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第十七話

 あれから数日経った日の事。

 たまたま実桜と下校時間が重なり、一緒に帰っていた。


 妹と並んで帰るのは少し恥ずかしい。

 本来なら絶対に避けただろう。


 しかしながら、最近は何かと一緒に居ることが多い。

 髪を切りに行ったり、服を買いに行ったり。

 そういったことが重なったせいで、なんとなく共に下校することになった。


「なんか懐かしいね」

「そうか?」

「小学校の頃は毎日一緒に帰ってたじゃん」

「あー、そんな事もあったような」


 そうだ、思い出した。

 同学年で時間割も同じだったため、よく一緒に帰っていた。

 たまに姉とも帰ったっけな。

 記憶というのは簡単に忘れるものだ。


「あの頃は兄妹って感じじゃ無かったよね」

「そうだったかな」

「何も覚えてないじゃん。おじさんだね」


 まぁ言われてみるとそうかもしれない。

 いや、おじさんだと認めたわけじゃない。

 その前の話だ。


 確かに小学校低学年の頃なんかは兄妹というより、友達という感覚だった。

 今もあんまり変わらないが、今より関係性も深くなかった。

 再婚してすぐに実母が亡くなったことが原因だろう。


 実桜は重そうなリュックに肩を痛がる仕草を見せた。


「どんだけ荷物詰め込んでるんだよ」

「普通に教材だよ。睦月と違って置き勉してないから」

「ふぅん。……リュック交換してやろうか?」

「いいの? 優しいね」


 ニコニコと微笑みかけられてこそばゆくなる。

 なんだかんだ可愛いからな。

 ちょっとだけドキッとしてしまった。


 しかし。


「おもっ」

「あはは、貧弱者め」


 受け取ったリュックの重さは尋常じゃなかった。

 すぐさま荷物を交換したことを後悔する。


「そう言えば睦月、クリスマスイブはどうするの?」

「あー、そうだな」


 何も考えていなかった。

 しかし、姉にああ言った手前、家に居るわけにもいかない。

 どうしたものか。


「一緒にどこか行く?」

「まぁそうだな」


 一応俺達は付き合っている設定だしな。

 何かあった時に証拠の工作がしやすい。


「でも、どこに行くんだ?」

「うーん、そうだな。思いつかないね」


 一瞬カラオケに滞在するか、という策が頭を巡った。

 俺も実桜もカラオケは好きだからな。

 だがしかし却下だ。

 高校生の男女二人、それも似ても似つかぬ二人組が来たら、もう間違いなく付き合っていると思われる。

 レジの人にそう見られるのは抵抗があった。


「ちょっと遠出して遊ぶ?」

「そうだな」


 近所だと知り合いに会うしな。

 先日の買い物で痛感したばかりだ。

 ついでに、万が一姉に俺達が二人でいることがバレては意味がない。


「電車で遠くに行くか。ちょっとした旅行って感じで」

「いいね」


 旅行に行くなら姉も連れて行きたいところだが、仕方ない。


「今年のクリスマスイブはちょっと楽しみ」

「そうか? 友達と遊んだりした方がいいんじゃないか?」

「そんなことないよ! 家族仲を深めるのも大事なのです」

「なんだその口調」


 急におかしな口調になった実桜に俺は吹き出す。

 と、実桜が言った。


「最近おねーちゃんちょっと訝しんでるよね」

「何を?」

「あたしたちの仲。最近仲良しだねってよく言われる」

「あー」


 前から仲は良かった。

 ただ、一緒に出掛けたりたくさん話すようになったのは最近だ。

 あの、実桜が俺の彼女のフリをすると言った日から、からむ頻度が増えたことは間違いない。


「まぁ家族仲が良いのは良いことだって言ってたけど」

「そっか」


 姉は忙しい人だ。

 学校の授業に、バイト、そして家事全般。

 俺や実桜も手伝うものの、所詮は手伝いの域を出ない。

 負担をかけているのは確かだ。


「クリスマス、多分おとーさん帰ってこないよね」

「だろうな」


 父親の今回の出張は長そうだ。


「実桜」

「ん?」

「俺達で、姉ちゃんになんかプレゼント買おう」

「そうだね」


 というわけで、クリスマスイブは実桜と電車に乗って遠出することが決まった。

 その際にクリスマスプレゼントでも買おう。

 勿論お互い別々で、あくまで別行動をとっていたと匂わせる必要があるが。



 そして、クリスマスイブがやって来る。

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