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おはよう異世界

不定期!(黄金の意思)

「んあ……?」


 真っ暗闇の中私は目を覚ました。体を起こそうとしてみてふと気づく。何か狭い物の中に閉じ込められている。


「ん~ッ!」


 パニックになって必死で蓋と思しきものを殴りつける。ここ閉所恐怖症ならではかな? 幸いなことに蓋は殴りつけている間にあっさりと吹っ飛ばすことが出来た。荒い息をつきながらようやく状態を起こす。


「いやまて……どこだよここ!?」


 そこはやたら広くて豪華な洋風の部屋だった。シャンデリアにはろうそくが煌々と光っている。

 おかしい、私はただの女子高s……あれ?女子高生?どうにも記憶が曖昧だ。もしかして記憶喪失? 頭が真っ白になる。あースマホが欲しい。検索欄で「記憶喪失 思い出し方」とでも検索して……


「ほわぁーーと!?」


 アイエエエ!? ナンデ!? マッパナンデ!?

いやいやいやいやスマホが欲しいだけなのに。ポケットと思しきところに手をやったらこれだよ!

服! 人間として最低限の権利を保障してください! 辺りを見渡して箪笥を探す。

うん、豪華すぎてどれが箪笥かなんてわかんねぇ!部屋の主には申し訳ないけどとりあえず起き上がって部屋を物色させてもらおう。

 さて、見たところこれでもかというほどの中世っぽい家具が並んでいる。また俺異世界転生しちゃいましたかって感じ。まあ異世界転生なんてしたこと……いや、記憶喪失のうちにそれを断定しておくのはやめておこうかな。

 とりま、やっておくのは引き出しを開けまくって服を探すこと。マッパを見られたら絶対お嫁になんていけない……というかそれ以前に記憶を何とかして思い出さないとどうにもならない。

 そんな感じで引き出しを漁っていく、のだが……


「ない! ないッ! ないぞぉーーー!」


 絶叫、お部屋にこだます。なんかもう……疲れた。服がないだけでここまで落ち込むとは……いやさ、便箋やら羽ペンやらいかにも高級なジュエリーやら色々入ってはいたんだよ? でもね、ジュエリーは服の代わりにはならんのだよ……

 仕方ないので眠っていた布団を体に巻き付けて……と眠っていたところに目をやって目を見張る。

 わーお棺おけ~。ほんとにどういう事だってばよ。私死んだ感じですか? もしかして吸血鬼ですか? もちろん棺にお布団なんて入っているわけもなく(ふかふかだったけどね)。これホントに覚悟してステルスミッションしないといけない感じ?

 目の前には重圧な扉。扉にぴったり耳を当てても外の音が聞こえないくらいに厚い。これホントに覚悟していかないとだめですね。すぅーはぁー。よし、覚悟完了。イクゾー!

 分厚いドアを必死こいて押してみる。と思ったら扉はあっさりと開いた! 勢いに乗った私はゴール! 超! イタイタしい! この理不尽に性能のいい扉を作った職人に文句を言ってやりたいところ。

「記憶喪失のガールが何も知らずに思いっきり扉を押すとは思わんのかぁ!」

 まあ、職人としても困るクレームだわな。鼻っ柱を抑えながら立ち上がると辺りを見渡す。

ほうほう、重厚な絨毯に、洒落た彫像、それからメイド。ん? メイド……?


「あっ…あっ……」

「あっ……?」

「あんぎゃアァァァァァ!」


 バタム。例の理不尽な扉を閉める。なんでこう……フラグ回収が早すぎるのだ……

 必死こいて棺の陰に隠れると同時にノックの音が聞こえた。ついでに扉が開けられた音がする。


「お目覚めですか? リアーナ様」

「誰だよ! 私リアーナじゃないよ!?」


 混乱で叫びまくる。いや、少なくとも私の名前がリアーナではない事だけは断言できる。だって、見るからにジャパニーズな私がそんな大仰な名前で呼ばれるわけないじゃないですか!


