第2話
「あのさぁ、大葉君、君このままじゃどこも進学するような大学ないよ?」
「今だったらまだ間に合うし、高卒で採ってくれるような会社ないよ?」
今こうやって俺に注意をしてるのはうちの担任の大和田 咲希だ。
まあ彼女も結果を出すことに必死なのだろう。
「別にいいっすよ。土木とかバイトで飯食っていくんで…」
「それじゃあ。」
「あっ、ちょっと待って!」
先生の言葉を耳にも入れず、俺は職員室を後にした。
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俺は帰路に就いていた。
おれの高校は偏差値も対して高くない普通程度の学校だ。けれど進学志望者が多い。
「全員イキリやがって…」
ああいう意識高いやつがいるから俺のようなやつが惨めに見える。
「早く大人になりたいなぁ。」
どうせ大人になったところで何もする事はないが、とりあえず親の目が無くなり、金も自由に使えるのが1番の強みだろう。
そう考えてると、
「ねぇねぇそこのお兄さん。どうしたんですか?」
いきなり声をかけられた。
驚き俺は咄嗟に振り向いた。
「お兄さん、お兄さん。なんか浮かない顔してますね。」
そこには肩にかかるくらいの茶髪、幼い顔立ちの女性が立っていた。
服装は大人っぽいのだが、大人と言うより背伸びをした子供のようだ。
「なんですか?あなた。」
「通りすがりのただの人ですよー。」
「いやいやそんなこと聞いてないんですけど。」
「自己紹介しただけじゃないですかー。」
「それより、ちょっとお茶していきませんか?」
これはナンパされているのだろうか?
俺みたいなヤツをナンパなんて趣味の悪い人なんだろうなと思う。
「いや、ないですから。」
「えー!いいじゃないですかー。」
「警察呼びますよ。」
「それは勘弁ですかねー。」
「じゃあ諦めて下さい。」
「いやいや、それはできないって言ってるじゃないですかー。」
どうやらこのまま話していても逃がしてはくれなさそうだ。
「わかりましたよ。どうせ暇ですし、」
「やった!じゃあそこら辺のファミレスでも行きますか。」
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俺とその女はファミレスまで向かった。
そして道中その女の名前が黛 千春であることがわかった。
「で、話ってなんですか?」
「いやいや早いですって、何か頼みましょうよ。」
そう言って黛は注文用のタブレットを手渡してきた。
「私がお金は出しますから。」
そう言って黛は笑いかけてきた。
なので容赦なく、山盛りポテト、チーズハンバーグ、おまけにデザートのパフェまで頼んでやった。
「黛さんはどうします?」
「あっ、私はドリンクバーで。」
そして、伝票を送信し、もう一度聞き直した。
「で、なんで俺をここに連れてきた?いい加減話してくれ。」
「仕方ないですねー。」
「今日ここに大葉 樹君と話をしたいって言った理由は…」
あれ、俺名前言ったっけ?
「樹君が我が研究所の被験者に選ばれたからでーす。」
「樹くん今すぐ大人になってみませんか?」
「…」
「……」
「は?」