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※体調管理です

十八禁っぽい描写がありますが、あくまで保護者の立場から体調管理の方法を実践しているだけです。イウコティにエロい意図はありません。なのでエロじゃないです。ペットの性欲を解消するマッサージもありますし、エロじゃないです。家畜の搾精も酪農家の仕事のひとつですし、エロじゃないです。管理義務を果たしているだけなのでエロじゃないです。

 促されるままにイウコティの部屋に行くと既に食事が用意されていて、メニューはいつもの薄味葉っぱ入りお粥ではなく、なんと焼き魚だった。

 一人分しかなかったが「召し上がれ」と言われたので、動物性タンパク質に飢えていた僕は遠慮無くかぶりついた。が、塩味が全く無い。生臭いのを隠すつもりも無いようでワタは抜いてないし中のほうは若干生っぽい。それでも食事は体力をつけるために必要なものだ。いつ何時、体力が必要な事態に陥るか知れない。気合いで全部平らげた。


「美味しかった?」

「笑えるほどマズい」

「あ、そう」


 ラブコメなんかではよく殺人的な料理下手の料理を食う話があるが、あんなものは愛情ではない。ましてイウコティは自称一児の母だ。まだ小さいだろうし、こんな料理を作っていてはいつか子供が死ぬ。

 それとも嫌がらせか? わざとマズい飯を食わせて食欲を落とさせようっていう。


「はあ……」

「ん、どうかしたかい?」

「んや。なんでも」

「さて、食事が終わったならあとは寝るだけかと思ったのだけど……君、臭いね」

「そりゃあ、しばらく風呂入ってねえしな」


 若者の新陳代謝をナメちゃいけない。今の僕は自分でもビックリするほど臭う。主人公達ってこういう状況は結構多いと思うけど、カッコいい場面での彼らも臭かったりするのだろうか。


勇者:「魔王……今ここで、貴様を討つ!」(体臭)

魔王:「フハハハ、できるものならやってみせろ!」(加齢臭)

勇者:「行くぞっ! たぁぁぁ!」(たなびく腋臭)

魔王:「なにっ! バカな! この力はっ!」(口臭)

勇者:「仲間との絆の力だ! 見えなくたってつながってるんだ!」(悪臭)


 うん、すごく残念。


「仕方ないなあ。寝る前にお風呂だね。ついといで」


 身体が痒かったし、逆らう理由はない。案内されるまま、イウコティについていった。

 橋をいくつか渡った先に、割りと大きな島があった。湯気がもうもうと噴出していて、どうやら温泉か何かの施設らしい。


「ここは普段、私達だけしか入れないんだ。利用者が少ないからいつもガラガラだけど」

「普段、風呂に入らないのか? 汚いな」

「老廃物があまり出ないのさ。デスクワークばかりで汚れるようなこともしないしね」


 ムカつくことをさらりと言いながらのれんを潜る。のれんて……。ロビーがあって、アジア人だろうか、女の子が一人いた。もしかすると日本人かもしれない。


「いらっしゃいませ」


 ロビーには籠が置いてあって、その中には白いタオルが大小二枚と浴衣が入っていた。浴衣て……。ここに脱いだ服を入れておくらしい。脱衣場は見当たらない。ガラス扉が一つあって、中は湯気で煙っているからあの中はもう風呂場だ。少し離れたあたりに女の子がいるが、まあ仕方ないか。覚悟を決めて服を脱ぐ。脱いだ服は丸めて籠に放った。


「これ、洗濯に出しておくよ」


 横から手が伸びて、イウコティが籠から服を取る。


「ああ……ああっ!?」


 イウコティそこにいた。

 全裸で。


「なんだよ。大きな声を出すなよ」


 眉を歪めて僕を見た。全体的に肉付きが薄く、小ぶりで形の良い胸を惜し気もなく晒していた。服を脱いだせいで肌寒いのか、薄桃色の乳頭がツンと上を向いている。うっすらと浮き出た肋骨の下にある、腹筋の形が美しい腹部は細く、内臓の存在が疑わしく思えてくる。小柄で細身の身体はしかし幼児体型というわけではなく、理想的な丸みを帯びていた。その透明な白い肌は脱衣場の明かりに照らされて、自らが発光しているような錯覚を僕に与えた。