「あの、入ってもよろしいですか?」

「ダメ! 絶対ダメ! 服もってきて!」


 かしこまりました、という声の後に扉が閉まる音がした。どうやら服を取りに行ったらしい。

 とりあえず一息。あのメイドちゃんが服を持ってくるまでに考える事はいろいろある。言うなれば5W1Hって奴?いつどこで誰が何をどうしたか、だっけ? なんかいっこ抜けてるけどまあそれは些細な問題だろう。


一つ、いつ? これが分からない。

二つ、どこで? これも分からない

三つ、誰が? 私かな? じゃあ……


「おっと……」


 名前が思いだせない、苗字はおろか名前すらも出てこないとは……案外リアーナって名前も本名だったりする? いやいやまさか……とりあえず閑話休題おいといて


四つ、何を? 何を言われましてもねぇ……

五つ、どうやって? 分からん。


「……マジでか」


 結論、マジで分からん。分からんことが多すぎる。目下自分を捜索中って感じ? それはいろいろ泣けてくる。まあ泣かないけど。

 そんなことをいろいろ考えていたら再び扉がノックされる音がした。


「失礼します……お召し物をお持ちしました」


 さっきのメイドちゃんの声がする。


「投げてよこして」

「ですが……」

「別に私にそういう礼儀を求められても困るから」

「……かしこまりました」


 質素だけどやたら豪勢な服が投げられた。着やすそうなYシャツに緑のベスト、それから足首くらいのスカート。

 わーおファンタジー。やっぱり中世ヨーロッパじゃないか(歓喜)


「お着替えは終わりましたか?」

「これでいい?」


 棺桶の陰から姿を現すとメイドちゃんが息をのんだ。


「よくお似合いですよ、リアーナ様」

「……私リアーナって名前だったか覚えてないんだけど」


 メイドちゃんは難しそうに考え込む。


「もしや復活の作用で記憶を失ってしまったのでしょうか。本名はともかく、私たちはあなた様の事をリアーナ様、と呼ばせていただいております」


 頭を下げるメイドちゃん。そこら辺の礼儀は日本っぽい……って待て。復活? 復活、ねぇ……


「復活ってどういう事よ?」

「はい、あなたは瀕死の重症を負い……長いこと眠りについていました」

「長いこと。ふぅん」


 まあ記憶が無いからなんとも言えんのだが、しかしどうしてそこで三点リーダーを入れたのかな?

 チラッとメイドちゃんに目をやる。水色の目が何かを誤魔化すようにキョロキョロと動く。

 考えてみれば水色の目ってアレよね。カラコンでもない限り普通はない。少なくとも日本人の青い目ってのは見たことがない。


「で、結局私ってどのくらい寝てたの?」

「あなたは……98年間眠っていました」

「……わお」


 流石にビビった。知らぬ間に婆さんな年齢になっていた。結婚適齢期とかそういうレベルの低い話じゃないっすねこれは。花の20代をもろ棒に振った感。事実そうなんだけど。現実から逃げるようにはい次の質問。


「じゃあさ、メイドちゃんから見て私ってどんな人だった?」

「メイドちゃん……?」


メイドちゃんは目をしばたたかせた。


「あぁ、ゴメン! 名前が分からないからつい……」

「そういう事でしたか。私の名前はフーリ。腐龍、ドラコ=モルトゥオルムのフーリと申します」


 ほーん、腐龍だからフーリちゃんね。なんというか安直だけどナイスなネーミングセンスだ。


「ちなみにこちらのお名前はあなた様につけていただきました」


 どうやらネーミングセンスに天武の才があったらしい。自己評価を過大して何が悪い! まあ逆ギレだけどね。


「その様子だと他にもメイドちゃんがいるの?」

「いえ、メイドは私だけですが他にも部下は多くいますよ」

「ふーん……えっとじゃあ、私ってどこかのお嬢様だったりするの?」


 その質問にフーリちゃんがギクッと固まる。


「……そこまでお忘れですか」

「マジで分からんのです」


 フーリちゃんが姿勢を正す。


「あなた様はリアーナ=ムエルテ。この世界における死を司る者、死神です」


 我が頭、クラッシュ。

 これが、「目覚めて異世界、死神です」ってね……

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