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太陽を飲み込んだ空は、移ろう。

影すらも消す闇は、星の瞬きも諸共しない。

消えた空の明かりは、何時を照らしていただろろう。


影が動き出す。

刃に光を飲み込ませ、闇の中でも灯を見失わずに輝いているようだ。

数十人の男達は静かに蠢いた。


目の前には巨大な黒い門。

眠った獣の口のように、沈黙を湛え閉じている。


高揚していた男達には辺りの異様さに気付かなかったのだ。


そこにいるはずの門番が居ない事に。

街が墓場のように静まり返っている事に。


「…鍵が外れている」


門を開けようとした男が訝しげに言った。

そこで初めて異様さに気づく。

集団が小声とはいうえ、いっせいに騒ぎ始める。

集団の中心に居た男が、黙って右手を上げた。


「…様子がおかしい」

「俺達の計画がバレたのか?」

「わからん…」


そこに居るはずの人々だけがいなくなったかのような異様な雰囲気。

暗い夜道を照らす街灯すらも沈黙している。

侵入者たちは慎重になる。

そうしてあたりに気を配った時だった。


「やぁ、諸君。待っていたよ」


低く、空気を震わせるように響いた声。

振り向くと、男が一人立っていた。

ただひとつ灯った、街灯の薄明かりのその横に。

夜に溶ける髪色の仮面の男が不敵に笑っていた。


「何者だ」

「人には怪盗シュヴァンツと呼ばれている」

「怪盗だと…?」


訝しげに聞く男の言葉に仮面の男はにやりと笑い、仮面の男は両腕を広げた。


「ワタシはこの街の住人からこの街を奪おう」

「なに…」

「君達の狙いは貴族だろう。好きにするが良い。ただし、街灯はすべて消させてもらったよ。

もちろん見ての通り家々の明かりも皆無」


仮面の男はス、とあるところを指差した。

一同が視線をそちらに向けると、向こうの方の一部のみ、明かりがぼやりと灯っている。


「君達が目指す場所はあそこ。さあ、道を失わぬうちに、星が機嫌を損ねぬうちに進むが良い」


仮面の男の最後の言葉と同時に街灯の明かりは消え、まるで闇に溶けるように男は消えた。

風がざわめき、髪や衣服や頬を掠める。


「…行くしかない」


男達は深く頷いて同意した。

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