 局部こそ腕と僕の服で見えないが、太股のラインと恥骨の位置から推測上するに、空間が完璧な五角形を形成していることは想像に難くない。くるりと踵を返し、背後を見せる。僕はその後ろ姿の中でも、特に膝の裏に目を奪われた。Hを象るラインは張りのある太股とふっくらと柔らかそうなふくらはぎの中間という大役を見事にこなしつつ、指でつつきたくなる風情の間接部を演出しながらも、自らの存在アピールを忘れない。尻の形は丸く、歩くたび慎ましやかに動いていた。シラが明るく健康的な色気だとするならば、イウコティは怪しく退廃的な色気があった。


 イウコティは受付の女の子に服を押し付けると、小さなタオル一枚を肩に掛けて風呂場に向かう。


「ほら、おいで」

「お、お前も、風呂に入るのか?」

「そりゃあ入るさ。ここにはきみだけでは入れないよ」


 堂々とした態度に見惚れた。混浴。なんだ、最高じゃないか。僕はイウコティの後ろについていく。椅子に座ってシャワーを頭に掛け始めたので、隣に座ってそれに倣う。普通に、銭湯とか温泉で見る蛇口だ。イナックスとか書いてあるし。娯楽以外にも輸入してんじゃん。水が入らないように目を閉じていると、背中に濡れタオルが貼り付いた。


「うわっ!?」

「洗ってあげる。ほら、腕伸ばして」

「あ、あぁ」


 石鹸も無いが、濡れタオルの肌を滑る感触は心地好かった。両腕、肩と通り、脇の下はこそばゆい。首筋、胸板、背中、腹。誰かに身体を洗ってもらうというのは、想像以上に気持ちの良いものだ。首にザーザーと当たるシャワーのお湯が、ゆっくりと身体を暖めていく。


「はい、じゃあ次」


 イウコティが引っ張るのに合わせて動く。膝と手を床についた。僕に垂直になるように、イウコティが椅子に座った。


「うおぅッ!」


 四つん這いにさせられたと思ったら、ケツとケツの間にシャワーが当てられた。それから自分がいかに恥ずかしい姿勢になっているか気付く。でも今更変えられない。タオルごしにイウコティの手がケツの割れ目に侵入する。特に念入りに、しかし強すぎない力加減は素晴らしかった。ザッとお湯で流し、タオルを軽く絞る。次に向かったのは太股の裏と、ふくらはぎ。なぞるようについと汚れを落としていく。

 ふと一番敏感なリトル僕(第二形態)にタオルが触れて、思わず腰を引いた。


「あ、痛かった?」

「いやッ、これはッ!」

「ん、ああ。恥ずかしいことじゃないよ」


 と言われても。横に裸の女の子がいれば、こうなるのも当然ではある。


「大人でも半分以上は皮かむりだ。だから恥じることは」

「そうじゃなくて!」


 包茎でないことを証明する為、やおら立ち上がって股間を誇示した。


「一応剥けてんの! 最大時に限るけど!」

「ああ、とても元気だね」

「イヤぁぁぁ!」


 にこりと微笑まれ、急に我に返る。馬鹿なのか僕は!


