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第9話  イケメン登場?



 私のピンチにミッキーがいち早く気がついて、ステージ上からひらりと衣装をなびかせて駆けつけて、倒れそうになった私を抱きとめてくれる――そんな乙女な想像をしてしまった自分に皮肉気な笑みを浮かべる。

 そんな夢みたいなシチュエーションなかったよ、希……

 現実はそんな甘くなかった。私はファンの熱狂にもみくちゃにされて無様に倒れてしまった。

 床にうちつけられた体の痛みに意識が遠くなる中、私の脳裏に浮かんだのはダサ男の顔だった。こんな時にいつも現れるのはダサ男で、助けてくれるのはダサ男だけだった――



  ※



 目が覚めると、見知らぬ部屋のベッドに寝かされていた。イベント会場で倒れたことを思い出して、きっと救護室かなと思う。

 ズキズキする頭に手を当てて、反対の肘を支えに上体を起こし、ベッドからわずかに身をのりだす。ベッドの横にはわずかなスペースがあってその周りに白いカーテンが半分ほど引かれている。隙間から見えるカーテンの向こうには人の気配は感じられなくて、私はそっとベッドに横になった。

 あーあ、せっかくミッキーの新曲だったのに、途中までしか聞けなかったな。

 ってか、今日は熱狂的なファンが多かったのかな? ライブ中にあんなステージに押しかけようとするファンがいて、もみくちゃにされるなんて思いもしなかった。しかも、また無様に転んでるし……

 すぐ側に人はたくさんいたのに、どうして人って、側にいる人が倒れると身を引くのかしら……

 あんなにぎゅうぎゅう詰めだったのに、私が倒れるのに気づいて一気に波が引いて、私は背中と頭をもろに床に打ちつけたのだった。せめて、周りの人が身を引かなければ、気絶なんてしなかったのにな。

 自分の醜態にかぁーっと顔がほてって、でも誰もいないからいいかなと思う。

 それにしても、私をここまで運んでくれたのって誰なのかな……?

 ぼーっと天井を見つめて寝がえりを打つと、ベッドがギシっと軋む音をたてる。


「気がつきましたか――?」


 男の子の声が聞こえて、とっさに身を固くする。カーテンの隙間から、手にペットボトルを二つ持った男の子が現れて、息をのむ。

 見上げるほど背が高く、無造作にかきあげただけのヘアスタイルなのに野暮ったさを感じさせないのは、整った顔立ちのせいかもしれない。

 まるでポスターの中から抜け出して来たような端正な顔立ちと抜群のスタイル、着ている服はVネックのTシャツとウォッシュジーンズで普通なのに、そこらのアイドルに負けないくらいのイケメンの登場に、急に脈拍が速くなる。


「えっと……?」


 あなたは誰ですか――という言葉を飲みこんだ私に、男の子はふわりと優しい笑みを浮かべる。

 ベッドの側に丸椅子を引き寄せてまたぐように座ると、首を傾げて私の顔を覗きこむようにする。

 目の前に端正な顔があって、眼福。


「怪我してないですか? 大丈夫……?」


 心配そうな声で尋ねられて、私は小さく頷いた。


「あの、私を助けてくれたのはあなたですか?」


 だいぶイケメンに慣れて、さっき聞けなかったことを聞いてみる。私にとってはけっこう重要な質問だったんだけど、イケメンは笑みを浮かべるだけで答えてはくれなかった。

 優しく細められた瞳はとても澄んだ綺麗な瞳をしていて、見入ってしまう。

 あれ? この瞳、どこかで見たことがあるような気がするけど、気のせいかな――?

 やっぱり、アイドルとか?

 自分の思考にどっぷりつかってると、イケメンがくすりと小さな笑いをもらして丸椅子から立ち上がり、カーテンの外に顔を出して誰かに声をかけた。


「彼女、気がついたみたいだよ」


 誰がいるんだろうと不思議に思って上体を起こす。

 シャっとカーテンが開かれて、そこに現れたのは門真 幹だった。

 えっ、ミッキー……!? なんで……

 ぼぉーっとミッキーを見つめていると、ミッキーが優雅な足取りで近づいて来て、さっきまでイケメンが座っていた丸椅子に座る。

 わっ、本当にミッキー……本物だ……

 突然のことに、ただただビックリしていると、椅子に座ったミッキーが私を見上げて――椅子よりもベッドの方が高いから、私の目線の方が少し高い位置なんだ――ぎゅっと眉間に皺をよせたの。

 美しい顔がくしゃりと歪んで、明らかに不愉快そうな表情に、驚きを通り越して呆然としてしまう。


「君、怪我は?」


 上から目線の声に、ビクッと肩を震わせて、ぱっと自分の体を見下ろして慌てて答える。


「ありませんっ」

「頭とか背中とか、もろ床に打ちつけたみたいだったけど、平気なの?」

「はい、もう痛くないですっ」


 言葉は私を気遣っているカンジがするのに、その口調からは気遣いなんて感じられなくて、頭の中であれ? っと首を傾げる。

 なんか、TVで見るミッキーの雰囲気と違う。ミッキーは女の子顔負けの美貌でふんわりとした笑みを絶やさないのに、目の前にいるミッキーは笑顔じゃないし――てか、むしろ不機嫌? ――、毒舌だぁ……


「じゃあさ、今日あったことをペラペラ言いふらさないでね」

「はい……っ」


 私はごくんっと唾を飲みこんで、間髪いれずに頷く。だってなんか、ミッキーの周りに黒いオーラが見えるよ……?


「僕達のコンサートで怪我人が出たなんて吹聴されたらいい迷惑だからなぁ……」


 まだぶつぶつと言っているミッキーに呆気にとられる。

 見た目は憧れのミッキーなのに、あまりにも雰囲気が違いすぎて、まるで別人みたい。

 ってか心のどこかで、完璧なアイドルのミッキーは実在しないんじゃないかなって思ってたから、幻滅っていうよりも安心した気分だった。

 苛立たしげに喋ってるミッキーは、パスケースのスポットライトを浴びて天使のような笑みを浮かべるミッキーよりも人間味があって好感が持てる。


「幹、猫が脱げてるよ」


 椅子に座るミッキーの後ろに立っていたイケメンが、端正な顔に苦笑を浮かべる。胸の前で腕を組んで立っている姿だけで、すごく絵になる。

 ミッキーと知り合いみたいだから……やっぱりアイドルなのかな?

 そう思っていたら。


「あー、いいよ。今日はもう疲れたし、優真の知り合いなら、お前がうまく口止めしてくれるだろ?」


 ゆうま……って、あれ……?

 どこかで聞いたことのある名前に首を傾げる。

 視線の先、幹を見て苦笑したイケメンが私を見て、イケメンがふわりと微笑んでいた。




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