第2話
翌日、俺は購入した盾とダガーをもってギルド入り口前にいた。
「お待たせー☆ごめん、待たせちゃった?」
リーナはプレートメイル(部分的な鎧)をつけて来ていた。
復帰直後なので万全の態勢で挑みたいのだろう。
「ん?いや、全然。朝飯食い終えてちょっと前に来たところだよ。」
「そっか。んじゃ早速行きましょうか?準備はいいわよね?」
「勿論。あ、これ頼まれてたやつな。」
ダガーと昨日購入した盾を渡してから代金を受け取る。
「あ、ダガーは元からあったやつだから構わないぞ?」
「え?そうなの?なら遠慮なく……ありがとう♪」
「で、どの依頼を受けるんだ?」
「そうねぇ…」
5分ほどリーナと話し合って決めた末に『レザーウルフ10体の討伐』にした。
昨日より数は倍だが一気に10体相手するわけでもないのでじっくり確実にこなせばいい。
今のリーナからすれば早く本調子に戻りたいだろうし…
「じゃあ、ウインド草原でウォーミングアップしながらカラハ森林地帯を目指しましょうか。」
「だな。特に危険なモンスターが出るということはないし…行こうぜ。」
「了解☆」
そのままギルドから街の門へと進んでいく。
この街はロンド、という名前で親しまれている。
由来はまたいずれ話すとしてこの街はしっかりと統治されているので安心して住める街である。
この世界にはずぼらな統治しかしていない街もあると聞くが。
話を戻すと統治の方法として身分証明がある。
平民や貴族は身分証明証を発行。傭兵などの流れ者はギルドカードで代用される。
街の出入りの度にそれはしっかりとチェックされるのでまず身分証明できない人たちは入ってこれない。
身分証明できない人々はというと…貧しくて税金を払えないものや盗賊などの対を犯した者。
そのあたりだろうか。ちなみにこの世界にもエルフやドワーフなどといった種族は存在するのだが
たいていの町では自由に受け入れている。
ロンドも例外ではない。
と、長ったらしい説明を終えたところでようやくカラハ森林地帯到着である。
「とうちゃーく。さってとー、獲物はどこかなー?どこかなー♪」
リーナがはしゃぐ。幼い子供かお前は。何歳だよ。
「それだけ大声ではしゃいでればすぐに寄ってくるだろうなぁ…」
「なによー。そのやる気ない反応はー。ビシッとしなさい。ビシッと。」
「ビシッとする前にお目当ての獲物が来たぞ、と…」
レザーウルフの影が確認できたのですっと剣を抜き放つと
「おや、こんなに早く会えるとは…ツイてるわね。」
相棒も表情が凛々しく引き締まり体を構える。
数は…1、2…3か…レザーウルフとしては珍しくない数である。
こいつらはいつも1~3匹の間で行動する。
ちなみに基本的にはランクが上がるごとに単体で出現するモンスターも増える。
まあ、高ランクモンスターの中には団体で脅威を発揮するモンスターもいるので全て、ではないのだが。
というか基本的に高ランクモンスターが何匹もぞろぞろと出て来られたら大変である。
「左の一匹、任せたぞ。」
「OK。じゃあ右二匹頼んだわよ?」
短く言葉を交わして一気に突っ込む。
まず、真ん中のレザーウルフが飛びかかってくる。これを易々と体をひねって回避。
そこへ絶妙とも言えるタイミングでレザーウルフの二匹目が襲撃。
「そちらも連携が取れてんなぁ…」
俺はここで長剣を振りかざす。
長剣は見事にレザーウルフの横腹を斬り裂いた。
「油断するなよ?」
「ケントに言われなくても油断なんかしないわよ!」
リーナは上手く受け流している。
流石Bランクである。怪我して暫く戦っていないとはいえ感覚は失っていないようだ。
「ハァッ!」
俺がもう一度剣を振ると弱っていた方のレザーウルフが沈む。
今のは鋭く無駄のない一撃で久々に手応えが違った。
返す刀で今度はこちらからもう一体のレザーウルフを斬る。
勢いに乗った一撃は飛びかかってこようとしたその影を大きく斬り裂いた───
そのまま油断することなく振り向き、リーナの援護に回ろうとしたところで───
リーナは腹をダガーで一突き。
洗練された動きでレザーウルフを一撃で葬った。
「お、そっちも終わったか。なかなか上々な動きで。」
「そうね、貴方を身代わりにしなくて済んだし。私に感謝した方がいいんじゃない?」
得意げにドヤ顔するなよお前は…
いやまあ復帰直後にあれだけの動きが出来ることはすごいのだが。
「ハイハイ、ありがとうございましたよ、お嬢様ー。」
「返事雑!?」
「べっつにー?というか、油断して後ろからザックリと刺されないようになー?」
「そんな簡単に刺されたりなんかしないわよ!?」
「わからんよー?またこうして騒いでるうちにレザーウルフが…」
「Σえっ!?どこ?どこに?」
「冗談☆…じゃなくてごめんなさい許して下さい今晩奢るからマジですみませんでした!」
……この女、今ためらいなく俺のレザーアーマーにダガーを突き付けてきたぞ…
「アンタそれでも相棒?」
「その言葉そっくりそのまま返してやる。相棒を殺そうとする奴がどこにいる?」
「ここに。一人目?」
「Σ増えるの!?」
───などと談笑していたのもほんのひと時…
敵意が牙を剥いて、俺たちへと歩を進めていた。