震える月
月が震えていた。
故郷から仕事場へ戻る列車の中、車窓から見上げる三日月は、弱々しい線のようなその身を確かに震わせていた。何に怯えるのだ、そんなに天空の孤独が怖いのか、おまえは。
母は年老いていた。
前に帰った時よりも明らかに、身体の動かし方がしんどそうだった。私が重たい荷物をその手から引き受ける時、血管の詰まった薄皮のようなあなたの生命に、思わず嗚咽が漏れそうになった。
私は最近、首が震える。
素面でもまるでアルコール中毒だった祖父のように、自動的に私の首は、痙攣のように左右に振動を繰り返す。私も歳をとったのか──
ふとまた月を見上げる。
月はどこにもなくなっていた。