この人苦手……
「ねぇミリアちゃん、一緒に回ってみない?」
「うん、良いよ」
あれから、リアちゃんと沢山話をしていた。とは言っても基本的にはリアちゃんが話題を振って、ボクがそれに答えるという感じだ。
今は一緒に会場を回り、気になったものを食べている。
「ねえ、それどんな味がするの?」
今食べているのは、鶏肉の味がするミートボールだ。
「食べてみる?」
「うん、食べる!」
そう言ってボクの皿からミートボールをとり食べ始めた。食べてる様子を見て思うのだが、この子、小動物みたいな食べ方をするんだよな、……めっちゃ可愛い。
「リアちゃん、ほっぺにソースが付いてるよ」
ほっぺに付いたソースを、ハンカチで拭き取ってあげる。
「ありがとう!」
満面の笑みで言ってくれた。何だろうな、この子と接していると妹を世話している様な感覚がする。
こんな調子で、お腹いっぱいになるまで食べ歩いていた。
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「私もう帰らなくちゃ。ミリアちゃんまた今度会おうね!」
「うん、またね!」
どうやらもう帰らないといけないらしい。また会う約束をしてリアちゃんと別れた。
さて、何をしようか……。
ふと、父さんの方を見ると、見知らぬ男性と会話いていた。視線に気づいたのか、ボクの方をみると手招きをした。
取り敢えず父さんの元へ向かうことにした。
「どうかしたの、父さん」
話しかけると、父さんは話をしていた男性を見て言った。
「ミリアはまだ会ったことが無かったよな、こいつは俺の兄のリチャードだ」
どうやら父さんが話をしていたのは、ボクの叔父にあたる人らしい。
リチャードさんは、父さんと同じ茶髪に水色の瞳をしている。改めて見ると、確かに父さんとそっくりだ。
叔父のリチャードさんは、ボクを見ると笑顔になって口を開いた。
「へぇ〜、君がミリアちゃんか? とても可愛いな、俺はリチャードだ、よろしく」
そう言って手を前に出したので、握手しようとした。しかし、手を握る前に腰に手を回され、そのまま持ち上げられてしまった。
「うわあぁぁ!?」
いきなり持ち上げられたことで、驚きの声を上げてしまう。
持ち上げられたかと思ったら、次は顔を覗き込んできた。
叔父さんの目を見ていると、底が知れない気がして、少し怖かった。
「ふ〜ん、シンシアさんに似て可愛いな、これが後十三年後だったら思わず口説いていたかもな」
無言でじっと見つめてくるので、思わず目を泳がせる。正直とても気まずい。
「おい止めてやれ、嫌がってるじゃないか」
流石に見かねたのか、父さんが止めに入ってくれた。
「いや〜すまない、姪が出来たのが嬉しくてな、ついはしゃいでしまった。ごめんなミリアちゃん、叔父さんついはしゃいじゃって、怖くなかったか?」
そう言って床に下ろしてくれた。
「いや、大丈夫です……」
早めに降ろしてくれて良かった。ずっと見つめられていると、全てを見透かされているような気がして、なんとなく嫌だったのだ。
「ごめんなミリア、コイツはいつもテンションが可笑しいだけで本当は優しいんだ、だから許してやってくれ」
父さんの言葉に、いつもこんな感じなのかと少し呆れてしまう。
「うん、ちょっとビックリしたけど大丈夫だよ父さん。でも、あれはあまりしてほしく無いかな」
そのことを聞いた父さんは、ため息をついた後、叔父さんを冷ややかな目で見ていた。
「……兄さん、多分ミリアに嫌われたぞ」
それを聞いた叔父さんは『ガーン』という効果音が付きそうなほど明らかに落ち込んだ。
「は、初めての姪に嫌われた………」
この人なんだか子どもっぽいな、わざとそうしていないか? まあ、多分悪い人ではないのだろうが、第一印象があれだからな、この印象はそんな簡単には変わらないだろう。
少し可哀想と思ったが、自業自得なので何も話しかけられずにいた。
その後叔父さんは、しばらくの間落ち込んでいた。