お祭り騒ぎ
目を覚ますと、いつものベッドに寝かされていた。
「あ、おはようございます」
シラが僕の手をとり、じっと見ていた。
「戦争は?」
「終わりましたよ」
表情を見るに、どちらが勝ったのかなんて聞くまでもない。
「みなさん、あなたのおかげで獅子奮迅の活躍でした」
「なにもやってないよ」
風呂入っただけだ。
「いいんです。あなたはそうしているだけで意味がありますから」
「ふうん……」
よくわからないが、そういうことなら構わないだろう。
「今みんな、祝賀会やってますよ。参加します?」
「ん、いいや」
汗かきまくったからか、なんだか気だるい。頭がクラクラするのはのぼせたからか?
というか、身体の節々に違和感があった。特に、脇と胸、それと、リトル僕辺り。
「イガーポップ達はどうなったの?」
「ええっと……捕獲されて、今は牢の中です」
ご愁傷様。でも、人間を狩っていたなんてやつだから自業自得だ。
「狩人の一族はほぼ全員捕獲。以降は下働きとして管理下に置かれます」
「そっか、それじゃあ、人間狩りも終わりだな」
安堵した。が、シラの一言。
「はい、これで先進国に対する狩りも終わりですね」
サっと、僕は青ざめた。
「先進国、だけ?」
「はい。あ、もちろん少数民族は保護されていますから大丈夫ですよ」
僕が引っかかったのはそこじゃない。
シラは、気付かない。
「一部の見境のない狩人のせいで、真面目な狩人まで白い目で見られるのは可哀想ですからね」
「ねえ、どうして先進国の人間は狩っちゃいけないの?」
少数民族は、絶滅の危険があるから。それはまあ、理解可能ではある。
「問題になる可能性が高いからです。例えば、政治家や有名人、その家族。見た目ではそうとわからない、社会的に影響力を持つ人物を、誤ってさらってしまうことがあるんです」
「後進国だって、その可能性はあるんじゃ」
「見分け易いですから。お金持ちと、そうじゃない人の区別が」
中流の多い国では、それが難しいんだと。
シラは、当たり前のようにそう言った。
どちらにせよ、さらうのであれば若い人間だ。若いうちは、親の懐事情が服や身だしなみに現れ易い。
それに、警察も先進国のほうが優秀で、人が消えることに敏感なのだという。
「あ、そう」
どうしてか、シラの身体に触れる気が起きない。
いつもの僕ならば、こうして話をしている間にも、彼女の身体に飛び込んでいただろう。僕がそれをしないからか、シラも少し手持ち無沙汰というか、居心地が悪そうにしている。
どれだけセクハラを受け入れる気満々なんだ。
手を伸ばし、シラの胸に触る。ブラと胸肉の境目、僕の大好きな感触。
「あ、や、ダメですよぉ」
困ったように笑いながらも、彼女はどこかホっとしたような顔を見せた。
リトル僕は、沈黙を貫いた。




