準備
あれから一週間が経ち、ついにお披露目会の日が来てしまった。この一週間、屋敷の中はパーティの準備で慌ただしい様子だった。
ボクは特に出来ることも無かったため、いつも通りに部屋で過ごしていた。すると、突然扉がノックされ、少し驚いてしまった。
「どうぞ」
入ってきたのは父さんだった。父さんは手に大きな箱を持っていて、それを見て、なんとなく父さんがここに来た理由が分かった。
「ミリア、お前のドレスが出来たぞ、早速試着してみよう」
ついにこの時が来たか…。
そう、ボクのメンタルが破壊される時がきたのだ。
「別にいまじゃなくても、あとでじゃ駄目?」
無駄なのは分かっていたが、少しでも着ている時間を短くしたかったため、どうにかして着替えずに済まないかと抵抗してみた。
「パパが今すぐ見たいからだめだ」
駄目か…。
やはり、予想通りに拒否されたので、これ以上は無理だと思い仕方なくドレスを着ることにした。
箱を開けてみると、中には水色のドレスが入っていた。
「おぉ!ミリアに似合いそうなドレスだな」
ドレスには様々な装飾がされていて、ボクはこういう装飾の名前とかファッションはまったく分からないが、可愛い感じのドレスということは分かった。
これを着るのか……、これを着てしまったら男としての尊厳を失う気がするんだけど……。
「じゃあ俺は外で待ってるから、着替えたら呼んでくれ」
父さんは(ずっと居たが何も話していなかった)マリネさんにそういうと部屋を出ていった。
「ではお嬢様、着替えましょうか」
「……はい」
そうしてなされるがままに着替えさせられたのだった。
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「おぉ!良いじゃないか、可愛いぞミリア」
「……ありがとう」
あれから、ドレスに着替えた後、他にも色んな装飾を付けられた。ボクの髪には二つの花の装飾があり、髪型はセミロングというやつになっていた。
「なんだ、あんまり嬉しくなさそうだな。こんなに可愛いんだからみんなお前に見惚れると思うんだがな」
今回のパーティはボクが主役なのだが、あんまり目立ちたくなかった。
鏡を見てみる。そこにはジト目をしたとても可愛らしい女の子が立っていた。
ほんと、これが他人なら良いんだけどなぁ、はぁ……。
ため息をつくと鏡の中の少女もため息をついた。
今の性別は女なんだけど、将来は男性と結婚することになるのかな……嫌だなぁ…。
そんなふうにネガティブになっていると、ふいにマリネさんが覗き込んできた。
「うわぁ!? ビックリした…」
「大丈夫ですか? 先程から浮かない様子でしたが」
「うん、大丈夫だよ。それよりどうかした?」
「そろそろ始まるので会場に移動しましょう」
「もうそんな時間だったんだ」
気づけば空は暗くなり始めており、窓からは夕日が差し込んでいた。
「そうだね、いこうか」
そして、緊張しながら部屋を後にしたのだった。
ドレスのことを詳細に書こうと思ったのですが、知識がないので出来ませんでした。