【書籍化andコミカライズ】学年一の金髪碧眼美少女に勉強を教しえることをきっかけに距離が縮まる恋愛
俺---二宮大悟のクラスには、学年一美少女と呼ばれている子---東雲セナがいる。イギリスと日本のハーフであり、髪は金色で目は青みを帯びている碧眼。
見た目通り、男子は東雲へ釘付けになっている。だが、こうも呼ばれている。
【鉄壁の美少女】
噂では男子からの誘いをすべて断っているとのこと。
そして、今日の授業が終わった時も、クラスメイトの男子が話しかけていた。
「東雲さん、よかったら放課後に遊ばない?」
「ごめんなさい」
頭を下げて断る東雲。
(美人も美人で大変だよな)
そう思いながら、俺は図書室へ行って勉強をし始める。すると、十分もしないうちに東雲が図書室の中へ入ってきた。
俺と目線が合うと、パッとした表情になる。
「遅れてごめん」
「大丈夫」
クラスでは見せない表情をしてきたため、毎度のごとく少しだけドキッとしてしまう。
「じゃあ、今日もお願いします」
「うん」
隣に座った東雲に対して、勉強を教え始めた。
放課後、俺は図書館でクラスメイトに勉強を教えていた。
なぜ俺が東雲に勉強を教えているのか。それは、至極単純な理由。俺が学年でトップクラスの学力を持っているというだけ。
すると、真面目な表情をしながら尋ねてくる。
「二宮くん、ここってどうやったら解けるの?」
「そこは~」
キョトンとした表情で俺の方を見つめてくる。
「ありがと‼」
「うん。それよりも中間テストでは大丈夫そう?」
今勉強をしているのは、ゴールデンウイーク明けから始まる中間テストで高得点を取るため。はっきり言って、東雲は勉強ができる方ではない。
だけど、半月だけとはいえ、教えてきた身としては、できるだけ高い点数を取ってもらいたい。
そう思っていると、東雲は少し不安そうな表情をした。
「多分?」
(なぜ疑問形?)
首を傾げながら東雲のことを見ると、顔を少し赤くしながら恥ずかしそうに答える。
「だって、だって」
「?」
「小テストの点数は上がっているけど、今回はそうじゃないから……」
そうだよな。結局小テストは現状を確かめるものであって、中間テストみたいに重要なテストとは違う。正真正銘、成績に関わってくる中間テストは重圧が違う。
「自身を持ってよ」
「え⁉」
「東雲さんは頑張ったよ。それは俺が保証する」
この半月、東雲は誰よりも勉強と向き合ってきたのを知っている。最初こそ何を教えても身に付かない東雲に嫌気をさしていた。
だけど、徐々に吸収していく姿を見ていくごとに教えている俺も楽しくなったし、結果を出してほしいと思った。
すると、東雲は照れていると分かるほど顔を真っ赤にしながら言った。
「あ、ありがと……」
「あはは。じゃあ勉強を再開しようか」
「うん」
東雲の目の前に開かれている数学の教科書に目を移す。今回のテストで一番の鬼門は数学だと思っている。単純に公式を覚えれば最低限の点数を取れるのは分かっている。だけど、それだと今後のためにはならない。
数学を解くのに対し、一番重要なのは時間との勝負だと思う。暗記科目とは違い、数学には計算が必要である。だけど、ただ計算をすればよいというわけではない。
全ての問題に対し、計算をして答えを導き出すのは当たり前。その後、どれぐらい時間を使って再計算することが出来るかが重要だ。誰しもケアレスミスはするし、それが悪いわけではない。その後にどのような行動をとるのかが大切である。
問題を一回解いて終わり。そんなの、答えられたとは言えない。問題を解いた後、確かめてやっと解き終えたと言える。人間というもの、一度ゴールが見えたら、それで終わらせてしまう性質がある。だけど、その行動はよろしくない。
そんなことをしていたら、今後の人生でゴールが見えなかった時は諦めてしまう。もしゴールし終えたとしても、考えるという行動を辞めてしまう。日々、自身が導き出した行動に対して疑問に思うことが大切だ。
すると、洋服を引っ張られた。
「二宮くん、どうしたの?」
「え?」
「なんか、怖い顔をしていたから」
(俺、そんなに怖い顔をしていたか?)
