第7話
【???】side
「アナタは知っているかしら?この世界にはいくつかの種族があることを。」
白銀の髪を長く揺らして少女はそう言った。
「ああ、気にしなくていいわよ。これはただの『独り言』だから。」
細身のガラス細工のような体つきではあるがその体にはしっかりと芯が通っており、ある種の威厳を感じる。
まるで何かを統べている長のように。
何かの頂点に立っているかのごとき威厳を。
「まあ、どのみち必要なことではあるのだし順に説明していくわね。」
「まずは人間。基本的には最弱であり、最強の種族ね。たまに想像も出来ないようなすごいことをやってのけるけど基本的には自分一人では出来ないことの方が多いわね。だからこそ数と絆の力をどの種族よりも知っているけれど。」
「次にエルフ。魔法や精霊との交流に長けた種族。とくに後者に関しては天下一品ね。精霊のことに困ったら彼らに相談すれば間違いはないわ。とはいえ人間という種族を毛嫌いしている者も少ないけれど。」
「お次はドワーフ。知ってる人の方が多いかもそれないけど鍛冶仕事が得意なちょっと小さい種族。お酒に強かったりと色々なイメージがあるけれど鍛冶の腕前はどの種族にも負けないわ。ついでに言えば気が難しい人たちが多いわね。」
「んー…今度の種族は少しばかり贔屓が入るけど許してね?今度の種族は吸血鬼。アタシから言わせてもらえれば最強の一族といっても過言ではないわね。人間と違って圧倒的に骨格が強化された桁違いの戦闘能力、膨大な魔力、そして怪我をしても自動的に治癒する再生能力。弱点こそ有名であれどそれらを封じることができればこれほど強力な種族は他にはいないわ。」
「最後に魔族。この世界の人々の間では伝説としてしか語られていないけれど実際は違う世界からこの世界へと来た異邦人。膨大な魔力と身体能力、それに驚異的な生命力を有しているわね。個体差が激しくて上位魔族はタフネスだけど、我らのような再生能力はないわ。」
そして少女は一息つき、傍にある木製の椅子にある種の気品を漂わせながら座った。
「アタシにしては長々と喋ったけれど、言いたいことは一つ。…この物語を楽しんでね?」
銀髪の少女はくすくすと笑いながらそう告げた…
【ケント】side
俺達は精霊の卵の孵化を心待ちにしながら魔力を注いだ。
…魔力を注いだのは俺だけだが。
そして卵に魔力を注ぎ始めて五日後。
ついに、卵が動きを見せた。
「ケーンート!卵がなんか光ってるわよー!?」
「うっせえ!今行くよ!」
ドタバタとしながらも俺は卵のもとへと急ぐ。
そして、俺が扉を開けた瞬間───────
卵は光を放ち始め、それがしたがって人間の少女のような姿を形取っていき、ついに色彩が加えられていく…
順に足から、白い…いや青白いと言い換えてもいいくらいの肌が露わになっていく。
次に胴。そのスリムにひきしまった体は欠けることのない芸術品の如く美しい。
そして髪。綺麗な蒼色をして、水のように流れるウェーブのかかった腰窓届く長髪である。
最後に顔、その瞳はサファイアのように美しくその瞳の底には凛々しい覚悟のようなものが感じられる。
「「……おおぉぉ……」」
蒼く、凛々しく、それでいて精霊としての威厳を持った少女が放った第一声。
それは───────────