ドタバタデート日和
ほのぼの原稿10
学校も部活もない土曜日の日のこと、湊はメイクの準備をしていた。
湊は、朝から鏡の前で真剣な顔をしていた。
下地を塗る手も、まるで試験前のペン先のように慎重だ。
「今日は絶対、崩れさせない……」
ファンデをなじませながら、剛の笑顔が脳裏をよぎる。
お粉の工程を踏み、メイクが、崩れないようにメイクキープミストを顔にふりかける。
シェーディングを輪郭と鼻先、鼻下、唇の下に入れる。
ハイライトは鼻先と鼻根、涙袋の下、頬、顎に入れる。
眉毛は平行に描いた後眉マスカラを行う。
アイメイクは青みピンク系のアイシャドウを使い、美しいグラデーションにし、下瞼の目尻に締め色を入れ、涙袋の線を描き、目頭と涙袋と上瞼にシルバーラメのグリッターを入れる。
ホットビューラーでまつ毛を上げ、マスカラ下地でまつ毛を上げ、黒いマスカラで、まつ毛の存在感を出す。
青みピンク系のチークは頬と鼻根、鼻先、顎先に入れ血色感を出す。
リップはブルベ用の赤いティントを唇の中央と、上唇の山にティントを入れグラデーションにし、グロスを重ねる。
最後に美しい水光のブルーカラコンを入れ、美しいアッシュグレーの髪色のロングのウィッグを被る。
この日の湊は、めちゃくちゃ気合を入れていた。
剛と初デートだからだ。
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剛「お前の絵めっちゃ綺麗で可愛いな!!」
剛「俺頑張ってるやつが好きだ。だから絵頑張れよ!!」
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在りし日の剛との会話を思い出す。
鏡の前で深呼吸をひとつ。
胸が少し苦しいくらいに高鳴る。湊・ミナ(……剛、可愛いって、笑ってくれるかな)
湊は水色の透明感ある、肩の出た美しいワンピースの裾がふわりと揺れた。
鏡の中の自分が、ほんの少し大人びて見えて、湊は思わず頬を触った。
自分の最終確認を終え、湊は集合場所へ向かった。
集合場所の公園に到着したミナ、公園にはツツジやバラが咲き、甘い香りが風に乗って漂っていた。
そこには剛が先に着ていた。
剛は、目が合った瞬間、周りの音が遠のいた気がした。
剛(めっちゃ可愛い……やばい、何話すか全部飛んだ……)
剛はミナの美しさに心奪われていた。
ミナ「お待たせしました。待ちました?」
ミナは裏声で頬を赤らめながら、剛に話しかける。
剛「いえいえ!!全然待ってません。」
剛「今日もめっちゃ可愛いですね!!」
剛は頬を赤らめ笑顔で伝える。
ミナ「今日は普通に褒めてくれるんですね。また、ボールが、疼くとか言ったらぶん殴ろうと思ってました」
ミナは、頬を赤らめながら、軽く笑う。
剛「いえいえ!!もうそんなことは言いませんよ!!」
互いに笑ったあと、ほんの数秒の沈黙が流れた。
そして、二人は談笑しながら歩き出す。
剛「そういえば、ミナさんはどこの高校通ってるんですか?」
ミナ「あっ……あ〜そうですね。」
ミナは、内心焦っていた。
ミナ(やばい、同じ高校とは言えないし……、)
ミナ「南条南女子校に通ってます。」
剛「お〜〜!!あのお嬢様学校に通ってるんすね!!流石ミナさん!!」
ミナ(あ〜……ま〜後でどうにかしよう)
ミナ「そういえば私達同い年だし、敬語やめない?」
ミナが軽く微笑む
剛「そうだね。同い年だし、あれ?なんかあそこ人集まってね?大道芸やってるっぽいな、見に行かない?」
ミナ「そうね〜、じゃ〜行こうかしら、」
そこには人だかりが集まっていた。
ミナ「なにかしら?」
