魔王の苦悩
だいたい勇者が善。魔王が悪なんて、誰が決めたんだ。魔王だってなぁ、いろいろ考えて行動した結果、世界を支配しちゃったんだぞ。僕の場合はねぇ、悪魔が迫害されてるから、この世に住処を作ってあげようとして魔界を開放したら怒られたんだ。「この世界を壊すな」って。じゃあさ、この僕の痛みは誰がわかってくれるわけ?人間だって開拓するじゃないか。それと同じことをやって、何で僕だけが怒られるんだ。
僕の仲間も沢山いた。でも中には「こんなの間違っている」といって勇者側に寝返った裏切り者もいる。志は同じだった筈なのに……。同じ魔界のなかですっぽんの血を飲んだ仲じゃないか。ひどい。
そんなこんなでこの悪魔城に勇者一行がやってきた。なにが「もうここまでだ!」だ。返り討ちにしてやる。
でも、勇者には可愛い魔法使い、僕を殺せる魔法の剣、召還使、裏切り者のMが存在する。勝てっこないや。あーあ。痛いから角と顔面は止めて、マジで。HPが無くなるまでリンチは続く。もういいって。せめて優しく倒して。
倒されたあと、僕は考えた。
「もし生まれ変われるのなら、勇者になろう」と。