詰問
こらこら!取り調べ中だから関係者以外立ち入り禁止だ!
俺は竺宇警察で調査師を生業としている。
今回、調香師を名乗る(異様に古めかしい言葉遣いの)依頼人から結婚詐欺被害の訴えがあり、調査に乗り出すことになった。
手口は実に巧妙だった。
まず、1次元上では完全に事実かの様に振る舞う。
ガリレイ近似が適用できる初期には、法に触れることは一切ない。
光速極限での振る舞いも被害者達の同情を誘う説得力があると来ている。
だが、執念深い捜査の甲斐あって、遂に奴の尻尾を掴むことに成功した。
これから被疑者の|取り調べを行う。
【小手調べ】
被害者Aから見た被疑者の速度を v=(-βc, 0, 0)、γ_v=1/√(1-β^2)、
被害者Bから見た被疑者の速度を u'=(0, -βc, 0)、γ_u'=1/√(1-β^2) 、
被害者Aから見た被害者Bの速度を u=(-2βc/(2+β^2), 2βc/(2+β^2), 0)、γ_u=(2+β^2)/(2-β^2)とする。
標準理論との整合性を問う。
【事実確認】
この時、
被疑者から見た被害者Aの速度は -v=(βc, 0, 0)、γ_v=1/√(1-β^2)、
被疑者から見た被害者Bの速度は -u'=(0, βc, 0)、γ_u'=1/√(1-β^2) となる。
相反性から整合性を確認する。
ちなみに、こいつは証人喚問すれば済む話だが、各二者(被疑者と被害者A、被疑者と被害者B)は同じ空間軸を共有していたと調べが付いている。
【取り調べ】
被害者Aから見た依頼人の速度イと、
被害者Bから見た依頼人の速度ロを述べよ。
ただし、被疑者から見た依頼人の速度をハ=(βc, βc, 0)、γ_t=1/√(1-2β^2)とする。
【被疑者の供述】
Aから見た依頼人の速度イ=(0, βc/√(1-β^2), 0)、
Bから見た依頼人の速度ロ=(βc/√(1-β^2), 0, 0)。
【嫌疑】
ほう?こいつは妙な話だ。
直観的には
被害者Aから見た依頼人の速度イ’=(0, βc, 0)、
被害者Bから見た依頼人の速度ロ’=(βc, 0, 0)、
となるはずだが、関係者の供述が明らかに矛盾するな。
ひょっとするとデカルト座標法に抵触する重大な法則違反の可能性が出てきた。
『速度にピタゴラスの法則が成り立つか』から真剣に調べ直す必要性すらあるぞ。
……こいつは相当闇が深い、と調査師としての勘が告げている。
どうにも血が騒ぐ…(悪寒)




