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第34話 どうしようもないこと

更新大変遅くなって申し訳ありませんでした……!

あと3~4話くらいで完結予定です。

最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。


日が空いてしまったので、ここまでの簡単なあらすじを書いておきます。

あらすじは不要という方は本文へどうぞ。


【あらすじ】

大好きな小説の悪役令嬢・ジェナに転生し、小説の筋書き通りに悪女を演じ切って処刑され、今度は全く知らない世界の聖女に転生した主人公・アイヴィ。

ジェナの処刑がトラウマになったアイヴィは今世で処刑されないよう行動しようと決めるが、

ジェナを長年演じた弊害で悪態をついてしまう性格が抜けないことに悩まされていた。


何とか処刑を回避しつつも、ある日アイヴィは自分が『不完全な聖女』という死に向かうだけの運命だと知る。

悩んだ末にアイヴィは自分に課せられた運命を受け入れる。


婚約者である王太子・ライナスとは当初険悪だったものの、次第にアイヴィへの誤解も解けていき徐々に仲を深めていく二人だったが、様々な危機が訪れ、アイヴィの命のタイムリミットが迫っていく。


そしてついに第二の聖女を名乗る人物・エルシーが現れ、アイヴィは意識を失う。

ライナスは第二の聖女によりアイヴィの運命を知り、アイヴィが苦しんでいることに気付かなかった自身の不甲斐なさに打ちひしがれるのだった……。


 ついに、本当の終わりを迎える時間が来たのね。


 次に目が覚めたらエルシーがいて、あのメッセージの聖女が言われたように、『もうあなたの役目は終わりましたよ。今まで辛かったでしょう、ゆっくり休んで下さいね』なんて言われるのかしら。


 そして私は次世代の不完全な聖女へと隠しメッセージを遺して……不幸の連鎖が続いていくの?


 もしそうなら出来れば私の代で断ち切りたいのだけど、生憎出来そうにはないから。

 次の不運な聖女さん、顔もまだ見ぬあなたに託すわ。


 ……ライナスにも、きっとこれで私の秘密を知られてしまったわね。

 私の目の覚めない内に諸々説明しているはずだわ。

 それは仕方ないけれど、隠しメッセージの聖女のように偽物の聖女だと糾弾されるのだけは勘弁して欲しいところね。


 ライナスは……なぜ隠していたと怒るかしら。

 それとも私が不完全な聖女だったことに失望するかしら。


 せっかく私のことが好きだと……夢にも思わなかった言葉を貰えたのにね。


 つくづくあなたって残酷な人だわ、神様。


 死に行く運命を私に与えただけでも無慈悲だと思うのに、死に際にこんなにも死にたくないと思う気持ちを持たせるなんてね。

 あなたが私を嫌いだということはよくわかったわ。


 ……目が覚めたら、私はどうしたらいいのかしら。


 私を好きだと言ってくれてありがとう、嬉しかったわ。それだけ伝えて綺麗にお別れするべき?

 私も好きよライナス、死にたくないとみっともなく縋り付く? ……いえ、それだけはないわね。


 私もライナスも未練や後悔もなく、円満にさよならをする方法なんて果たして存在するのかしら。


 ……ライナスに会いたくて戻って来たけれど、間違いだったかもしれない。

 大人しく陰から一目だけ彼の姿を見て、どこかで死を待てば良かったかもしれない。それが一番後腐れがなかったはずと、今更後悔しても遅い。


「────」


 思考の海から現実の海面へと浮上する。

 自然と開いた瞳に映るは、後悔と懺悔に塗れたような酷い顔色をして私を見るライナスの姿だった。


 ……ああ、こんな顔をさせたくなんてなかったわ。


 身体は予想通り動かなかったので、仰向けのまま口を開いた。


「……聞いたのね。私のこと」


 あの第二の聖女がバラしたのか、それとも単純に私の身体がおかしいことを気付かれたのかわからないけれど、どちらにせよ私の秘密はライナスに晒されてしまったのだと悟る。


 ライナスは迷いながら私の手に触れた。

 私の手が細すぎるからか、ライナスは壊れ物を扱うように、本当に優しく触れた。


「どうして言わなかった。聖女の力が君の命を削ること」


「言ったってどうにもならないでしょ。あなた何て顔してるのよ。王太子の名が泣くわよ」


「どうにかした! 君が言ってくれたら、聖女を辞めさせることだって……」


 聖女を辞める選択肢は私にはなかったのよ、ライナス。

 ハワーベスタで聖女として生きると決めたあの日から、私は運命を受け入れたの。


 ……それに、やっぱりライナスに相談したところで、どうにかなる話じゃなかったと思う。

 この国は聖女の存在を神に近いレベルで崇めているし、聖女を辞めるなんてどう頑張っても認められなかったでしょうね。


 きっとライナスも、そのことはわかっているはず。

 それでも私を助けたかったというライナスの気持ちが痛いほど伝わって来て、胸が締め付けられる。


「何言ってるのよ。私一人の犠牲と大勢の民の命を天秤にかけたら、民を選ぶのが当然でしょ。王太子であるあなたなら、迷う選択じゃないはずよ」


「当然なわけないだろう……! 命を数で測るな。そんな単純な話じゃない」


 それでもきっと、もし私と大勢の民のどちらを救うか選べと迫られたら、あなたは王太子として正しい選択をするはず。グラーレウスでそうしたように。


 ……それでいいのよ。少しでも迷いを持ってくれただけで、私は十分なの。


「見たでしょ? 第二の聖女。彼女こそが本物の聖女よ。……エルシー、だったかしら。その人と一緒にあなたはハイルドレッドの未来を担って行くのよ。あなたの本当の婚約者は、彼女なのだから」


「何をバカなこと……!」


「現実を見て。私はもう永くないの。どうしようもないのよ。私にはあなたとの未来は存在しないの」


「悲観するな。君が助かる方法を探してみせる。どんな手を使っても、必ず」


 諦めの境地にいる私とは対照的に、ライナスは希望を捨てていない。

 私を元気付ける為に言ってくれただけだとしても嬉しくて、弱々しく微笑んだ。


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