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お泊り合コンへの誘い

こんな人にオススメ


合コンに興味のある方。

ミステリーが好きな方。

お笑いの好きな方。


*この小説はカクヨムでも掲載しています。

 俺はギルドの前で号泣していた。


「何で、俺みたいに誠実で優しい男が美女にモテないんだ。世の中おかしいぞ。理不尽過ぎる。間違ってるぞぉ。うわあああああ」


 ギルドの前の大通りは、朝から人の往来が盛んで、みな忙しそうに足早に歩いている。そんな大通りの真ん中で、俺は声を上げて泣いている。


 人々は足を止め、何事かと俺の方を見てくる。みんな俺を変人を見るような目をして、嘲笑している。


 人からどんな目で見られようと構わない。俺がモテない世の中が悪いんだ。ここでずっと叫び続けて、世に訴えてやる。俺はそう思い、また激しく泣き出し、叫び続ける。


「サークさん、止めてくださいよ。みっともないですよ。他の人達の迷惑になりますし、とりあえず場所を移動しましょうよ」


 うつ伏せに泣き崩れている俺の肩を叩いて、話し掛けて来る男がいる。俺が合コンの技術を教え込んでいる愛弟子、クルスだ。


 クルスはオカッパ頭をしていて、メガネを掛けている。クルスはルックスも良くないし、コミュニケーション能力が高い人間ではない。だから正直、合コンではモテない。


 そこを、この俺が救済の気持ちで、合コンでモテる男に鍛えている訳だ。


 まぁ、この俺も百回以上の合コンに参加し、一度たりとも、女の子と付き合えた事はない。ましてや、仲良くなれた女の子もゼロなんだが、なぜか弟子がいるのだ。


 いや、だからだ。だからなのだ。だから、俺はここで泣いているのだ。ギルド主催の合コンに、俺は一度たりとも勝利をしていないのだ。


 結果が出ていないのは、俺の力不足だからではない。主催者のギルドに落ち度があるからだ。つまり、俺がモテないのは、ギルドのせいなのだ。


 ま、そうでも思わないと、俺のメンタルは崩壊してしまう。だから、俺はギルドの前で泣き叫んでいるのだ。決して、これは無意味な行動ではないのだ。


 俺の周りに、人がドンドン集まって来る。いつの間にかスゴい数の人達に注目されている。


 見せ物なんかじゃねぇぞ。合コンだ。女の子を、美女を連れて来い。俺の心の声がそう叫ぶ。


 クルスは俺を抱えながら、オロオロとしている。しかし、俺はここを動く気はない。俺の求める合コンを持って来るまで動かぬ。俺は心の中で固く決意する。


 すると、ギルドの入り口から白髪でヒゲの中年男性が現れる。このギルドで一番偉い人間、ギルド長だ。


 ギルド長は周りの人だかりを見て、慌てて俺の元へとやって来る。


「お願いです、サークさん。止めて頂けませんか? 他の冒険者達の迷惑になりますので」


「嫌だ。俺がモテる合コンを持って来るまで、ここを離れない」


「いや、そんな無理な注文を……。困りましたね」


 ギルド長は頭を抱えている。クルスも唖然としている。だが、俺も引けぬ。男には引けない勝負と言う物がある。今がまさにそれだ。


 突然、ギルド長が何かひらめいたような顔になり、俺に笑顔を向ける。


「サークさん、ありましたよ。いい合コンが。二泊三日のお泊り合コンなんてどうですか? 合コン場所は、周りを海に囲まれた無人島です。男女四名ずつの参加です。いかがでしょうか?」


 お泊り合コン……。二泊三日、無人島でだと……。


 頭の中を、この言葉達が駆け巡る。俺の身体が無意識の内に震えている。間違いない、俺は今、興奮しているのだ。


「無人島の名は、エロコンパ島。かつて色んな男女が結ばれて来た、由緒正しき恋愛の聖地です」


 ギルド長のその言葉で、俺の全ての思考が吹っ飛ぶ。


「参加する。絶対に参加する。その合コンに参加させてくれ。頼むぅ」


 俺は反射的に応える。何も考える余地などない。即答だ。


「分かりました。予定の方を組んでおきます。相方さんは、どうしましょうか?」


「もちろん、クルスも参加だ」


 ここでも、俺はギルド長に即答だ。クルスを面子に入れておけば、恋のライバルは一人減る事になる。つまり、美女をゲットする確率が上がるのだ。


 しかし、クルスは動揺して、返事に困っているように見える。

 

 まさか、こんな好条件のコンパを断るつもりなのか?

 

 俺はギロッとクルスを睨み付ける。すると、クルスは意を決して、重い口を開き始める。


「お泊り合コンだなんて、そんなレベルの高い所へは……。自信がないので、お断りしま……」


「いや、ダメだ。これは、修業だ。師匠命令だ。拒否する事は許されない。参加だ」


 クルスの言葉をかき消すように、俺は言葉を重ねる。すると、クルスは諦めたかのように、うつむく。俺が引かない男だと理解しているのだ。


「……分かりました。参加でお願いします」


 クルスのその言葉で、俺達二人のお泊り合コンへの参加が決定する。


「それでは、日時は後日、連絡致します。では……」


 ギルド長はそう言うと、足早にギルドの中へと入って行く。厄介者を追い払ったかのような、安心した顔になっている。


 俺は口元を手で抑え、溢れ出して来る笑みを噛み殺す。


 泊まりでコンパ、しかも無人島だぞ。美女との熱い夜しかないだろ。


 再び興奮して来て、俺は身体中の震えを抑える事が出来なかった。


 こうして、俺達は波乱のお泊りコンパの当日を迎える事となる――――。



 





 


 

読んで頂き、ありがとうございました。

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