東雲の言葉に驚きを隠し切れなかった。
「あ~、何でもないよ」
「本当に?」
「本当だよ」
「ならよかった」
そう言いながら、なぜか安心した表情をしていた。
(なんでそんな表情をしているんだ?)
俺は首を傾げながら東雲のことを見ると、クスっと笑いながら言った。
「二宮くんも緊張とかするんだって思って」
「緊張……。そうだね」
自分のことで緊張しているわけではないけど、緊張はしている。
(俺って、思っている以上に東雲のことを考えていたんだ……)
「二宮くんなら大丈夫だよ‼」
満面の笑みで、こちらを見ながら俺の手を握っていた。
「ありがと」
なぜだか分からないけど、胸が熱くなる。
その後も、二人で勉強をしていくと、あっという間に日が暮れてきて、ふと俺は東雲の方を向いた。
(あ~)
なぜみんなが東雲のことを可愛いと言っているのか少しだけわかった。夕焼けに当たりながら勉強をしている東雲は、誰よりも輝いていた。
すると、俺の視線に気づいた東雲は、外を見ながら言った。
「休みに入るまで一週間ぐらいしかないけど、頑張ろう」
「うん‼」
帰り道、二人で歩いていると、いろんな人から視線を向けられる。
(やっぱり、東雲は目立つなぁ)
俺一人なら、ここまで視線を集めることはない。如何に東雲が美人なのかがわかる。
「ご、ごめんね」
なぜか、暗い表情をしながら頭を下げてきていた。
「え、なんで?」
「だって、私の所為でいろんな人から見られているから」
(気にしていたんだ……)
少しだけ、東雲に対して同情をしてしまった。東雲だって視線を集めたいわけではないに決まっている。容姿などがいいからと言って、いいことだけとは限らない。
日々、知らない人たちに監視されている気分なのかもしれない。その中でも、男子から色目で見られたりするのが一番キツイと思った。
「そんなの気にしなくていいよ」
視線を気にするぐらいなら、一緒に東雲とはいない。
「友達と一緒に下校することぐらい当たり前でしょ。それぐらいで謝らないで」
「あ、ありがとぅ」
その後、二人で軽い雑談をして一日が終わった。
翌日、いつも通り学校へ通うと、東雲の周りには男子や女子がたむろっていた。分け隔てなく話してはいるが、若干だが男子と距離を置いているように見えた。
(まあ、下心をもって来られたらそうかもしれないな)
今東雲と話している男子たちの中には、胸に視線が行っている奴も少なからずいる。そんな奴に警戒心を持つのは当たり前。
「東雲さん、今日って空いていたりする?」
「ごめんなさい」
「じゃあさ、いつなら空いている?」
「え……」
問いかけてきた男子に対して、呆然としてしまった東雲。それを助けに入るように女子が言った。
「ちょっと、セナちゃんがひいちゃっているでしょ。断られたなら諦めなさいよ‼」
「そうよ‼」
その言葉に男子たちは落ち込み、東雲はホッとしていた。その後、教室に担任が入ってきて一日が始まった。
お昼になり、一人で昼食を取ろうとした時、東雲が一人で荷物を運んでいるのを見かけたため、手を貸す。
「手伝うよ」
「あ、ありがとう。二宮くん……」
東雲が持っている荷物を半分持って同じ方向へ歩き始める。すると、俺の方を向きながら尋ねてくる。
「お、お昼は大丈夫なの?」
「それは東雲も一緒でしょ? 二人でやった方が早いよ」
