、ビールを取り出す。でもその顔は、一瞬も笑顔になることはなく。

 むしろ、彼の顔はいつ泣き出してもおかしくない程に歪んでいた。

 それは偶然のこと。たまたま彼が、冷蔵庫を閉め忘れていたから気付けたこと。


 少しの隙間から聞こえた音は、彼の苦しそうな泣き声だった。


 でも、僕は何もできない。


 だって僕に感情も、声を出す力も無いから。


 

 いつからなのだろうか、彼が夜に泣き始めたのは。


 僕が知らないだけで、彼はずっと毎晩泣いていたのだろうか。


 考えても、僕に出来ることなんて一つしかない。


 この冷蔵庫の中身を冷やし続けることだけ。


 そう、僕は彼が笑顔で買ってくれた冷蔵庫なのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