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肉布団の誓い

「ミスタァァァァアアアア! ムーンラーイ」


 暇なのか、人種以下略達はカラオケ大会を開催していた。そこそこうまいとは思うのだけど、確かにどこか熱のようなものは感じられない。どのみち男臭い面子だったのでスルー。


 女性陣はというと、映画の鑑賞会を開いていた。下妻物語だ。こいつらの妙な服装はこういう創作物から来ているのだろうか。一般的な服じゃないことは理解しているが、そこまで奇抜とも思っていないのかもしれない。


 こいつら、仕事とか無いのだろうか。

 無いんだろうな。


 イウコティの部屋にいた頃、仕事と呼ぶべき大半のことは奴隷扱いの人間がしていた。それでも、牧場の管理業務や奴隷への指示出しなど、大半の人以下略も軽いものとはいえ仕事をしていたように思う。

 人口に比べて仕事が少ないのだろう。

 つまり、ほとんど遊び人だ。

 なんて素敵な社会なのだろう。


 僕ならとりあえず女性陣と共に写真集の撮影にでも入るところだが、以下略は性欲も薄く、異性にあまり興味を持たない。二次萌えはそこそこいたが。

 二次元こそ至高という人もいる。確かに同意できないこともない。しかしその二次元の始まりは、三次元の模倣だということを忘れてはならない。

 三次に興味の無い者には、リトル僕を刺激できる程の二次は創れない。たまに例外がいるけど、それは天才の類だ。


 これではたしかに、人間の創る娯楽が必要な環境なのだろう。下略達は自分では何も生み出せない種族だ。


 僕だって人のことは言えない。起きて飯食って遊んで風呂入って寝る生活だ。合間合間にセクハラは忘れないが、生産的とは言えない生活だ。

 最近では、女性陣の風呂に混ざっても何も言われなくなった。むしろ争うように洗われたり、もみくちゃにされる。

 リトル僕を丁寧に洗う作業は特に人気があり、数人チームの交代制で行われる。本番こそ無いものの、全身の至る所で致すのでバリエーションもあり、特に不満はない。


「あ、あ、あ、あ」

「あっ♪」


 リトル僕が涙を流すと、女性陣は争うように自家製カルピスを奪い合う。

 おもちゃにされているのはわかるが、不満などあろうはずもない。

 何をしても拒絶されないというのは、少し物足りなくもあったが。


 権力者がハーレムを作りたがる理由がわかった。こんなもの、作りたくなるよな、そりゃあ。

 たとえ非生産的だとしても。


 風呂から上がれば後は寝るだけである。こちらも、戦いが終わってからは三人制ではなく、希望者によるローテーション制だった。


「むっひょおおおおおおお」


 ロリ子は変わらず俺の世話を焼きたがった。全力で頬ずりするのにも奇声にも慣れ、愛情表現の一種だと思うことにする。うるさいのに変わりはないけど。シラはときどきやってくるが、ポニテは来なくなってしまった。少し寂しい。


 他の参加者は少し迷惑そうにロリ子を見たが、すぐに俺の身体に抱きつくように眠った。ロリ子は俺の頭を抱きしめるように足を投げ出して座り、股の間に俺を収納している。

 文字通りの肉布団である。


 俺はもしかして神なんじゃないのか。


 今日はロリ子のほかに、ミニ着物他数名もいた。ミニ着物のくせにミニ着物姿ではない。

 全裸だ。

 僕は全裸が好きじゃないが、寝る時は全裸派という人の存在を否定するほどに狭量ではない。否定するほどでは……うん、いいなコレ。

 無防備だ。全力で無防備なのだ。一糸纏わぬだけにとどまらず、寝顔という最も無防備な瞬間を晒しているのだ。

 僕にこれ以上ないまでの無防備を晒している。それはおそらく、身体を許すよりももっと大きな、否。別種の征服感を伴っている。

 小さな子供や動物に対して抱く感情に近い。母性、いや、父性愛だろうか。なにもかもを開けっぴろげにして、僕の隣で眠っている。

 リトル僕がうずいた。

 胸が投げ出されているが、形が崩れるということもない。整いすぎていると偽乳に注意が必要だが、これは天然物だ。僕に偽乳は通用しない。

 鷲掴む。


「ひゃっ!?」


 揉む揉む。

 ミニ着物が何か言っているが、僕の耳には入らない。

 さて、全身を女体に包まれ両手を胸で塞いで、これでようやく女体への渇望を抑えられる。基本的に女体に飢えている僕だから、こうでもしないとすぐにエロ方面に頭を使ってしまうのだ。

