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ハァー・ビバノノン




 と、そこへ、筋肉が部下を伴いやってきた。


「やあやあ。ご機嫌いかがかな」

「ついさっきまでは最高だったよ」

「ははは! それは失礼したね!」


 嫌味を真正面から受け止められては立つ瀬が無い。シラにうずもれていた僕は居住まいを正した。


「さて、明日には戦いが始まる。きみを連れて行くわけにはいかないが、できるなら協力してほしい」


 筋肉は僕に頭を下げた。すごい字面だ。


「まあ、できることならね」

「そうか! そりゃあ助かる!」


 黒光りする肌を揺すってポージングをし、ニカっと笑う。なんだこの超兄貴。


「きみの協力如何で、こちらの戦力がガラリと変わるからな。さて、では来てもらおう」


 もそもそと立ち上がり、ついていく。どうやら外に向かうらしい。建物を出たところで、数人の女の子が待機していた。


「失礼します」

「お?」


 ミニ着物女が僕の服を脱がしに掛かる。まずシャツを脱がされ、次いで下穿き。顔が間近に迫り、甘く成長したリトル僕が出迎えた。

 おいおいベイビー。こりゃあ一体、どういうプレイだい?


 で、だ。


「なにするつもりなのさ」

「ささ、とにかくこちらへ」

「ん……」


 僕の状態はといえば、全裸である。服を脱いだのだから当然だ。

 一糸纏わぬ、生まれたままの姿である。

 どういう配慮なのか、筋肉ら男性陣はいなくなっていた。普通は逆だろうが、僕にとっては正解だ。女の子が、1、2、3、4人。シラとロリ子を加えて6人。手に手にタオルや桶を持って道を作り、ニコニコと僕を眺めている。着衣、か。

 その行き着く先には、緑色のドラム缶が待っていた。下部に薪が設置され、赤々と炎が揺らめいている。

 ドラム缶風呂。さすがに初めてだ。

 モデル歩きで女の道を行く。僕は知らず、なんだかとてもアンニュイな表情を作っていた。女性の視線独り占め。大げさに左右に身体を揺らすたび、リトル僕がビタンビタンと腿に当たる。

 クィッ、ビタン。クィッ、ビタン。

 アヒョー!

 どうでもいいけどアヒージョという食べ物の名前が気になる。


「ええっと、禊か何か?」


 スーパーモデル気分でドラム缶の前に到着する。

 身体を清めるのだろうか。タオルや桶を持っているということは、彼女らに洗ってもらえるということである。

 禊。某路上格闘家でも球磨川さんでもなく。僕のイメージでは、白襦袢の巫女さんが水垢離をしている光景である。

 とはいえ、対象が僕なので、所謂『洗い』ということか。

 ツボ! タワシ!

 それはなんだか楽しそうで、リトル僕がピクリと反応した。


「どうぞ、暖まってますよ」


 ミニ着物女が僕の腕をとり、ドラム缶に入るよう促した。


「そんなことより一緒に入ろうぜぁ!」

「ダメです。今日はあなたを洗う日なの」


 やはり僕は臭いのだろうか。ポニテもそんな態度だったし。おかしいな、風呂には入っていたはずだけど。

 スンスン。薪の焼ける匂い。それから、石鹸の匂いとお湯の匂い。微かに香る女体のかほり。

 嗚呼! 嗚呼! ここが夢に謡われた女湯だ!

 桃源郷に踏み入ったのだ!


「さ、入ってください」


 洗ってもらえるのだから文句はない。僕はウキウキと弾むリトル僕を押さえつけ、備え付けの三段しかない階段を上がり、ドラム缶風呂に入り込む。

 蓋が浮いていて、たしかコレを足場にするはずだ。弥次喜多道中で見た。

 ざぷんと着水。お湯があふれることはなかった。


「おお……」


 普段浸かっている湯船と比べてドラム缶は底が深い。立ったまま風呂に入るという感覚は中々悪くない。

 お湯はぬるめで、何か薬品でも入っているのか、すこしヌルヌルしていた。水溶性ローションとは違う感触。


「なぁにこれぇ」


 空を見上げ、目を閉じる。単純に気持ちいいぞコレ。果てしない大空と、女の子と、ドラム缶風呂と、全裸の僕。

 いやあ、こうも気持ちが良いと、人間、紳士的に振舞う余裕が出てくるものなのでしょうね。

 例えば、裸を見せ付ける類の人間を露出狂とは申しますれども、あれは相手のリアクションを楽しむものでありまして、悲鳴や恥じらいに興奮を覚えるものであると言っておりました。それは今の僕の快感とは別のものです。

