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いやーんな感じ

「人類に、敬礼!」


 爪先をそろえる一糸乱れぬ音がして、全員が僕に向かって同じポーズをとった。どうやらここは講堂で、数十人の人種が当てはま以下略がいた。

 軍隊のように乱れなく整列しながら服装に何のまとまりもなく、どんな集団なのかわからない。強いて言うならコスプレ集団。さっきの襲撃犯はもとより、忍者、鎧武者に西洋鎧、軍服、チャイナドレスフラメンコドレス、海賊やペルシャ兵、ギリシャの神様みたいな服、パリコレみたいな前衛的な服。サリーにアオザイ、バンギャにゴスパン、メイドに執事。果てはマヤ文明みたいな民族衣装。チンコケースのみの人に至っては、ふざけているとしか思えない。

 

 聴衆の中にシラがいて、小さく僕に微笑んだ。


「喜べ諸君! これで我々の悲願は達成される!」


 壇上で吠えるのは、細いのが多い人種に以下略では珍しく、筋骨隆々の屈強そうな男だった。暑苦しい。体育会系だ。僕の苦手な人種。やつらは概して頭カラッポだ。


「地球に暮らす人間を守り、その生活を脅かす身勝手な存在を討つ。それが我々、人類解放戦線だ」


 男は僕に手を伸ばす。握手を求めているのだろうが、男の手なんか触りたくない。まして暑苦しいマッチョなんてまっぴらだ。


「はは、シャイな少年だ」


 気を悪くした様子もなく、マッチョは演説の続きに入る。


「ウキンを食らった人間。それは強力な武器であると同時、自らを傷つける諸刃の剣だ。故に、イウコティはウキンの使用を制限し、捕獲屋にだけ許可を出すことでその恩恵を最大限に貪っていた。しかし! こうして、彼は我々と共にいる!」


 歓声。はい、まぁ、いますけども。

 イウコティが恩恵を、ねえ?

 僕の見たイウコティは、そういうキャラじゃあなかったが。

 それでも僕は、彼女に何か恩恵をもたらせたのだろうか。

 股間の根元辺りが疼いた。


「さあ、共に戦おうではないか!」


 僕に向かって手招きするが、行くわけがないだろう。美女になってから出直せ。

 マッチョは困ったように笑い、キラキラと輝く純白の歯を見せた。目を逸らす。あ、あの子可愛い。僕はどういう訳か体操服姿の女の子に注目した。


「あー、つまりだ! この戦い、勝てるぞ!」

「ウエエエエエエイ!!」


 突如、リア充のごとき雄叫びが上がる。なんか嫌だなー、この感じ。つうか戦いってなんぞ。誰と戦うんすか。

 うさんくさいんだよね、こいつら。僕の嫌いなタイプ。女の子が頼むのであれば、協力するのにやぶさかでないけれど。

 嫌な感じを覚えるのは多分、僕がひねくれてるからだ。

 嫌いな言葉は正義、友情、努力。そんな僕に、彼らのような主張は届かない。主人公になりたいっつってもアレだ、清廉潔白な人物になりたいわけじゃない。気に入らないものを排除できる力と、女の子にモテる力が欲しいだけ。それだけ。


「ウキンのシャイボーイよ!」

「あ、はい」


 ボディビルダーの如き笑顔。肌テカってるけど油でも塗ってんのかい?

 見たくないよぅ・・・・・・。


「何か一言。我々同志に向けて!」


 背中を押される。足がもつれて転びそうになった。

 ええー……。

 うわー、なんかキラキラした目で見てるよぅ。怖い。この人達怖い。


「ええっと……」


 シラを見る。あー、ダメだ。目がキララキラキラキラッキラしてる。

 思ったことを言えばいい。だとしたら、なにより優先されるのは、アレしかない。


「男の裸体とか見たくないので、せめて服を着てください」


 チンコケースの人を指差した。

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