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自由の軌跡  作者: tsutsu
3/45

2.

私達は自室へと戻り、2人用に並べられたベットの中で休んでいた。

「今日は痛いのなくてよかったね。」

リンシィはそう言って安心した表情を向けてくる。

「そうだね……。」

私はそう返事をするので精一杯だった。

 

あの記憶が頭から離れない。夢だと信じたい。根拠はないがあれは現実で、これから起きることなのだという確信がある。

――絶望――あの記憶の事で頭がいっぱいで不安になる。

 

「どうしたの?もしかして、レイの方は痛い事したの?」

リンシィはレイシアの愛称で呼び、心配してくれる。

「そんな事ないよ。大丈夫。けど、なんか疲れちゃった……。」

そう言って誤魔化し、今日は早く休もうとリンシィにおやすみ、と声をかけた。


ベットの布団を頭から被り、あの記憶について考える。

(これから私に……いや、私たちに起こること。)


 

 

――――悪化する人体実験。

「――イタイッ――イャッ……アァァ」

 バチバチッーっという音や、得体の知れない気持ち悪い物体の目の前に立たされる光景。

「だズ…ヶ、てェ……」

苦しむリンを必死で抱き締めているような視界。


 

――――母に裏切られる未来。

「あんた達なんか、産まなければよかったっ‼︎‼︎」

「バケモノ‼︎」

ヒステリックに叫ぶ実の母。

「どうせ殺されるなら、あんた達も一緒よ……」

そう言ってナイフを持って近づいてくる母。



――――今はまだ知らない大切であろう人の死。

「……レイ……リン……ごめんね……。」

口から血を流しながらこちらを見つめる少女。

「――お願、い……。ゴろ、じテ………」

そう目の前で懇願する少女と

「いや、やめて」

と泣きじゃくるリン。


  

――――無様に泣く事しか出来ない自分。

「……リンッ…。リンッ……。」

ボロボロなリンを抱きしめる自分が窓ガラスに写っている。

「リンにはっ、させないって言ったじゃないっ!!約束が違うじゃない!!」

何度か会ったディルツトップの男に私が怒鳴り、冷たく見下ろされている光景。


 

――――絶望に追いやられていたリンシィ。

血まみれになったリンの姿。

言葉もなく、絶望した目。光をなくした目をしたリンが目の前にいる光景。



(……どうにかして防がなきゃ。)

人体実験が悪化するのはもうすぐだろう。これを防ぐのは無理だ。ディルツから脱走でも出来たらいいんだろうが、現実的じゃない。

今の私たちには逃げる力も、逃げてから生きていける力も保証もないのだ……。

 

でも、母に裏切られるのも、絶望して泣いていた時の姿も、目の前のリンは少しずつ成長していた。おそらく何年かは時間がある筈。


唯一頼れるはずの大人は、母は私たちを裏切るのだ。もう誰も信用出来ない。してはいけない。

リンだけは、絶対に守ってみせる。何があっても。

私はそう固く決意した。


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