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第2話  恋なんてはじまらない



 自転車置き場から無我夢中で走って教室に飛び込んだ私は、勢いのまま、窓際で喋ってる仲良しグループに飛び込む。


「わっ……、どうしたの? 美結」

「美結、おはよう」


 希に抱きついていた私は、何かに耐えかねるようにぶるぶるっと体を震わせて、ガバって顔をあげて叫んでいた。


「無理ぃ――……っ!!」


 教室にいた人がいっせいに私の方を向き、目を瞬いて絶句した希がはっと我に返って、なんでもないってクラスの人に笑って誤魔化す。


「美結、なんなのよ……?」


 私の突然の行動に眉根を寄せた希に尋ねられて、私はわたわたとマフラーを外しコートを脱いで、袖をまくって腕を見せる。


「見て、鳥肌っ。最悪だよぉ……変な男子に話かけられた、ありえない、まだ鳥肌がおさまらないぃ……」


 きっと全身鳥肌に違いないと想像して、ぶるぶると体を震わせる。

 だめだ、これは……

 エネルギー充電しないと。目の保養――っ!

 私は慌てていつもブレザーのポケットに入れているパスケースを取り出して、アイドルミッキーの写真を眺めて、ふぅーっとうっとりとしたため息をもらす。


「充電、完了~」


 そんな私の様子を見ていた希たちは、呆れたような笑みをもらす。


「なにがあったかだいだい想像つくけどさ、ちゃんと聞かせてよ」


 そう言ってにやりと笑う希に今朝の出来事を話そうとしたんだけど、始業のチャイムが鳴ってしまい、話の続きはお昼休みにすることになった。



  ※



 春とか秋は屋上でお弁当食べると爽やかで気持ちいいんだけど、冬場の屋上は無理っ! と断固、私が拒否して、この時期は暖房の聞いた教室で食べるのが定番。

 窓側の席の希のところに集まり、机を四つくっつけて、希と梨佳(りか)ちゃんと順子(じゅんこ)さんと私の四人でランチタイム。

 希とは家も近くで中学からの仲で、梨佳ちゃんと順子さんとは高二になってクラスが一緒になって、それから仲良くしている。

 みんな揃っていただきますして、お弁当を食べながら私は今朝の出来事を話して聞かせた。


「――ってわけでさ、その助けてくれた男子がむさくるしいって言うか、ダサいっていうか、なんか動きとかのっそりとしていて喋り方もどもってるって言うか、とにかく無理ぃーっ! ってカンジの男子でさ……思い出しただけで鳥肌だよ」


 クラス中に聞こえるような声で叫び出しそうになった私を、梨佳ちゃんがまあまあってなだめる。


「あーあ、また美結の男拒否症が出た」


 とか言って、希はけらけら笑ってる。

 もしもし、希、元をただせば、希のせいでもあるんですよ……

 そう言ってやりたかったけど言うのをやめて、代わりにため息をついた。


「でもさ、それって美味しいシチュエーションじゃない?」


 それまで黙って話を聞いていた順子さんが、顎に手を当ててそんなことを言うから、私は意味が分からなくてキョトンと首を傾げる。


「誰も助けてくれない中、わざわざ助けに来てくれた男子。まさにピンチに現れる王子様じゃん?」


 王子様……

 長身に短髪でさばさばした順子さんの口から王子様なんて単語が出て、私はぽかんと口を開いてみてしまう。


「それがさ、カッコイイ男子だったら、ドキドキするでしょ」

「普通だったら、胸がキュンってなるよね」


 順子さんの言葉に続いて梨佳ちゃんが可愛らしい笑みを浮かべて続ける。

 はぁ……

 ドキドキ? 胸がキュン……?


「あー、恋に発展するねぇ~」


 面白そうににやっと笑う希に、私は胡散臭そうな眼差しを向ける。


「なにそれ……」


 思わずそんなことを言っていた。


「ってか、ありえないでしょ。助けてくれたのは王子様なんかじゃなくてダサ男だし」

「もし、助けてくれたのがイケメンでも?」

「たとえ見た目がよくっても、恋なんかはじまんないし」


 きっぱりとした口調で言った私に、つまらないと言った様に希がため息をつき、順子さんと梨佳ちゃんは私の神経が理解できないと言うようにお互い顔を見合わせて苦笑する。

 イケメンだったとしても、ありえないから。それが大好きなアイドルのミッキーだったらありだけど、ミッキー以外の男子じゃ、ときめきもドキドキもありえないからっ。

 口に出して言ったら、また希に嫌味を言われそうだったから、心の中だけに留めておくけど。




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