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つなぎ ― 灯が受け継がれるとき ―
時は流れた。
巫女の祈りが消えた夜から、幾千の季節が過ぎた。
光と影の記憶は言葉となり、歌となり、伝承となって、
人々の心の底に沈んでいった。
それでも、消えはしなかった。
風が吹くたび、どこかで誰かが祈る。
焔が揺れるたび、私の名が囁かれる。
そのたびに、私は遠い夢の底で微かな気配を感じるのだ。
――あの巫女の祈りが、まだこの世界に息づいている。
そして今。
再び、世界が揺らごうとしている。
気の流れが乱れ、人と神の境がほどけはじめている。
私は、長い眠りの中で、誰かの声を聴いた。
それは、名もなき巫女の声に似ていた。
けれど違う。
あの頃よりも、ずっと人間らしく、あたたかかった。
「……もし、光が影を赦せるなら。
きっと世界は、もう一度やり直せるはず。」
その言葉に呼応して、私の尾がひとつ光を帯びる。
六つめの尾が、再び目覚めた。
――時は満ちた。
遠い時の果てで、あの祈りを思い出す者が現れる。
人の名を持ち、心を持ち、やがてこの森に辿り着く少女。
私は静かに目を開ける。
夜の風が、ひとすじ、金の毛を揺らした。
――灯が再び、微かに揺れる。
その揺らぎは、時を越え、遠い未来の誰かの心に届こうとしていた。
霧のように淡い光が森を漂う。
その先に、まだ名も知らぬ少女の姿があった――