 エロとは僕にとって、いや待て違う、まだ足りないか。

 先日はすこしぽっちゃり系の下略に全身を包まれていた。思い出せ、どこが足りない?

 僕はぐったりとしたリトル僕を隣で眠る略の股の間に挟んだ。

 ふむ、いい収まりである。

 ええと。

 頭が冴えてくるのを感じる。性欲を抑えた僕は、賢者にだってなれるのだ。


 僕にとって問題なのは、人間を狩ることである。

 僕は人間社会と隔絶されたとはいえ、現状の扱いに何一つ不満が無いとはいえ、見知らぬ場所で、女の子が苦しんでいるかもしれないという状況は看過できない。

 僕にできることなんて高が知れている。僕が何をしたところで、飢えに苦しむ未開発地域の女の子や、人間社会における人身売買組織の女の子が救われる訳ではない。

 環境自体が変わらなければ、未来の女の子達は救われないだろう。


 やらない善よりやる偽善とはいうが、僕はそのふたつに上下は無いと考える。


 短期的には、偽善によって女の子は救われる。環境を整えられ、施しを受け、生をつなぐことはできるだろう。

 しかし施されることを覚えた女の子は、その次の世代も、変わらず飢えているだろう。

 施されることを計算に入れて、奴らは子作りをするからだ。もしくは、計算などしていないのかもしれない。


 長期的には、善によって女の子は救われる。教育を施し、自分で食いぶちを得る方法を教えること。その連鎖で、生まれてくる女の子は飢えることはなくなる。

 しかし食を施すよりもコストはかさみ、全員を救うことはできない。

 知識さえあれば、無計画にポコポコ子供を産むことも減る。


 後者のメリットのほうが多く感じられるが、その為には切り捨てなければならない命がある。それを善しとしない人がいることも理解できる。

 一長一短だ。


 できるだけのことをするのがやる偽善だとしても、「何もしないこと」はやらない善ではない。だからって悪でもない。普通だ。

 普通の人は何もしない。できることなど高が知れているからだ。せいぜい、お釣りを募金箱に入れて悦に入るくらいだ。これが、今までの僕。

 でも、今の僕ならば。

 善を成せる、のではないだろうか。


 こいつらの狩りがどの程度の規模なのかは知らないが、ごく少数ということはないだろう。長い時間をかけて、少しずつだとしても。

 牧場には捕まった女の子達がいて、助けられるのを待っているかもしれない。

 その子達を助け、これから先、さらわれる子が出ないようにする。

 善だろう。

 これは、善だ。

 全ての不幸な女の子を救うことはできないが、確実にその数を減らせる。


 では、その為に何をするべきか。

 まず、この世界の価値基準を知ることだ。

 無理矢理に狩りをやめさせるというのは簡単だが、根本的な解決になりませんよね?

 どうして人間が必要なのかを知り、代替案を考える。

 そうすれば、人間を狩る必要などなくなるはずだ。

 アメリカだって、奴隷を開放しても社会が成り立っている。

 人間が必要なのは、外貨を得る為だったっけ。

 詳しいことはよく知らないから、それも調べる必要がある。

 明日からそれを調べようと決意する。


 ふう。そろそろ脳が限界だ。

 

 僕は寝返りをうち、うつぶせになった。リトル僕がすっぽ抜け、ビタンとミニ着物の身体に当たる。顔がロリ子の太ももで塞がれる。

 ロリ子の股間に顔を埋め、心地良い匂いに包まれる。安らかに眠れそうだった。







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