第1話:異世界Vtuber
「私は、この異世界で初めての、『Vtuber』になりたいです!」
初めて出逢った銀髪の青年から発せられた、この世界で何をしたいかという問い。
その答えは長年堰き止められていたかのように口から溢れ出した。
魔術や魔法があり、常識は今までとは大きく異なる。そして――何よりも、思い通りに動く身体がある。
最後には立ち上がることもできずに終わった命は、この世界で再生された。
失う前の死の淵。その苦しみを和らげてくれたのは、Vtuberという存在だった。
自らが苦しむ現実とは地続きではない、バーチャルの世界に存在するライバー達。
彼らを見るときだけ私は、現実を忘れることができた。
だから、この世界にも、同じような存在を。
無意識に頬を撫でる。骨ばった指、そばかす。癖のある毛。万人に賞賛される容姿では決してない。――でも、そんな私でも、目指すことができる。
容姿も、年齢も、出身も、種族さえも関係ない。そんな奇跡みたいな存在に、私はなってみたいのだ。
「――なるほどね。よくわかりませんが、承りました。じゃあ、めざしますかぁ。『Vtuber』とやらをね」
銀髪の青年は紫の瞳を丸くした後、にやりと笑みを浮かべる。
「……言っておいて何ですが、できますか?」
この世界に、バーチャルなんて概念は存在するのだろうか。
「ええ、もちろん。そのための魔法で、魔術で、そして、我々ですから。安心してください。あなたの夢は、必ず叶う。――ま、相応の時間と、努力は必要ですがね」
前の生では、努力をすることすら許されなかった。衰えていく身体、失われていく命。それに比べれば――夢に向かって頑張れるなんて、幸せ以外の何物でもない。
「はい! 頑張ります! よろしくお願いします!」
これが、私、天原月乃の、そして――これから生まれる『わたくし』の新たな人生の始まりだった。