何やら男性たちが熱狂していた。
?「お〜〜〜!!!この公園のリア充を殺せ〜〜!!!」
?「てめ〜らの幸せを呪ってやる!!」
大道芸人「ま〜ま〜、落ち着いて今から、僕がショーをするからそれで気を紛らわせて」
ミナと剛は、固まった周りはホームレスのような人間と真ん中にはボロボロの衣装を着た大道芸人が居たのだ。
大道芸人は手にカップルのぬいぐるみのようなものを持っていた。
大道芸人「今からこのぬいぐるみを引きちぎり、お手玉にします。」
ミナ&剛(怖い……)
大道芸人がカップルのぬいぐるみを手に取り、引きちぎろうとする。
カップルぬいぐるみの顔が歪みながら引きちぎれていった。
2つにちぎれたぬいぐるみをお手玉のように回していく、大道芸人その顔には狂気が滲んでおり、その周りで発狂しているホームレスも凄い形相をしていた。
大道芸人「そこのカップル、こっちへ来なさい。」
剛「げっ………」
ミナ「ひっ……」
二人は集団の圧に負け、中央に集まっていく、
大道芸人「今から奇跡をご覧になりましょう」
大道芸人が静かに笑う。
大道芸人が机と椅子を用意する。
机の上には複数のコーンと1個だけハートのネックレスがあった。
大道芸人「このハートのネックレスを隠してシャッフルするので、当ててください。」
大道芸人が目にも留まらぬ速さでシャッフルする。
大道芸人「選んでください」
大道芸人は気持ち悪い笑みを浮かべた。
剛とミナは、早く終わらせたいため、適当に選んだ。
そこからでてきたのは、複数の髑髏で形付けられたハートのネックレスだった。
大道芸人「これをどうぞ」
にっこり笑う大道芸人
ミナ&剛「いるかー!!!なんだよ、その呪いのアイテム、初デートの高校生カップルにプレゼントする品じゃねーよ!!」
大道芸人「他にもありますよ。」
カップを開けると全て髑髏のネックレスだった。
ミナ&剛「だから!!いるかよ!!昼近い、爽やかな公園でどんな芸見せてんの?!」
大道芸人「良いものなんですよ。ペアでつけると男側が死ぬという……」
剛「不吉過ぎるんですぎるんですけど!!なんか俺に恨みでもあるんですか?」
大道芸人「あるに決まってるだろ!!お前を見てるとな……自分が嫁として愛していたギャルゲーのヒロインが寝取られ同人誌でチャラ男君に寝取られた気分になるだよ!!」
剛「そんなん知らねーよ!!」
剛は、全力で大道芸人に前蹴りをお見舞いする。
大道芸人「ぐはっ……なんで俺には彼女が、できねんだよ…… なんでチャラ男君みたいな……お前みたいな奴にそんな可愛い女子が、糞が〜〜……!!」
ミナは少し頬を赤らめ照れていた。
ミナ(んっ……)
剛「そんなギャルゲーばっかやってたらそりゃモテねーよ。筋トレしたり、髪型変えたり、今からでも遅くね〜よ……おっさん。」
神妙な顔で剛が大道芸人を諭す。
剛「だが、この女は俺のものだ!!お前らホームレスどもは一生右手とお付き合いしてな!!」
剛が下卑た笑みを浮かべる。
ミナが剛に平手打ちをかます。
剛「痛てー!なっ……何を……」
頬を抑える剛
ミナ「死ね…」
ミナが無表情でつぶやく
大道芸人「あの糞餓鬼殺す!!お前ら!!あいつらを捕まえろ!!」
ホームレス達が剛達に標的を定める。
ホームレス達「殺せー!!!何が青春だーー!!!」
鬼気迫るホームレス達
剛「逃げるよ!!ミナちゃん!!」
ミナ「あっ…… うん!!」
二人で追っ手をかわし、逃げ切る二人
ミナ(……これが初デートか……なんとも言えないな……)
剛「あっ……次本来予定してた。ゲーセンでも、行こうか」
そして二人はゲーセンへ向かっていった。