別に十分ぐらい無くなったところでお昼が食べられなくなるわけではない。
「なんか、最初に話した時を思い出すね」
「そうだね」
東雲と話し始めたのは、図書室へ荷物を運んでいる東雲の手伝いをしたのがきっかけだ。
「なんでいつも助けてくれるの?」
「いつもじゃないよ? 見つけた時は助けているだけ」
東雲のことをいつも見ているわけではない。逆に毎日東雲のことを見ていたら、それこそ気持ち悪い。
「そ、それはそうだけど……」
「ま、まあ困っている人がいたら助けるのは当たり前だと思うよ」
俺の癖でもあるけど、誰かが困っていたら助けてしまう。それが今回であって、前もそうだっただけ。
「そう。でもありがと」
「いいえ」
その後、軽く雑談をしながら職員室まで荷物を運び終えて、一人になれるところへ移動しようとした時、裾を引っ張られる。
「きょ、今日も図書室で勉強するよね?」
「うん」
「じゃあ、ほ、放課後ね?」
「あぁ」
東雲が軽く手を振ってきたのに対して、お辞儀をしてこの場を後にした。
放課後、いつも通り二人で勉強をしていると、図書委員の先輩が話しかけてくる。
「二人とも、いつも勉強熱心ね」
「はい」
「どこかで勉強とかしようとは思わないの?」
「まあ、そうですね」
図書室の中でも、一番端にあるこの席は誰にもバレないと思える場所。はっきり言って、絶好の場所はここしかない。
「それで、二人は付き合っているの?」
「「⁉」」
お互いが目を合わせながら困惑をする。
(そんな風に見えていたのか……)
「付き合っていませんよ。ね?」
「はい。二宮くんとは付き合っていません」
「あ、そうなのね。ごめんなさい」
「気にしないでください」
「まあ、ゆっくり勉強していってね」
そう言って図書委員の先輩はこの場を後にした。 すると、東雲が言う。
「私たち、そんな風に見えていたんだね」
「そうだね」
まあ、俺が言うのもなんだけど、男女二人で毎日のように勉強していたらそう思われてしまうのも仕方がないのかもしれない。
「東雲さん、一つ聞いていい?」
「なに?」
「俺以外に勉強を教えてくれる人はいなかったの? それこそ、クラスの女子とかさ」
今話しかけてくれた先輩みたいに、今後も勘違いされてしまう恐れがあるのは事実だと思う。なら、クラスメイトの女子に勉強を教えてもらう方がいいとも思った。
「二宮くんは私に勉強を教えるのが嫌?」
「そうは思っていないよ」
「ならこれからもお願い」
東雲はうつむきながらそういった。
「まあ、いいけどなんで?」
「最初にお願いした時にこう言われていたら探していたと思うけど、今は二宮くんに教わるのが一番わかりやすいと思っているから」
「そっか。分かった」
その後、二人で軽く勉強をして図書室を後にした。帰り道を歩いていると、クレープ屋さんを見つける。
「おいしそうだね」
「あ~うん」
はっきり言って、クレープが好きっていうわけではない。まず、フルーツが苦手な俺にとって、クレープは口に合わない。
「今度さ、一緒にあそこへ行かない?」
「機会があればな」
「ぜ、絶対だよ」
「う、うん」
(そ、そんなに食べたいのか)
女の子は甘いものが好きってよく聞くし、東雲もそうなのかもしれない。
(だけど、別に俺じゃなくてもよくないか?)
