1.兆し
レイシア・トゥヴァイ6歳。
「国の為。」、と言われた魔力強化実験………いわゆる人体実験を受ける被験体の1人だ。つまり、私は研究対象。
いつものように大きな機械から伸びた無数の管を身体中に付けられ、子ども1人分の大きさの箱の中に入れられる。
真っ暗になり、しばらくすると頭がクラクラして、閉じていた瞼をゆっくり開けた。暗闇の中では目を閉じていた時と変わらない。
バチバチッーー
急に身体に電撃が走ったような感覚に陥いる。頭が真っ白になる。
(――頭に何かが流れ込んでくる……これは……?)
断片的なそれは、自分の記憶なのだと直感する。根拠はない。だが確信している。
……何かがおかしい。そう感じながら頭の中に流れ込んでくる記憶。
何とも言えない気持ち悪さに襲われるがどうすることも出来ず、ただただ耐えるしかなかった。
(――――――!!!)
ふと、この流れ込んでくるものが、私の未来なのだと理解する。そう理解すると同時に、絶望する。この未来は……。
気持ち悪さが増し、頭痛までしてきた。
(誰か!助けて!)
叫んだつもりが声にならない。真っ暗な中で絶望的な未来を見せつけられながら、いつの間にか私は気絶していた。
ピカっといきなり視界が明るくなった。
「眩しい……。」
そう呟くと目の前に自分とそっくりな顔が覗いていた。
「どーしたの?!泣いてる!!大丈夫?」
双子の妹、リンシィ・トゥヴァイ。双子なだけあって瓜二つだ。愛称はリン。リンが心配して声をかけてくれたことで、自分が涙を流していたことに気が付いた。
「ほんとだ。泣いてる……。」
大丈夫。となんでもないように続けて伝えると
「良かった〜。」
とリンシィは安心してくれた。
(さっきのは何だったの……?)
レイシアはやけにリアルだったさっきの記憶を夢だと自分に言い聞かせた。
あれは人体実験によって意図的に見せられたモノなのだろうか?しかし、同じ事をしているはずのリンは特にいつもと変わった様子はない。
ぼーっと考えていると機械に繋がれていた無数の管が研究員によって身体から外される。
「今日はこれで終わりだ。」
私たち2人に声をかけてくる白衣を着た男に
「はい!」
と元気よく返事をしてリンシィと仲良く手を繋いで部屋を出て行った。