「っと、なるほど。ほら、四つん這いになって」


 なにがなるほどだ! 両手で顔を覆いながらさめざめと従う。もうお嫁にいけない。イウコティが後ろに回り込んだ。菊座が丸見えになっているだろう。しゃがみ、手が伸びる。


「よっ、と」


 今度は素手で。

 敏感なリトル僕を握った。


「な、な、なにやってんだ!」

「え? いや、きみの体調管理も私の仕事だし」


 両手で包むようにして手を滑らせる。ツルツルの指は僕の手と違い、細く柔らかい。


「性欲を溜めるのは良くないよ。ところ構わず発情されては困るし、計画性の無い繁殖は許可されていない」


 僕のケツの辺りに、柔らかい感触が二つ乗っかる。体重は軽く、負担になるほどではなかった。


「私のペットに同種の牝がいるなら、そちらに任せるんだけどね」

「あっ、あっ……」


 何か言っているが耳に入らない。その気持ち良さに、僕は抗えないでいた。


「あっ……」


 脳が痺れるように視界が明滅し、快感が腰の辺りに押し寄せる。


「おお……」


 イウコティが噴出する僕液を見て声を上げ、手に掛かったものを見て唾を飲んだ。

 呆気なく。リトル僕は敗北を喫した。

 イウコティは二本の指で根元から搾り取るように中身をコキ出すと、リトル僕と僕液のついた手をシャワーで洗った。最後にタオルで拭い、パンパンと手を叩く。


「そう難しいものじゃないね。しかし、結構疲れる」

「ソッスカ……」


 辱しめを受けた気分だ。というか、実際受けた。

 ただし、行為自体の快感はヤバかった。大人はいつもあんなことをしているのか。


「ほら、冷えるよ」


 手を引かれて湯槽に向かい、ザブンと一気に腰まで。それから、縁を滑り落ちるように肩まで浸かる。


「ふぃ~~……」


 足を投げ出す。広い風呂だった。全身でも軽く収まるくらいに。やや温めのお湯は、すぐに全身に染み込んだ。


「三日に一回くらいで足りる?」

「え?」

「風呂もだけど、今のさ」

「風呂は毎日入りたいかな……」

「ああそう、で、どうだった?」

「いやはい、大変に気持ちのいいものでした」


 さすがの僕も、あんな屈辱的な体勢で行為に及んだのは初めてだ。

 行為に及んだこと自体も初めてだが。


「ふふ、気持ち良いのなら良かったよ。そうじゃなくて、授業さ」

「ああ、そっちか……その質問に答える前に、聞いておきたいことがある」

「いいよ、答えるとは限らないけれど」


 表情が変わる。僅かに目を鋭くさせた。


「あいつらは、奴隷だな?」

「奴隷……少し違う」

「違うのは出産や育児までこなしてるとこだな。そこいらで狩ってくるのも奴隷だし、買ってくるのも奴隷。武力、財力、権力。人間が人間を力で使役する。それは奴隷だ」

「その定義なら、そうかもね」

「色んな人種がいたよなぁ。なかにはイガーポップがさらってきたのも混じってるんだろ」

「……」


 イウコティは笑顔を崩さない。


「異次元、まあいいさ。法律の及ばない場所なんだろうから」


 熱くなってきたので、風呂の縁に座った。


「なんで僕に教師なんかさせる?」

「それは……刺激の為だ。ここで生まれ育ったやつらはね、従順ではあるが覇気がない。言われたことを淡々とこなすけれど、創意工夫とは無縁だ。私達は少数で、何かをするには分母が足りない。きみという外的要因を投入することで起きる何か。私はそれを期待しているのさ」

「そうじゃない」


 それは望んだ答えではないが、予想通りの返事だった。


「なんか変な物を食ったせいで、僕は特別扱い。それはよくわかんねーけどわかった。でもさ、イガーポップは他にも人をさらっている。教師としての能力は、他のさらったやつらと変わらないだろ。ガキな分、劣っているとも言える。何故、僕にそんな役目を? そう訊いてるんだ」


 イウコティは目を伏せて、ゆっくりと縁に座った。動作はあくまで美しく、楚々としている。全裸のくせに。


「単純な話だ。イガーポップ達がさらう人間には、教師をさせるわけにいかないから」

「は? だって……」

「他の役目がある。だから、教師を依頼するとしたらきみしかいない。それだけのことだ」

「他の役目って?」

「どのみち、きみに会わせることはできない。それについては諦めるんだね……ねえ、家族から離れさせてしまったのは心苦しく思うから、私はきみをできる限りでは最高の待遇で扱っている。望みがあれば可能な限り応えるし、不満があるなら言ってほしいよ」