 僕も風呂上りに全裸でウロウロしてエンジェルたんに見せ付けたりはしますけれども、チラチラと横目で見ながら顔を赤くしている姿は大変に可愛らしいものであります。この場合は性的興奮とは趣を異にするものでして、あくまでイタズラの範疇であると存じます。恥じらいというスパイスを振り掛ければ、たとえそれが妹であっても過分に魅力的にございます。

 対するところ、今のわたくしは竿もふぐりも露に、無防備なる小さなわたくしを晒しておりますれば、それを異なこととも捉えないおうなに囲まれてございます。

 これが如何に幸いなことであるか、どなた様も頭をお巡らしなすってくださりませ。ヌーディストビーチのおうなに対しては辛辣な評価を下したわたくしですけれども、晒す側の立場になったことはごじゃりませなんだ。

 性的なものとはまた別種であり、妹子に対する悪戯心ともまた違う、それが当然であることのように捉えられること。

 要するところ、今、わたくしの胸に急襲せしめましたるは、ほんのひとつだけの感情だけにあらせられます。ああ、疲れるコレ。やめよう。

 

 テラ☆開☆放☆感!


 風呂という日本人の遺伝子に刻まれたリラックス空間。どこまでも青く広がる、雲ひとつ無い大空。開放感の最高峰はこれだけでも十分であるのに、今の僕には、六人もの女の子がすぐ傍にいるのだ。

 最高の舞台だと思わんかね?

 あとはまあ、一緒に入ってくれたらなあ、なんて思うけれど。


 以前、原付で夏の浜辺を巡る旅に出たことがある。昼間は浜辺で視姦するのに忙しく、必然的に移動は夜となって、ド深夜、車も通らない山道に差し掛かった。

 僕はおもむろにチャックを開けてリトル僕と対面し、二人で夜のドライブと洒落込んだことがある。おそらく、この時が今までの人生で最も開放的な瞬間だった。 

 現状は、それに倍すると言っても過言ではないだろう。


 正直、風呂ならシラやロリ子と入ったことがある。イウコティとなんか何度もだ。しかし、複数は初めてのことである。なにより一方的に僕だけが裸という状況が素晴らしい。

 全員が着衣状態で、裸の僕を見ている。ある種の倒錯的なシチュエーション。視線が注がれているのが目を閉じても解る。ドラム缶が透明ならなお良かったのだが。






「あー、最高だわー」

「ふふ、よかったですね」


 しばらく風呂に浸かっているが、洗ってはくれないのだろうか。ただ囲んで見ているだけだ。湯はだんだんと熱くなり、身体はふやけ、毛穴から油は染み出し、汗がダラダラと流れ、垢を落とすのにちょうど良い塩梅になっている。

 チラチラと見ていると、ふと、ミニ着物の足元に、クーラーボックスがあるのに気付いた。もしかしてもしかすると飲み物だろうか。だろうな。だよね!

 熱い風呂の中でキンキンに冷たい飲み物を飲む。それって素敵やん。僕は未成年で飲めないので酒とは言わない。


「あー、熱くなってきたなー。喉が渇いたなー」

「あ、はい」


 露骨にアピールすると、ミニ着物がクーラーボックスを開いてペットボトルを取り出した。

 大○製薬のポ○リだ。

 ミニ着物はふたを捻って、そのアイソトニックをコップに入れる。並々と注がれた大塚。手渡された僕は、それを一気に流し込む。

 ンゴッ、ンゴッ、ンゴッ……。


「プッファー! あーうめぇー!」


 熱い身体に冷たい大塚が染み渡る。流れていく大塚の冷たさで胃の形がわかるくらいだった。ビバ大塚。

 

「おかわりは?」

「おう、サンキュー」


 ぐびぐびと喉を鳴らす。ギュインギュインと体内に浸透していく。五臓六腑に染み渡るたぁこのことよ。  


「ッカァーっ!」


 気分は後始末に水を入れられたホットプレートか、制御棒を入れられた原子炉だ。うおォン。

 僕は気分良く、熱い身体を大塚で満たしていった。


「そーれイッキ! イッキ!」


 周りからコールが入る。煽られるままに、僕は瞬く間に3リットルの大塚を空にした。


「うえ」


 飲みすぎた。

 腹の中がパンパンだぜ。チャポンチャポンしとるーの。

 ヤバい熱い。汗が止まらない。


「あー、くらくらしてきた」

「大丈夫?」

「んー、いい気分」


 酔っ払ったらこんな感じなのか?

 ふわふわり、ふわふわる。視界が回る。

 ぐるぐるり、ぐらぐらり。意識が飛んだ。

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