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一話

 変わらない日常。


 五時にセットされた目覚まし時計のアラームの音で目が覚める。アラーム音の大きさに心臓をバクバクさせながら、今日もアラームを解除してから起き上がる。重いまぶたを擦りながら、冷蔵庫から牛乳とハムを取り出し、いつもと同じように朝ご飯の準備をしている。


 いつも朝はテレビを付けない。静かな朝が好きみたい。


 一人暮らしの彼の朝は、今日もいつも通り。


 昨日と変わったことと言えば、ネクタイを締めていないことくらい。どうやら今日からクールビズらしい。


 変わり映えの無い、一間の景色。


 僕は話すことが出来ないけれど、彼の邪魔をすることもない。


 少し寂しいけれどね。


 

 仕事から帰って来る時間になると、疲れた顔をして玄関のドアを開けるのが見えた。

 

 スーツを脱ぎ、寝間着に着替えると、いつものように冷蔵庫を開けるんだ。


 ビールを取り出す瞬間、彼の顔が少し笑顔になる。


 なんだか、僕まで笑顔になりそう。


 顔なんて無いんだけれどね。



 彼と出会ったのは、半年ほど前のこと。


 僕は兄弟と一緒に並んでいたんだ。


 僕は四兄弟の末っ子で体も小さく、力だって一番非力。兄さん達は、お客さんに自慢げにアピールしているのに、僕は何も取り得が無いから小さい身体を更に小さく丸めて、隅で隠れるようにしていたの。


 何時間、何日経っただろうか。いつの間にか、隣にいた兄さんたちは居なくなっていて、僕だけが一人残っていた。

 

 このまま、僕はずっとひとりぼっちなんだろうか。段々と僕は怖くなっていった。


 外は明るいはずなのに、僕はどこかに閉じ込められている、そんな気がしてならなかった。


 そんなある日、鍵を開けてくれる人が現れたんだ。


「凄く、気に入った!これが一番だ!」


 一番。そんな言葉を投げかけられたのは、初めてだった。


 それから半年間、僕は彼と一緒にいる。


 一緒にいられる時間は、短いけれど。僕を選んでくれた彼に、精一杯恩返しが出来るように僕は頑張るんだ。



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