あの笑顔に、救われた。
その日はそのまま授業が進み放課後になった。
湊は今日部活があるため美術室に足を運んだ。
そこで待っていたのは――。
?「あっ!!きたきたー!!」
明るい声が湊を出迎えた。
その声の主は黒髪に赤いリボンのポニーテールに黒い瞳、羽鳥 楓この美術部の主将である。
湊「お久しぶりです。主将。」
湊が軽く笑う。
楓「うん。春休みどうだった?」
湊「はい、絵を描いたり、色々と楽しめましたよ。」
湊が笑いながら答える。
楓「ふ〜ん……」
楓が若干下衆な笑みを浮かべていた。
楓「好きな人でもできた?」
湊「ぶわ〜〜!!!!」
湊が吹き出す。
湊「なっなっなっ……何を言ってるんですか?!」
湊が驚いて、赤面する。
楓「だって、めっちゃ肌綺麗になってるし、眉毛も整えられてるし… 彼女でもできた?」
楓が意地悪な笑みを浮かべる。
湊「そんな彼女なんてできないです…」
湊は、剛の無邪気な笑顔を思い出して、若干心の中で寂しさを覚えた。
楓「そっか、ま〜あんまり無理に問いただすのは良くないか…」
楓は湊の表情から察したのかあまり言及してこなかった。
湊は気まずい空気感を出したことを後悔するように口を開いた
湊「実は好きな人がいます…」
楓「へ〜〜それでそれで!!」
湊は誰かに自分の想いを聞いて欲しかったので、良いかと思い、適当にカモフラージュして話すことにした。
楓「その子を好きになったきっかけは?」
楓は目をルンルンとさせて質問した。
湊「ん〜、僕が高1の頃なんですけど、僕が好きで楽しみながらやってたことがあったんです。でも、それを周囲にからかわれて、馬鹿にされたんですが、その子だけは、励まして守ってくれたんです。後は優しい笑顔と、なんか見てて安心する人なんです。」
湊は顔を赤らめながら話す。
楓「へ〜〜、随分男前な女の子だね。
今日も上機嫌だけど、何か進展でもあった?」
楓が野次馬根性丸出しの笑みを浮かべていた。
湊「そうですね。その時僕は別人のように見た目を変えていて、その姿をえらくその人が気に入ったんですよね。ただ、自分とは気づいてなくて、今後どうしようかな……って考えてます。」
湊は真剣に相談していた。
楓「別人のように見た目を変え…… もしかして………」
楓が驚いたように目を見開く
湊(やばい……!! 喋りすぎた……!! バレるか!!)
楓「ホストでもやってるの?」
湊はほっと一息ついた。
楓「駄目だよ。湊うちの高校バイトokだけど、女の子を地獄に落とすようなことしちゃ〜」
楓が眉間に皺を寄せ。湊に注意する。
?「いいな〜〜…… 青春してて…… 僕には何もない……」
湊と楓はその声の方向をみる。
その声の主は黒髪にボサボサの髪、目は死んだ魚の目をしていた。
彼の名は、四谷 陰助、美術部のひとりである。
楓「そっ…そんなことはないわよ
きっとこの先、彼女だってできるわよ!!」
楓が苦笑いで陰助を励ます。
陰助「なんで僕には…… お兄ちゃん大好き♡愛してるっ言ってくれる。妹系彼女ができないんだ〜〜〜……… あーーーー!!!」
陰助が泣き叫んでいた。
楓が無表情で陰助にビンタをかました。
陰助「何を??!!」
楓「あっ… ごめんつい手が」
楓が無表情になりながら答えた。
陰助「何故僕には彼女ができないんだ……
お兄ちゃん大好き♡って言ってくれる彼女が」
陰助は憂鬱そうに呟いた。
楓「それ、一生できないから、気持ち悪過ぎだから、リアルに何求めてんのよ!!」
楓が息を吹き返したように、早口で喋る。
楓「は〜心配して損した……」
湊が一連のやりとりをしている時にxの通知音が鳴った。