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生活保護

 ――人間社会。


 それは人間にとって絶対にドロップアウトしてはならぬ聖域。

 そこに今日脱落者が現れる。


 狂呑秋史狼。20歳。中卒。

 

 学歴、能力、経歴全てが劣っていると秋史狼は自覚していた。

 そんな彼が何とかチャンスを掴んだ普通の会社で普通の暮らしというチケットが今日破り捨てられることなってしまう予感がしていた。


「秋史狼君、君ねぇ……もう何度目かな?」


「……16件目です……」


「困るんだよねぇ……何度も君に期待してさ最大限のフォローもしたよ? でも大事じゃなくても君に振った案件を流石に16件も失敗するとなるとねぇ……」



「はい……おっしゃる通りです……申し訳ございません。」


 秋史狼は正論過ぎて何も言い返せなかった。

 自分はこの世に存在してはいけなかったのではないか? そう思考が反芻し始めた。



「はぁ……君も辛いだろう? このままじゃあれだから上に報告して自主的に辞めれるように頼んでおくから、じゃ、以上。」


 死刑宣告。そうじゃなく宣告されたのは自殺だった。


 何か言い返さなきゃ終わる。そう思っていたのに思考の反芻のせいで悲劇のヒーローで居ればもう頑張らなくていいと悪魔が囁く。


 そう考えている内に退出されてしまった。


 結局負けたのだ。悪魔に自分に。秋史狼は他の誰でもない自分で自殺の道を選ぶことにした。それがどれだけ時間経過という言い訳があったとしても。


 今目の前に最早誰も居ない。部屋を見て天を仰ぐ。涙が出てきそうで抑えるためだ。


 今の自分には泣く資格もないと、また悪魔に負けたのだ。




 □ □ □




 一ヶ月後、全てが終わった。


 秋史狼は今再就職活動に気持ちを切り替えることにした。


 不思議な事に一ヶ月もあれば気持ちを整理してこの退職を秋史狼は引きずらないことが出来たのだ。

 

 今日は何度目かの面接を受けに来た。正直結果は分かっている落ちるだろうと期待するのをやめていた。


「ここが駄目なら学歴不問に就職だな……!」


 空元気にそう呟く自分が何だか世界に取り残された気がした。




 □ □ □




『本社一同秋史狼様がますますのご活躍をしますことをお祈り申し上げます』


「分かってた……」


 不採用メールそれが来ることは想定済みだがやはり落ち込みはする。


 今日は学歴不問の面接日。これは採用して欲しいと願い向かう。




 □ □ □




 クビ。クビ。クビ。クビ。クビ。クビ。


 秋史狼は採用された。だがその度失敗しクビになった。


 秋史狼は考えた今の自分に必要なのはレベルアップだと。根本的にルールに沿って動くのが苦手だと認め。改善する。それを目標に今は無職を貫く事にした。




 □ □ □

 



 4年後。

 

 秋史狼は怖くて動けなくなっていた。


 どこまでが社会に通用するのか? 今の自分はどの辺にいるのか? 


 それが分からなく一歩も踏み出せなくなり貯金も現金も底を尽きた。


 両親は既に他界。親族なんて知らない。最早残された手段は生活保護だと。遅すぎた決断をすることにした。




 □ □ □




 区役所に足を運び福祉事務所の窓口に案内され呼び出される。


「どうも! はじめまして、私が担当をさせて頂きます。 三日月浅瀬です」


「よろしく……お願いします」


「はい! よろしくね!」


 同年代くらいの女性が対応してくれることにある意味安堵と恥ずかしさを覚えながら話を進める。


「なるほど……そんな事があって今に至ると……分かりました、ではこちらの書類を作成してもらいます」


「分かりました」


 書類を手渡され記入していく。


「終わりました」


「はい! ありがとうございます! では審査しますので家庭訪問のあと、数日から数週間後に結果が送られますのでお待ち下さい」


「ありがとうございました」




 □ □ □




審査と家庭訪問も終わり決定通知書が届いた。


「これで態勢を立て直そう……」


 そう思いこれからの決意を宣言した所で初回の入金の為に窓口にもう一度再訪する。




 □ □ □




「はい! これで入金手続きは終わりました!」


「ありがとございます」


「ところで受給部って知ってます?」


「……いえ知りませんが……?」


「ですよね~じゃあ受給者コミュニティ受給部に顔を出してみてください! これはこの区が独自で打ち出している受給者の地位向上を目指した施策の一環の部活動という名のコミュニティなんです! まだ人数が少ないので一度体験入部をしてみても良いですね! 何だったら手配しますか私が?」


 受給部という摩訶不思議なコミュニティにいきなり体験入部と言われても秋史狼には荷が重い、そう思っていたのに断ろうとした瞬間……心の奥底にあるこのまま終わりたくないという気持ちがハッと顔を出した。


「……分かりました、お願いします」


「うん! 良い返事! じゃあ手配しますね! あ、説明はついたときでいいてすよね?」


「はい、よろしくお願いします」


 こうして受給部という摩訶不思議な施策を体験することが決まった。


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