そう思いながら、二人で歩いて行く。
帰り道が分かれるところまで雑談をしていると、あっという間についてしまう。すると、東雲が手を振って来る。
「ば、バイバイ」
「うん。また明日」
そして、俺たちはこの場で別れて家へと帰って行った。そこから三日後、数学の授業中、突発的に小テストを行った。
内容としては基礎を確認するもので、毎日勉強している俺からしたら、特に苦ではなかった。案の定、先生が採点をして返されると、満点と記載されていた。
その時、東雲のあたりがうるさくなる。
「セナちゃん、満点なんてすごい‼」
「東雲さんすご‼」
(苦手科目で満点を取れたんだな)
実際に見たわけではないが、苦手科目で高得点を取った東雲に対してうれしさを感じた。すると、一人の男子が言う。
「俺なんて半分も行かなかったよ。もしよかったら勉強教えてくれない?」
「ごめんなさい。私も手一杯なので」
「そ、そうだよね」
その後もクラスでうるさい状態が続くと、教師が両手を叩いた。
「それでは授業を再開しますよ」
そう言って、授業が再開した。放課後になり、いつも通り勉強をしていると、東雲がカバンから一枚の紙を取り出して言ってくる。
「ねぇ、今日の小テストで満点取ったよ」
「おめでとう。そういえばクラスの男子から勉強を教えてほしいって言われていたね」
「う、うん」
「断る時、ちょっと冷たくなかったか?」
実際、いつも俺と話しているより冷たく感じた。それに勉強を教わるのもいいことだけど、教えるのもいい勉強になるから、受けても良かったのかなとも思った。
「別に冷たくないもん」
「そ、そう? 俺と話している時と比べたらなんか……」
俺がそういうと、東雲は顔を赤くしながら聞こえないぐらい小さな声で言った。
「それは二宮くんだから……」
「え、なんていった?」
「何でもない‼」
「そ、そう?」
「それよりも、今回満点を取ったからご褒美をもらってもいいのかなって思って」
「え?」
(ご褒美?)
「私もこの半月間で結構頑張ったから、何かご褒美が欲しいな?」
「あ~……」
はっきり言って、ご褒美と言われても、何も思い浮かばない。
「じゃあ、クレープでも食べに行く?」
「うん‼」
東雲は満面の笑みで頷いて、こちらを見てくる。
(そんなにクレープを食べたかったんだな)
そう思いながら、お互い勉強道具をバックの中に入れて図書室を後にした。雑談をしながら歩いていると、あっという間にクレープ屋さんにたどり着き、メニューを見る。
(何がいいんだろう?)
隣に立っている東雲のことを見ると、何にするか迷っていた。
「何と迷っているの?」
「チョコバナナクレープとマシュマロホイップ」
(その二つなら、俺も食べられるか)
「じゃあ、俺がチョコバナナクレープを頼むから東雲さんは、マシュマロホイップを頼めば?」
「え、いいの?」
「うん。俺もチョコバナナクレープは食べたかったし」
「じゃあ、そうしようかな」
そして、俺たちはクレープを頼んで、近くの公園で食べ始める。
「はい」
俺は東雲にクレープを差し出すと、首を傾げた。
「最初に俺が口を付けたら嫌だろ? だから、一口先にどうぞ」
「あ、ありがと」
東雲は俺が差し出しているクレープを一口食べる。すると、今まで見たことの無いような表情をし
て、ドキッとしてしまう。
「おいしぃ」
「そう」
俺も一口食べる。
(甘い……)
おいしいけど、甘すぎて飽きてしまいそうとも感じた。黙々と食べていると、東雲が俺に差し出してくる。
「二宮くんもどうぞ?」
「い、いいよ」
「こっちも食べた方がいいよ。おいしいよ?」
「あ~、うん」
クレープ一口食べるが、何も味がしなかった。
「どう?」
「おいしいよ」
「だよね‼ これからも来ようね」
「あ、うん」
こんな表情をされたら断ることなんてできないよ。その後も、満面の笑みを浮かべながらクレープを食べている東雲と、雑談をする。
(こんな表情もできるんだな)
今までで一番楽しそうな表情をしていて、少しだけクラスメイト達が東雲に話しかけていることも納得できた。クレープを食べ終えた俺たちは、歩き出す。
「中間試験頑張ろうな」
「うん。もし今回いい点数が取れても教えてくれるよね?」
「あ、あぁ」
「ぜ、絶対だよ? 絶対に教えてよね?」
「分かっている」
ここまで押しの強い東雲に圧倒されてしまったが、嫌な気だけはしなかった。そして、お互い、手を振って家へと帰って行った。
ここから数カ月後、お互いが距離を近づけ初めて行くのは言うまでもなかった。
面白いと思っていただけましたら、広告の下にある【☆☆☆☆☆→★★★★★】にして、作品の応援をしていただけると幸いです。