「だから、大人しく従え?」


 言うと、少しだけ悲しそうに笑った。


「違う。恨むのはわかる。でも、わかってほしい。私だって板挟みなんだ」


 板挟み……イガーポップとシラのことだろうか。最初に目を覚ました時の言い争いを思い出す。

 ずるりと頭まで風呂に潜る。

 別にイウコティが悪い訳じゃない。悪いとすればイガーポップで、恨むならそっちだ。

 ぶくぶくと酸素が無くなるまで息を吐き、限界になったところで顔を上げる。


「ぶはっ……」

「……」

「あー、もう上がろう。熱くてしゃーない! あ、今日の感想だっけ?」

「もういいよ。大体わかった」


 あえて話を変えたことで、僕はイウコティに了承してみせた。イウコティもそれを察したのか、小さくありがとうと呟いた。




★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



 他人と同じベッドで眠る、それも女で、しかもとびきりの美人とくれば、緊張するなというほうが無理だった。

 イウコティは僕の隣でスゥスゥと小さな寝息を立てている。単に図太いのか、これが人妻の強さか。見た目には少女のようにしか見えないくせに。

 風呂から上がり、イウコティは水を飲んでいた。小さなガラスの冷却機に入っていたのは水と得体の知れない乳白色の液体で、あとで母乳だと聞かされた。僕に妊婦属性はないので(むしろ妊婦モノは嫌いなので)、さすがに挑戦する度胸はない。妊婦とはつまり他の男のお手付きということで、どうしてもちらつくものがある。寝取り寝取られは趣味じゃない。

 牛はいないのだろうか。農業をやっている場所があるらしいから、酪農もやっている可能性は高い。風呂上がりには牛乳が飲みたかった。


 普段、食事を採る必要がないというのは、食事する喜びを知らないという意味でもある。丸一日以上一緒にいて、確かにイウコティは飲み物しか摂取していない。

 ポテチを吐き出したシラのように。哀れに思うのはきっと間違っているが、さりとて羨ましいとは思えない。


 寝返りをうつ。窓の外は暗くなり、雲の上だから星が綺麗だ。音楽がデレデレベキベキドンドコと、およそ寝るのに適しているとは思えない大きな音で鳴っている。今流れているのはどうやら英語の歌らしく、僕でも辛うじて聞き取れる部分があった。叫ぶようだったり、囁くようだったり、二人のボーカルが入れ替わり立ち替わり歌っている。


 みんな楽しい時を過ごす為にパーティーに行く。


 そう歌いながら、ちっともパーティーを楽しんでいる様子はない。むしろパーティーに行く奴等を馬鹿にしているようだった。ひねくれてんなー、と思う。流れる曲はみんな、そういうひねくれた曲ばかりだ。次々に切り替われども、聞き覚えのある曲は一つもない。テレビやラジオで聞いた流行りの歌とは全然違っていた。


 頭上で、暗い雲。というか真夜中だから真っ暗。夜行性の生き物が、およそ三匹。


 聞いたことのない曲だけど、なんだか今の僕にぴったりな気がした。いつの間にかフンフンとリズムを取っていて、イウコティの目が開いていることに気づかなかった。


「気に入った?」

「ん……ああ」

「信じられるかい? その音でスリーピースなんだぜ」

「へえ。スリーピースってなに?」

「三人組ってこと。興味ないか。まあ仕方ない。音楽ってやつには素養が必要だしね。で、目指してるのはそういうことなんだよ」

「っていうと?」

「牧場出身のやつに音楽を仕込んでもね、どうもダメなんだ。そりゃあ技術は上がるけど、どこか無味乾燥なんだなぁ。長年惰性でやってるだけのバンドみたいにさ、テクニックはすごいけど感動するものがないんだ。これは音楽に限らず、創作全般におけることだけど」

「それを僕にどうにかしろってか? 無茶言うなよな」

「もちろん、いきなりどうこうできるとは思ってないさ。されても困る。一応、私は是正の為に苦心していた。そう簡単に追い越されても立つ瀬がない」

「はん。つまんねーこった」


 無理矢理に目をつむる。音楽は相変わらずベケベケ鳴っていたけれど、綴じた視界の中では気になるほどのことではなかった。嘘だ。めっちゃ気になるけど我慢して眠った。




B.Y.O.B. ;System Of A Down

夜行性の生き物三匹 ;ゆらゆら帝国

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