メイド長と御曹司
こちらは連載版です。1~4話までは短編版と同様の内容となっております。
注)リアル優先のため、投稿頻度は遅くなってしまいます(週一投稿は最低限目指す予定)。予めご了承ください。気が向いた時に足を運んでくださる程度の軽い気持ちで読んでいただけたら幸いです。
日本有数の大手財閥である獅童財閥の御曹司、獅童司は超が付くほどの有名人だ。
良家の優秀な子息が集まる春聖館学院では生徒会長として教師含め全ての学院関係者を統括し、庭球では個人全国優勝、全国模試では常に一位に君臨する。
欲しいものは全て手に入れる、それが無敗の帝王と称される男の生き方であり、皆は彼を崇め奉るのだ。
そんな彼が今、一世一代の大勝負に出ようとしていた。
屋敷に住み込みで働くメイドの一人、久遠澄花への告白である。
十八歳にして獅童家のメイド長を務め、自分にも他人にも厳しい性格を有している久遠澄花。
生まれ持った類稀なる美貌、長くきめ細やかな銀髪、キリっとした瞳。
仕事中に見せるメイド長としての真剣な表情に心が惹かれて、いつしか彼は久遠澄花に恋心を抱くようになったのだろう。
「す、澄花!」
就寝前の午後十時、自身の部屋で就寝の準備をしていた彼が唐突に声をかけた。この名前で呼んでくれるのは彼しかいない。
「はい、何でしょうか」
メイド長はそう答えると、掃除の手を止めて振り返る。
でもすぐに返事は返って来ず、彼はその場でもじもじとしていた。
「用が無いなら私は業務に戻りますが」
「…………ごめんちょっとだけでいいからさ、少し大事な話があって……その、い、いいかな?」
「では要件を先に申してください。この後にまだ仕事が控えていますので」
「い、いや、それはできないくて……」
それでもまだもじもじしている彼。
メイド長はため息をつくと、足早に駆け寄り嫌みを溢す。
「司様、私は今忙しいんですよ。全部屋の掃除に夕食の片づけに就寝前の新人への教育指導まで……これらを一挙にしなければならないのです。それは司様もご存じのはずでは?」
「それは……そうなんですけど」
「なら、これ以上私の手を煩わせないでくださいよ。獅童家の御曹司ともあろう方がこのようにウジウジしていては世間に顔向けできませんね」
メイド長がそう言うと、彼は一度俯き、そして意を決したように顔を上げる。
「そこまで言うならちゃんと伝えるよ……! お、俺は、澄花のことが―――」
そして目と鼻の先にいるメイド長の肩に手を置き、真っ直ぐな目で自身の想いを伝えた。
「す、好きなんだ―――!」
「は?」
一瞬の驚き、対して冷たい視線。
メイド長は冷徹に目を細めながらそう吐いた。
「貴方のような御曹司が私と釣り合うとでも? ふん、ご冗談を……」
「そ、そんな……俺はあの時から本気で澄花のことが」
「これ以上は仕事の邪魔です。司様、もう夜も更けてきましたのでお休みになられてはいかがですか? 頭を冷やせば今の発言がどんなに愚かだったか身に沁みましょう」
その言葉を最後にメイド長は立ち去る。
手を伸ばし、久遠澄花の名を呼ぶ彼を置き去りにして。
こうして、彼の淡く尊い初恋は一人の心無い冷徹な女によってズタズタに引き裂かれました。
一途で純粋な気持ちがもう二度と久遠澄花へ向けられることはなくなったのです。
―――そうだ、そのはずだったんだ。
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