『送れなかったラブレターの返事』
送れなかったラブレターの返事が来ていた。
僕がそれに気がついたのは、自分の部屋を掃除しているときだった。
高校を卒業し、気分を一新するため、部屋をひっくり返す勢いで作業していた。
あいつとの思い出を見ないですむように、不要なものをどんどんと捨てていく。
勉強机の引き出しも順番に出して、いらない物をゴミ袋に入れていった。
鍵のかかった引き出しにも手をかけ、僅かに震えた指先を無視し、鍵を開く。
「……あれ?」
鍵の開いた引き出しの中に、見知らぬ白い封筒が一通入っていた。
その代わり、僕が捨てることもできず、鍵をかけてしまい込んだはずの、あいつに渡せなかったラブレターが無くなっている。
手の震えが止まらないまま、白い封筒をつまみ上げる。
封筒には、黒いペンで文字が書いてあった。
『ヘタレ』
その三文字を見て、僕の震えは止まった。
代わりに、耳が焼けるように熱く、涙があふれそうになる。
僕のことを『ヘタレ』と呼ぶのは、ただ一人、あいつだけ。
手紙を持つ手に力が入った。
「……なにか入ってる?」
指先から硬い感触が伝わってくる。
服の袖で目頭を拭き、封筒を綺麗に開けるため、切れ味のいいハサミを探した。
封筒を掴み直し、ハサミを置いて一息つく。
「ふう……あれ?」
さっきまでと、指から伝わる感触が少し違っている。
恐る恐る封筒から手を離す。
封筒は僕の手汗で柔らかくなっていた。
「しまった……」
急いでタオルで優しく叩く。
なにも変わらない自分に嫌気が差した。
「こんなだから、あいつにも……」
うつむき、そこから零れた涙が、封筒の『ヘタレ』の三文字に落ちる。
少し滲んだ『ヘタレ』が、僕を見ていた。
あいつの声が聞こえた気がする。
いつものように笑う、あいつの顔が浮かんだ。
「あいつが、僕に残した物」
慎重に、白い封筒を傾けた。
真っ直ぐの切り口から飛び出したのは、一本の鍵。
そして、ゆっくり落ちる一枚の手紙。
その手紙には住所と、一言。
『来るとき連絡必須』




